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さだまさし、自己模倣は芸術の堕落「もっと不思議な曲や新しい言葉を」

30億の借金を返すために、コンサートをバラエティ化

――話はかわりますが、コンサート回数4100回、日本一を誇るさださんのコンサートがなぜこんなに人気があるのかを知りたいのですが。
さだ 僕はね、“長江”って映画を作って借金をしたのね。正味30億だからね。1年1億ずつ返しても30年。普通に考えて1年で1億返すなんて不可能な訳ですよ。だから、それを返すにはコンサートの回数を増やすしかなかった。実は僕の借金はお客さんたちが返してくれたようなものなんですよ(笑)。で、コンサートの回数を増やすと、当然人間ののどには限界があるので声が出なくなる。ファルセットがまったくでない時期があったのね。本当にひどい声で歌っていた時期が、正直言うとありました。それでも、お客さんに来続けてもらうためには、歌以外の魅力を磨くことが必要になったんですよ。リピートしてコンサートに来てもらうためには、僕の場合はバラエティ化が合っていた。ただ、歌を聴いてさよならじゃないよ、バラエティなんですよ、小噺もあるよ、小芝居もあるよって内容ですよね。ガサガサの声で歌が聴きづらかったとしても、歌以外の部分で喜んでくれて泣いてくれて納得してくれて、また来てくれればいいのかなとね。

――トークで使う声帯と歌を歌う時に使う声帯は別なんですか?
さだ 別ですね。ただ、本当は歌だけ歌う方が楽ですね。歌って喋って、また歌ってまた喋ってっていうのが、本当は声帯にとっては良くないんです。でも、バラエティ化でみなさんが喜んでくれるようになったからね。よくトークで話している面白い出来事は本当に起きたことなんですか? フィクションなんですか?って聞かれるけど、僕の周りでは変なことがよく起きるんですよ。変な人がいっぱいいるから(笑)。

――まさに「すべらない話」ですよね(笑)。
さだ 言えないことも多いんだけど、面白いことがあると言える範囲でステージで話すのね。最初は受けるかどうかもわからないまま話すんだけど、それが受けると次にディテールの部分を思い出して盛り込んで話を磨いていくんですよ。あの時、あいつは確かこっちを見たぞとか、その細かいことがさらに面白さを増すことになったりするんです。そういう話は、ある意味ノンフィクションですから、10年たっても同じ話ができるんですが、例えば「父さんとポチ」のような作り話の場合は、いきなり話してと言われても、“あれ、どうだったんだっけ?”となってしまいますね。

――ネタを話として面白くまとめられるのは、落研時代の経験が大きいですか?
さだ それは大きいでしょうね。どこかオチを必ずつけようとしますからね。

――以前、自分のコンサートを評して“田舎の接待”とおっしゃっていたことがありました。
さだ まさに田舎の接待であり満漢全席でもあります。お腹いっぱいになったって言っても、まだ食べられるだろうって奨めてるってね(笑)。

――なるほど、そこにコンサート人気の秘密がありそうですね。
さだ トークに関しては、お客さんは誰も知らないけれど、僕は怪談がすごくうまいんですよ。僕の怪談は怖いですよ。

―― 一度、怪談ネタのトークだけのコンサートをやって欲しいですね。
さだ 一度やってみましょうか。で、歌は「海は死にますか〜」って来たら笑えるね(笑)。

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