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デビュー20周年の華原朋美、紆余曲折経てのいま

芸能界をあきらめきれなかった

――華原さんの場合、復帰しないという選択肢もあったと思います。当時の状況だと、むしろそのほうが楽だったかもしれないのに、なぜ復帰の道を選んだんですか?
華原 やっぱり、あきらめきれなかったというか。私は歌を歌って生活することしか経験がなかったし、何より歌が大好きだったからでしょうね。復帰前、フィリピンに住んでいるときに、現地で日本人の友だちとカラオケに行くこともあったんですが、そこでみんなから「歌って」と言われたり、そういうことがやっぱり嬉しくて。でも、その一方で、バカにされることも多くて、それがまた自分を奮起させた。バカにされるってものすごく悔しいことだし、それで死にたいと思ったりもしたけど、それを超えると逆に糧になるんですよ。踏み台にしちゃうと、そのあとの成長が早いって、自分の体験から実感しましたね。

――でもそこに至るには強靭(きょうじん)な意志と負けん気がないと這い上がれないと思います。華原さんは実はかなりの負けず嫌い?
華原 子どもの頃はかけっこだけは誰にも負けたくなくて。抜かれたら次は絶対に抜き返してやろうって一生懸命練習するような子でした(笑)。でも、乗馬で国体に出て4位で終ったときは、すぐ辞めてしまったんですよ。優勝できないならいいやって、結果がすべてみたいなところは昔からあって。必死にやるわりにはすぐにあきらめちゃう。それが長く私が苦しんできた理由かもしれないですね。何かに挑戦してダメだと、それだけでもう投げてしまって、そこで改めて考える能力がないっていう。だから、そんな私がいまこうしてここにいられるのは、本当に環境や出会いに恵まれたおかげ。その感謝はどれだけしてもしつくせないです。

――この20年間の中で、一番嬉しかったことは?
華原 たくさんあります。やっぱり新曲をまた小室さんに書いてもらったことが一番嬉しかったんじゃないかな。この20年は、輝く自分を取り戻そうと思っては崩れ、立ち上がってはまた崩れっていう砂のお城を作るような年月でした。でも、そのなかでまた新たに曲を作り上げることができたのは本当に嬉しいことだなと。

――『PON!』(日本テレビ系)のレギュラーが決まって思わず涙を流した姿からも、“取り戻した”喜びが伝わってきました。
華原 涙はギリギリまで抑えていたんですが、我慢できずに出ちゃいました(笑)。信用って失くすのは簡単だけど、それを取り戻すのは本当に大変なことですからね。でもまだまだなので、またここで崩れないようにがんばらないと

――そんな苦楽や気づきを経てきて、歌への想いは20年前と変わりました?
華原 自分がいる場所をリアルに伝えていくことが、使命だと思うようになりました。だから、遠くをあまり見ないようにしていますね。遠くばっかり見ていると、近くが見えなくなっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、これまで散々逃げてきてもう次がないというこの現実をしっかり伝えていきたい。例えば、今日元気でも明日は元気じゃないってこともたくさんあるだろうし、それをそのまま伝えるだけでもいいと思うんですよ。そこで“元気です”って、強がるのは簡単だけど、それを私がやっても説得力がないし似合わない。だったら、今の自分を包み隠さずに伝えて、私の中の“私”と、ファンの中にいる“私”を重ね合わせいく。そこで一緒に旅立つことが、今の私がやるべきことだと思っています。

“よくあきらめずに生きてこられたね”と自分自身を褒めてあげたい

――21年目のスタートラインに立ったいま、これまでの20年間の“華原朋美”に言ってあげたいことはあります?
華原 “よくあきらめずに生きてこられたね”って褒めてあげたい。そして、新しい夢を持って進んでいってもらいたいです。実は私、最近、自分と華原朋美を切り離すようにしているんです。私だったらできないことばっかりやっているので、自分とはかけ離れた人だなって、やっと思えるようになったというか。

――“華原朋美”を俯瞰(ふかん)して見ることが、今の華原さんにとって生きやすいスタンスなんですね。
華原 本当にそのとおりで、“華原朋美”にはもうなれない。私と華原朋美が一緒になっちゃうと辛くなってしまうので。そもそもこれまで一緒だと思っていたからダメになっちゃったわけで、今もそのままだったらこんなにいろんなことをしゃべれないですよ。だから、別世界の人だと思って、遠くから見るっていうのが今の私のスタイル。その上でネットとかを見ると、悪いことしか書いてないけど、いいこともちょっとは書いてあって、それが華原朋美の現実であり、そのなかでこの人は生きているんだなと。そういうことを家に帰って“私”に戻ったとき考えています。

――“私”と“華原朋美”の二人三脚で、その現実を生きていると。
華原 そうですね。私の役目は“華原朋美”を輝かせるために努力することですから。そのためにもまずは20周年ツアーを完走できるようにがんばろうと思っているし、そのなかでリアルに歌を伝える作業を続けていきたい。あとはひとりの女性としても、いろんな夢を描いていきたいですね。

(文:若松正子/撮り下ろし写真:西田周平)

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