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染谷将太インタビュー『男として変わっていく感じがあった』

1990年の連載開始から20年以上を経た今でも、色褪せない独創性で熱烈な支持を受ける岩明均氏の伝説的コミックを山崎貴監督(『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』)が日本最高峰のVFXを駆使して実写化した映画『寄生獣』。山崎組は4度目となる主演俳優・染谷将太に、5ヶ月にわたる撮影と作品への思いを聞いた。

寄生獣役で呼ばれると思っていた(笑)

――主人公・泉新一役に決まり、古沢良太さんの脚本を読んだときの感想を教えてください。
染谷 山崎監督が『寄生獣』を撮るという噂は先に聞いていて“すごいな”って思っていました。ちょうどドラマ『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京系)をてんやわんやで撮影していたときに(笑)オファーがあって、ちょっと意外でしたね。どちらかといえば、浦上とか島田(秀雄)とか、寄生獣役で呼ばれそうだなって思っていたので(笑)。わりと何でも楽しんでしまう性格なので、やるとなってからは、こんな壮大な映画に参加できるなんて、不安に打ち勝ってしまうくらい楽しみでしたね。完結編も含め、古沢さんの見事な構成力で、原作の大切な要素を忠実に捉えつつ、映像としてしっかりとエンターテインメントになっている台本だと思いました。

――突然現れた寄生生物が人間を喰い始めるという衝撃的な物語で、右手に寄生生物ミギーを宿す高校生の新一。人間とパラサイトの戦いに巻き込まれるなか“人間とはどういう生き物か?”“正義とは何か?”という根源的なテーマに葛藤していきます。
染谷 “人類とは?”というテーマが根本にあるとしたら、人間のなかに異物が入ってきて、荒らされることで、人間という生き物の矛盾や偽善、あるいは逆に美徳だったり、そういう(人間の)良いところや悪いところが明確に浮き出てくる。作品全体を通して、今回のテーマを、自分はそんなふうに読み解いたというか、感じました。

――ミギーが右手に寄生し、さらには体内で細胞が混じってパラサイトの感覚を持つようになっていく新一の変化をどう捉えましたか?
染谷 ピュアな少年が、ミギーと出会い、寄生生物と混ざることで、どんどん混沌としていき、いろいろなことに悩まされていくわけですけど、逆におかしな環境に追い込まれていくことで、本当に大切なものに気づいたり、出会っていく。それまでの新一の人生で見えなかったものが見えてくる。気づかなかった愛に気づかされる。成長という言葉が正しいのかはわかりませんが、演じていて、男として変わっていく感じはありました。

 山崎監督が常におっしゃっていたのは、最初の頃の新一は(観客が)愛情をもって観ていられる等身大の少年で、だんだん心がなくなっていったときにも、観客との距離ができてしまうような新一にはしたくない、と。自分でも、どんどん心は欠けていくけれど、どこか人間臭い部分を大事にしたいと思っていました。たまに人間っぽくなったり、チラチラと見え隠れする新一の不安定さが、とても魅力的だと思ったので。根本に怒りと悲しみを大切に持っておくことだけはブレないようにして、そのなかでそのシーンでの監督の狙いを理解して、新一の変化のさじ加減を相談しながら一緒に作っていきました。

こう見えてけっこうアクティブなので(笑)

――体の一部が別人格で、それと会話するという難易度の高い一人二役。すばらしいダンスを披露した『不気味なものの肌に触れる』(続編切望!*筆者注)とはまた違う、パントマイム的なアクトにはどのようなアプローチで?
染谷 どうやら前例がないみたいで……。『ど根性ガエル』のピョン吉も思い浮かべたんですけど、実写じゃないんで参考にならないし(笑)。CGものでいえば『テッド』(2012年/セス・マクファーレン監督)は撮影前に見返しましたけど、これもあまり参考には……。とにかくやってみなきゃわからなかったので、現場に行って成立させようとがんばりました。

 クランクイン前に、ミギー役の阿部サダヲさんの(パフォーマンスキャプチャー)撮影があって、そのときに全編を通して阿部さんと一緒にお芝居をしたことで、全体的なバランスを把握できました。阿部さんがせっかく魅力的なミギーを作ってくださったので、自分が台無しにしないようにがんばろうって。(ミギーの)造形は一見気持ち悪いんですけど、動きといい、とってもスイートなんですよね。深津(絵里)さん、東出(昌大)くん、それぞれのパラサイトも個性があっておもしろいです。

 一重に心がないといっても、心のないっぷりが全然違います。そこがすごく魅力的でしたね。新一とミギーの関係性も、ミギーとだから描けているというのか。人間じゃない生物との友情だから、人間同士よりもより際立って見えてくるものがあるんじゃないかと演じていて思いました。

――原作では「泣く」という行為が人間の特徴のひとつにあげられていましたが、先ほどおっしゃっていた、新一の感情のベースが怒りと悲しみであったならば、染谷さんご本人のベースにある感情とは?
染谷 そうですねぇ。きっと何事でも楽しみを見つける人間なので、まぁ、もともと楽しみを求めているんでしょうけど……。たとえつまらないと思うことでも楽しみを見つけることで楽しむ性格……。質問の答えになっていますかね?(笑)

――つまり表現の世界には、プレッシャーをもしのぐ楽しみがたくさんある、と?
染谷 まあ、そうですね。もともと映画が好きで、今も映画が好きだから役者をやっているようなところもありますから。長くやっているので、今いちばん技術として身についているのがたまたまお芝居ですけど、何かしらの形で映画に携われていたらいいなって。素敵な人たちが集まってひとつのものを作るというのがとてもすばらしいことだし、純粋に楽しいですし。アクティブじゃないですか! こう見えてけっこうアクティブなので(笑)。

――最後に、染谷さんオススメのSF映画を教えてください。
染谷 SFもたくさんありますからねぇ。(しばしの沈黙後、ぼそりと)『マーズ・アタック!』(1996年/ティム・バートン監督)とか? SFというか、特撮映画ですよね。CGというより、コマ撮りですからね(笑)。ああいう特撮映画が大好きなんです。
文:石村加奈、撮り下ろし写真:逢坂 聡
ヘアメイク AMANO、スタイリスト 小橋淳子

寄生獣

 普通の高校生・泉新一(染谷将太)は、寄生生物に右手を食われてしまう。彼らはなんと人間の身体に寄生する知的生物で、ほかの人間を食料としてむさぼっていく。新一を襲ったパラサイトは、脳を奪うのに失敗し、右手に宿る。右手は自らをミギーと名乗り新一に共同生活を持ちかけてきた。

監督:山崎貴
出演:染谷将太 深津絵里 阿部サダヲ 橋本愛 東出昌大 ほか
【公式サイト】(外部サイト)
2014年11月29日(土)全国東宝系ロードショー (C)映画「寄生獣」製作委員会

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