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独自の世界観で人気のバンド・空想委員会とは!?
挫折や失恋といった現実的なことを歌う空想委員会に共感するファン
「初めて出演したライブで、対バンしたアーティストが英語のバンド名ばかりだったので、日本語のバンド名にしたら目立つと思って付けたことが始まりです。僕の頭の中で繰り広げられる空想を歌う、ちょっとバカバカしいことをマジメにやる集団みたいなイメージで付けました。それで、委員会ならシャツとネクタイだと思って。あと、インディーズでの初作品『恋愛下手の作り方』の収録曲「独占禁止法」の歌詞に「クラスのマドンナ」というフレーズがあったので、そこからサイトのデザインも学校をモチーフにするようになりました。単純に、みんなに面白がってもらえたら良いなと思った一心ですね」(三浦/Vo&G)
ロックバンドというと、心に響くメッセージや前向きになる言葉を詰め込んだ歌詞を、カッコ良く歌うものというのが一般的だ。しかし、空想委員会が歌うのは、学生時代の挫折や失恋など、悶々とした想いがベースになっている。「世の中、リア充なやつらばかりじゃない」というのが三浦の弁。確かに、むしろそういう方が多いだろう。空想委員会は、憧れやこうだったらいいのにという願いを歌うのではなく、より現実的なことを歌うことを選び、それがファンの心を掴んだ。
「もともとは、高校生のときに日常生活で感じたフラストレーションを発散するために、曲を作り始めたんです。勉強もあまりできず、部活も辞めて、自分の居場所がないと感じていて。認めてほしいわけではないけど、そういう気持ちが大きかったのかもしれない。どこかで、必要とされる人になりたいと言うか……。たとえば、学校内で女子が作る人気男子のランキングがあって、それが象徴的ですよね。上位のやつは必要とされている人で、僕もそうなりたいけど、そうなれないことで、またフラストレーションがたまって、曲で発散するという日々でした。だから、今でもそうですけど、誰かのためにとか考えて曲を作ったことはないんです。ただ、聴いてくれる人が増えたことで、思ったことを、より正直に書こうと思うようになりました」(三浦)
一見草食系のイメージながら、ライブでは一転してアツく激しいステージ
「おのおのが持つ、春なら春の感覚があって。細部は違っても、大枠はだいたい一緒だと思うので、そこを意識しながら作ることで、統一したイメージを持ってもらえるものになったと思います。だから、たぶんタイトルを換えても、秋の曲は秋っぽさを感じてもらえると思います。今回はギターのフレーズや音作りにもこだわったので、そこにも注意をはらって聴いてもらえたらうれしいですね」(佐々木直也/G)
「もともと僕と佐々木くんは、三浦さんの歌声とメロディーの良さにひかれて、空想委員会に入ったんです。三浦さんの声の太さとかメロディーの感覚は、他のどのバンドよりもズバ抜けていると思っています。だからアレンジの際には、歌詞の細かいことを表現するよりも、三浦さんの声と共に奏でられるメロディーの雰囲気を重要視して作るように心がけていますね」(岡田典之/B)
「今作ではダンスビートの「作戦コード:夏祭り」やミディアムロックの「秋暮れタイムカプセル」など、様々な曲調を収録していますが、僕らの中では、バラードをちゃんと歌えてこそロックバンドというイメージです。オアシスとかフー・ファイターズのように、ノレる曲をやりつつも、バラードでもちゃんと聴かせることができるバンドになりたいですね」(三浦)
今回「枕草子」をモチーフにしたこともあってか、学生のファンが非常に増えたとのこと。CDショップでイベントをやると、学生服を着た子がお母さんと一緒に来たり、子どもの代わりに来たと言って握手を求めるお母さんもいるとのこと。「空想片恋枕草子」というタイトルも絶妙で、こうしたキャッチコピーのようにタイトルとして完結していながら、非常に興味をそそられる楽曲タイトルも好評を得ている。これまでの曲タイトルを見ると、「サヨナラ絶望人生」「波動砲ガールフレンド」「モテ期予備軍」など、どれもタイトルを見ただけで、聴いてみたいと思わせてくれる。「いつも制作進行ギリギリまで考えているので、タイトル決めは毎回地獄の苦しみです(笑)」と三浦。そうした細かいこだわりは、パッケージの隅々にまで及んでいる。ブックレットの歌詞は毎回三浦が直筆で書き、CDの帯の裏にはおみくじがついていたことも。今回の「空想片恋枕草子」の初回盤には、実際に使えるようにと、カレンダーステッカーが付いている。
「自分がファンだったとしたら、ここまでやってくれたらすごくうれしいですからね」(岡田)
「CDを買ってくれる人が少なくなっているのは、どうしようもない事実なので。せめて買ってくれた人には、すみずみまで楽しんでもらいたいという気持ちで作っています」(佐々木)
「3人でいつも話しているのは、絶対に代わりのきかないバンドになろうねっていうこと。この気分のときは、空想委員会じゃないとしっくり来ないねって思ってもらえるようなバンドになりたいです。そのためには、どんな労力も惜しみません。ライブも1回1回必死でやっていて、毎回その日のうちに種をまいて刈り取るくらいの気持ちでやっています」(三浦)
一見草食系のイメージながら、ライブでは一転してアツく激しいステージングを繰り広げる彼ら。会場が一体となる盛り上がりは、体感しないと分からない楽しさがある。楽曲、パッケージ、ライブ、どこから入っても楽しめる空想委員会。今後はさらに、メガネやネクタイでファッションブランドとコラボするなど、多角的な広がりにも期待ができそうな存在だ。
(文:榑林史章)
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