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(更新: ORICON NEWS

芸人のあり方に変化 芸人だけで食っていく時代は終わった!?

 これまでの“お笑い界”は、それぞれ芸人たちが実力を競い合いながらトップを目指していく、というものだった。そのため、芸人が本業以外の副業に手を出すことに対しても、マイナスのイメージがあったように思うが、最近ではそんな芸人のあり方にも変化が現れてきている。

“天下を取った”芸人だからこそできた“趣味”としての“副業”

  • 処女小説『火花』が『第28回三島由紀夫賞』候補にあがったお笑いコンビ・ピースの又吉直樹

    処女小説『火花』が『第28回三島由紀夫賞』候補にあがったお笑いコンビ・ピースの又吉直樹

 お笑いコンビ・ピースの又吉直樹の処女小説『火花』が売れている。この出版不況の中、初掲載の『文学界』は通常の1万部から4万部に増刷、単行本化されるとわずか1ヶ月で35万部(4月初旬時点)を突破するなど、異例づくし。それよりもある種“異例”なのは、この又吉本に関して批判めいた論評がまったくないことだ。かつてなら、「芸人が趣味で、片手間で書いた本でしょ?」と斜に構えた論評も出ようというもの。ところが、今や芸人が本業とは違う仕事をすることに対して、世間は何の違和感も持たなくなってきているように感じる。

 過去には、ビートたけしが自伝的小説『たけしくん、ハイ!』(太田出版/新潮社)を書いて、大ベストセラーになり、NHKでドラマ化され、ダウンタウンの松本人志が書いたエッセイ集『遺書』(朝日新聞社)も200万部を超える大ベストセラーになった。しかし、いずれもトップの芸人たちであり、むしろ頂点を極めた芸人が本を書くのは当然だともいえる。かつて、横山やすしという昭和最後の破滅型といってもいい大物芸人がいたが、彼は趣味のボートレースにのめり込んでいた。2011年に引退した島田紳助のオートバイレースにしてもそうだが、彼らもやはり“天下を取った”芸人だからこそできた“趣味”や“副業”だった。

 現在のお笑い界を見ると、相変わらずビッグ3(たけし、明石家さんま、タモリ)は健在だし、その下の世代のとんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、爆笑問題もまだ現役。さらにその下のネプチューン、さまぁ〜ず、くりぃむしちゅーは、第一線でバリバリに活躍している。後続の芸人たちがそこに割り込み、お笑い界のトップにのし上がっていくことは至難の業だ。それどころか、ほとんどの芸人たちにとっては、お笑い“だけ”で食べていくこと自体、至難の業だろう。

“芸人+α”であろうとすることが、今後の芸人としての“必要条件”

 DJ業でも活躍しているお笑いコンビ・ダイノジの大谷ノブ彦も、自身が担当するネット配信番組『よしログ』で、「芸人だけの仕事、いわゆる地方の営業、劇場の漫才だけじゃ多分俺たち、ぶっちゃけ子供を養えない…ギリギリアウトかな?」と語っていた。ではどうすればいいのか。「芸人さんでも、これからソフトコンテンツってあるよね。例えば、サッカーに詳しい芸人とか、スポーツコンテンツで、そこが一番仕事ある人がどんどん増えてきてる。俺はそれで全然いいと思う。漫才続けることを目的にしたら、ソフトを全員がこうやって選んでいくのはアリだと思う」(大谷)

 つまり、頂点に立った芸人が趣味でやるのでなく、今や本業のお笑いを続けていくためには、“趣味”や“副業”を持たなくてはならなくなってきたということだ。実際、今のお笑い界を見渡すと、品川庄司・品川祐の“映画監督”、“アスリート”挑戦系の猫ひろしや南海キャンディーズ・しずちゃん、オードリーの春日俊彰、文学系でいえば、麒麟の田村裕『ホームレス中学生』や劇団ひとり『陰日向に咲く』の大ヒット、アンジャッシュ・渡部建などは“食レポ本”までヒットするなど、副業で本業そっちのけの活躍をしている芸人たちがたくさんいる。

 以前は、芸人が本業以外の仕事に手を出すと、「とうとう芸では食えなくなった、気取ったことをしていても、もう本業は上がりか?」といった冷ややかな目もあった。そんな批判の矢面に立ったのが、品川庄司・品川祐やキングコング・西野亮廣だったりするわけだが、彼らはくじけることもなく、その冷ややかな目をもはや“ネタ”のひとつ。これからの芸人たちが成功していくためには、たとえ一時的に視聴者に不快がられようと、本業以外の“趣味”や“副業”をネタにできるかどうか、そうした図太さを持ち合わせているかどうかが鍵になりそうだ。また、“芸人+α”であろうとすることが、今後の芸人としての“必要条件”でもあるし、ひょっとしたら“最低条件”なのかもしれない。

(文:五目舎)

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