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テレビに“消費されない”男性アイドルたち

 ひと昔前まで、アーティストたちはテレビの歌番組に出演することが最大の宣伝効果だった。だが、近年はネットの普及に伴いアーティスト自ら宣伝できるようになり、その拡散力も無視できないほど巨大に。特に男性アイドルグループは活躍の場所が広がったことで、テレビという呪縛から解き放たれ、じっくりと息長く活動ができるようになった。では、具体的にどのような戦略をとっているのだろうか?

テレビに頼らない戦略……背景には、3つの潮流の合流

  • ダンスロックエアーバンドのDISH//[リリースイベント2013年2月16日撮影/(C)ORICON NewS inc.]

    ダンスロックエアーバンドのDISH//[リリースイベント2013年2月16日撮影/(C)ORICON NewS inc.]

 スターダストプロモーション所属の若手男性タレント集団・EBiDAN(恵比寿学園男子部)から生まれたアイドルユニットが、相次いでブレイクに手を掛けている。“メインダンサー&バックボーカル”という形態の7人組・超特急は、インディーズながらシングル6作と昨年12月発売のアルバムが連続TOP10入り。楽器を弾きながら踊る4人組ダンス・ロックユニットのDISH//は昨年、シングル2作が2位を獲得。今年元日の日本武道館公演は5分でチケットが完売した。アニソンに取り組む4人組ロックバンドのカスタマイZは昨年、アニメ業界最大手のスターチャイルドレコードとの本契約にこぎつけ、2月にメジャーデビュー。

 スターダストプロモーションは山田孝之、市原隼人、岡田将生ら多くの人気俳優や女優を輩出してきたほか、近年はももいろクローバーZを筆頭に私立恵比寿中学、チームしゃちほこが活躍し、女性アイドル界でも一大勢力となっている(ちなみに、EBiDANや私立恵比寿中学の“恵比寿”とは同社の所在地)。EBiDANも“ももクロの弟分”などと称されることが多い。ただ、EBiDAN勢は地上波テレビにはさほど出ていない。むしろ、そこでの展開には最初から重きを置かず成功した。その背景には、3つの潮流の合流が見られる。

 1つ目は、ミュージカル『テニスの王子様』(通称テニミュ)以来の“テレビに出てないカッコイイ男の子”の発掘。人気マンガを舞台化した『テニミュ』は2003年に始まり、キャストを変えながらシリーズ化して現在も続く。ほぼ全員が新人クラスの若手ながら、熱狂的な女性ファンを生んで毎回盛況だ。10周年を迎えた昨年には累計観客動員数が170万人を突破。歴代キャストにはブレイク前だった城田優、瀬戸康史、斎藤工らが名を連ねる。EBiDANメンバーは役者中心ではないが、同じくほとんど名前を知られていないまま、インディーズから地道にスタート。DISH//は毎週末にショッピングモールでフリーイベントを行うなどして、先物買い的な人気を広げていった。

 2つ目は、EXILEが決定打となったダンスムーブメントの定着。本格派のダンスを楽しむことがエンタテイメントの大きなファクターとなり、男性アイドルでも世界基準のパフォーマンス力が売りのDa-iCEは、デビューアルバムが3位に入った。超特急はダンサーがメインでボーカルがバックという独自のスタイルを取り、DISH//も楽器を持ちながら激しく踊る。オリジナリティあるダンスパフォーマンスは彼らの柱で、それをじっくり堪能できるライブに人が集まる。

 3つ目が、女性グループの“会いに行ける”手法の引用。女性アイドルはブームと言われつつ、テレビに頻繁に出ているのはAKB48グループぐらい。それでもCDランキングでは、一般には無名のグループが上位に顔を出す。複数買いもありつつ、メディア露出より握手会など直接交流イベントでファンを増やしてのこと。EBiDANもライブと共に握手会を精力的に行い喜ばれている。テレビで観るトップアイドルにない親近感は貴重だ。ブレイク前から近くで応援して成長とサクセスストーリーを共有するのもアイドルファンの醍醐味となっているが、それは男女共通だったようだ。

 加えて、今はテレビに出なくてもネットなどで自ら発信できる。EBiDANは結成当初から事務所の公式サイトや公式You Tubeチャンネルでの映像配信が積極的に行われてきた。現在はBS日テレ、BS朝日、BS11でレギュラー番組を持つが、いずれも放送終了後からインターネット動画配信サービス「Hulu」でも視聴できる。

テレビに頼らないことで、アーティスト性を確立できたw-inds.や三浦大知

  • メインダンサー&バックボーカルの超特急[リリースイベント2013年2月16日撮影/(C)ORICON NewS inc.]

    メインダンサー&バックボーカルの超特急[リリースイベント2013年2月16日撮影/(C)ORICON NewS inc.]

 今後も新たな男性アイドルが相次いで現れそうな状況だが、男性は女性に比べてアイドルとしての“持ち時間”が格段に長いのも利点。ももいろクローバーZがメジャーデビューした際、名物マネージャーの川上アキラ氏は「2年以内に結果を出さないと」と話していた。少女性が重視される現状で、20歳半ばを過ぎてアイドルを続けるのは厳しい。だが、男性は40歳手前でもトップアイドルとされている。俳優業などへ移行もせず、アイドル的スタンスを残しながら歌い続けている例もある。

 例えば、w-inds.は2001年に3人が10代でデビューした当初は、外見も声も女の子かと間違えるような可愛らしさがあった。事務所の先輩のDA PUMPに続き、“振り”の域を越えたハイレベルのダンスを見せていたこと、デビュー前からストリートライブを重ねて地道にファンを増やしてきたことでは、現在のダンス系男性アイドルの先駆者とも言える。テレビ番組への出演機会には恵まれない状況にあったが、そのぶんパフォーマンス力を軸に、一過性でない支持を受けるようになった。成長と共に男らしくなりながら、音楽性もキャリアに呼応して常に進化。今年1月発売の34thシングル「Fantasy.」(4位)に至るまでヒット曲を生み続けている。

 男女問わず多くのアイドルやアーティストからリスペクトを受ける三浦大知のデビューは9歳。沖縄アクターズスクール出身の男女混成ユニット・Folderのメインボーカルを務め、変声期に5年ほどの休業を経てソロデビュー。現在では歌とダンス共に極めてハイレベルなパフォーマーとして名高い。だが、その過程では三浦もテレビや雑誌にあまり出演枠がなく、若手時代にはネットなど自己発信できるメディアも発達していなかった。その実力と比例せずCDセールスが振るわない時期もあった。それでも、女性アイドルほどは早急な結果を求められない状況もあり、じっくり実力と作品性を磨き、ライブでそれを知らしめてきた。結果、口コミでも評判は広がって、セールスも上向いて現在に至る。

 w-inds.も三浦も、今とは比較にならないほどテレビの影響力が大きかった時代にテレビに頼れなかったが、消費されることもなかった。長い目で見れば、アーティスト性を確立するうえでプラス面が大きかったかもしれない。EBiDANやDa-iCEは彼らと比べたら、男性アイドルとして恵まれた環境にある。それだけに、より長いスパンで成長と活躍を見せてもらいたい。

(文:斉藤貴志)

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