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(更新: ORICON NEWS

三池崇史監督&伊藤英明 SPECIAL INTERVIEW ふだん感じない興奮を覚えつつ… 真っ当な人間の感情なのか考えてもらいたい

壮絶な悪意の物語を凄惨な映像表現をともなって描き切る。今の世にあふれる毒も刺激もない“ぬるいもの”を笑うかのような尖がった、つきぬけた戦慄のエンターテインメント『悪の教典』。“海猿のヒーロー”からサイコキラーへと姿を変えた主演の伊藤英明、愛の積み重ねから暴力表現を生み出す三池崇史監督が、惨劇の物語から伝えるべきこと、感じてほしいことを語りあうスペシャル対談!!

伊藤英明が持つ説明のつかない引きの強さ[三池崇史監督]

──三池監督におうかがいします。『海猿』シリーズでヒーローを演じてきた伊藤英明さんを、凶悪な殺人鬼役に起用した理由とは?
【三池】 蓮実(伊藤演じる教師)のおもしろいところは、人としてひとつ大きく欠けているものがあるんだけど、他のものは大体持ってしまっている。そういうところが伊藤英明と似ていますよね(笑)。『海猿』が公開されたすぐ後にこの映画が公開されるわけですけど、世界中を見渡してもこういう2本の主演作が同じ年に公開される人がいるのかというと、いないと思うんですよ。伊藤英明はそういう引きの強さを持っている。役者としての魅力というだけでは説明がつかない、もっと動物的な強さだと思いますね。それとクールさ。ずっとクールな目をしているんだけど、後半は明らかに狂っていますよね。とくに銃を持ったら、火薬の威力なのか、人が吹っ飛んでいくという手応えなのか、明らかに目の中が狂っている。眼球では演技できないはずですけど、眉とか表情じゃなくて、目の中が狂ってるように感じるんです。クールなところと、無邪気に笑うところが同居していて、そこがまた蓮実的という感じがしました。

【伊藤】 僕にとってはチャレンジでしたね。でも役者っていうのはいつも自信がないもので、逆に毎回そうじゃなきゃ意味がないと思うんですよ。役をいただいたときに、俺はこれができないかもしれない、だけどそこに全力で取り組んでいく、という。『海猿』がヒットした年に、まったく逆のものをやれるというのは、すごく恵まれていると思います。『海猿』でヒーローをやったから、いい人の感じを出さなきゃいけないんじゃないかという迷いがあったら、『海猿』を応援してくださった方たちにも申し訳ない。だから、監督とスタッフとキャストを信じて、裸になって全力で振り切るしかない。蓮実のイメージに関して「恐く撮るのも不気味に撮るのも僕の仕事ですから」って監督に言われた瞬間、僕はすごく楽になれたし、心を裸にしてエネルギーをぶつけようと開き直れた気がします。

頭で考えるのではなくニュートラルに[伊藤英明]

──善と悪、ふたつの顔をどうやって表現しようとアプローチしたのでしょうか?
【伊藤】 蓮実の行動は到底理解できない。でも原作を読んだとき、殺人鬼である蓮実をどこか応援してしまっているのに気付きました。このピンチをどうやって切り抜けるんだろうと。最初はサイコパス(反社会性人格障害)として、どこかカテゴライズして考えていたんですけど、蓮実という男は純粋だし、動物的な本能を持っていると思うんですね。だから、どう演じるかと頭で考えるのではなく、常にニュートラルな状態でいましたね。なにも考えない、無心ですよね。自分がサイコパスというものにカテゴライズして芝居をして、それがもし成立してしまったら、これからの僕が苦しいなとも思って。つまり、サイコパスという悪役を演じたと、わかりやすく自分のなかで決着をつけてしまったら、これからの役者人生が狭くなると思ったんです。それが恐かったから裸になれたんだと思います。

【三池】 蓮実にあるのは、二面性だけなんですよね。映画って、キャラクターがブレてはいけないという決まりがあるらしくて、朝起きたときと夕方で言っていることが違うと、観客は困るというんですね。でも普通の人間を描こうと思ったら、本当は会う人ごとに微妙にニュアンスを変えないといけないはずなんです。そういう点では、蓮実の二面性というのは、それだけで恐いですよね。ふたつだけで生きてきたんですから。それも自然に身につけてきたものだから、本人のなかでは境界線もない。だから、それを記号のように演じ分けないように意識してもらいました。
蓮実は共感能力だけが欠けている人間です。でも、そもそも共感能力なんてものが人間に備わっていたかどうかというと、昔はたぶんなかったんですよね。いちいち共感していると悲しくて生きていけないじゃないですか。でも、ちゃんと組織や社会を作って生きていくなかで、自分の身を守るために芽生えてきた能力だと思うんです。それなのに、そもそも共感能力があるのが人間だと論理がすり替わってしまっていて。蓮実という男はそこが欠落して生まれただけで、そこには人に対する恨みとか、理由はないんですよね。より動物的というか、より人間らしく生まれてきてしまったのかなと。決して共感できる人間ではないんですけど、何か欠落した人間のことを哀れに見るというのはエゴじゃないですか。恐怖を感じつつも興味深く見ていくというのが、自分のこの映画に対するスタンスです。
(文:岡 大/撮り下ろし写真:片山よしお)

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映画情報

悪の教典

 蓮実聖司は、生徒から“ハスミン”という愛称で呼ばれ、絶大な人気を誇る高校教師。学校やPTAの評価も高く、いわば「教師の鑑」とも呼べる存在だったが、それはすべて仮面に過ぎなかった。彼は他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)だったのだ。

 蓮実は自らの目的のためには、それが最善の策であれば、たとえ殺人でもいとわない。学校が抱える様々なトラブルや、自分の目的の妨げになる障害を取り除くために、いとも簡単に人を殺していく。そして、いつしか周囲の人間を自由に操り、学校中を支配しつつあった。だが、すべてが順調に進んでいた矢先、小さなほころびから自らの失敗が露呈してしまう。それを隠滅するために考えた蓮実の解決策。それは、クラスの生徒全員を惨殺することだった…。

監督:三池崇史
出演:伊藤英明 二階堂ふみ 染谷将太 林遣都 浅香航大 水野絵梨奈 山田孝之 平岳大 吹越満
【OFFICIAL SITE】
2012年11月10日(土)全国東宝系ロードショー (C)2012「悪の教典」製作委員会

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