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綾野剛 SPECIAL INTERVIEW ……“自分”は必要ない

テレビ、映画、舞台――話題作への出演が続き、さらなる飛躍の予感を感じずにはいられない俳優・綾野剛。北川悦吏子と岩井俊二が『ハルフウェイ』以来再びタッグを組む『新しい靴を買わなくちゃ』では、独特の美しさにつつまれる映像世界のなかで、画家を目指しながらパリで暮らす青年を演じる。クールな表情の内側に隠された作品に対する熱い想いと舞台裏の秘話をタップリと語ってもらった。

シーンの後半部分はほとんど即興

――北川悦吏子監督作品には初参加の綾野さんですが、監督の演出はいかがでしたか?
綾野「この台詞は必ず言ってね」という指示はありましたが、お芝居や動きの演出などはなく、精神面での確認が多かったです。監督とのやりとりでは、「綾野くんいける?」「はい。大丈夫です」だったり、「すみません、30秒もらってもいいですか?」「うん、わかった」という風に気持ちの準備の確認が主でした。

――撮影方法はどんな感じでしたか?
綾野テストをせずに本番に入る現場だったので、試しながらの撮影でした。例えば台詞が5行しかないシーンでも、5分ぐらいカメラを回しているんです。ただ、そのときに監督が思い描くカンゴとスズメが画面にいなければ、カットをかけられます。監督は綾野剛と桐谷美玲のドキュメンタリーではなく、カンゴとスズメの生きている時間を撮影されているんだと感じました。なので、ふたりのシーンではワンシーンの後半部分がほとんど即興でした。

――カンゴとスズメがお互いに向き合って少しずつ距離を縮めるシーンがキュートでしたが、あれも即興ですか?
綾野動きは即興です。……それはあくまでも即興であって、自由に演じている訳ではありません。自由になった瞬間に自分が出てしまうというか……それって一番危険なことで、僕は“自分”は必要ないと思って役を演じています。相手の事をスズメだと思って演じているだけですし、スズメがいると思って演じると自然にカンゴになれます。

――室内のシーンも全てパリで撮影されたということですが、役に入りやすかったのでは?
綾野カンゴは確固とした目的を持ってパリに来ていて、パリで感受性を豊かにし、いろいろな事を吸収し、それを絵に投影していくという作業が必要だったと思います。役に入りやすいというよりは、そういった意味でパリで実際に撮影することの重要性は感じていました。

“気を遣いあっている”という事が重要

――パリでのオフはどう過ごされましたか?
綾野パリに到着した日は一日中ずっと観光したり、公園で寝てみたり、パリのスズメってこんなに近寄ってくるんだなとか、カンゴがやったであろうことをなんとなくやってみました。

――それは役作りでもありますよね。画家を目指すという部分では?
綾野カメラでファインダーをのぞくように指でパリの風景を切り取って、頭のなかで絵を描いたりしました。撮影前に実際に描いてしまうと、自分のタッチの癖が出てしまうので。現場に用意されたカンゴの絵を見て、どういう風にカンゴは描いたんだろうという事だけを考えました。

――実際に描いたりもしましたか?
綾野撮影で使った絵は、用意された絵にテープを貼って、カンゴだったらこう書くだろうと、絵の具をつけた指で上から塗ったりもしています。

――綾野さんが今作への出演を決めたポイントとは?
綾野岩井俊二さんのプロデュース作品だったことですね。『スワロウテイル』を初めて観たときに、“この世界にいたい”と思ったんです。役者になりたいではなく、“この世界で生きたい”って。

――この作品はどんな映画だと思いますか?
綾野すごく単純な見方をするとラブロマンス。パリで出会い、こんな素敵な事が現実に起きたらいいなというようなことが体感できる映画だと思います。ただ、僕自身はすごくディープな作品だと思っていて、各々が心にポッカリ穴が開いた状態で、それをお互いに“気を遣いあいながら”埋めあっていく。僕のなかで“気を遣いあっている”という事がすごく重要です。結果、全員が実は自分でその穴を埋めていくということをしていく作品なのかなって思います。

――前回のインタビューで、『へルタースケルター』で演じた奥村は“堕ちていく記号”だとおっしゃっていましたが、今回のカンゴは作品のなかでどんな存在だったと思いますか?
綾野貪欲に何かを得ようとしていて、ひとりだけまったく渇望していないんです。何かに向かって一番“意欲的”じゃなきゃいけないのがカンゴだったと思います。
(文:奥村百恵/撮り下ろし写真:片山よしお)

映画情報

新しい靴を買わなくちゃ

 妹に付き添って、パリ観光にやって来たカメラマンのセン(向井理)は、パリに着くなり、単独行動をしたいと言う妹スズメ(桐谷美玲)に置き去りにされてしまう。泊まるはずのホテルもわからず途方にくれるセンだが、落としたパスポートが踏まれて破れてしまい、さらに困った状況に……。踏んだ靴の主は、パリでフリーペーパーの編集をする日本人女性、アオイ(中山美穂)だった。パスポートを踏んだために、ヒールが折れてしまったアオイの靴を、接着剤で直すセン。感謝したアオイは、困ったときのために自分の連絡先を渡す。

 スズメと連絡がとれないセンは、しかたなくアオイに電話をかけ、その夜、ふたりは食事をすることになる。話がはずみ、酔っぱらってしまったアオイを、自宅まで送り届けるセン。結局、ホテルに戻れなくなったセンはアオイの部屋に泊まってしまう。そのころスズメは、パリに住む恋人のカンゴ(綾野剛)を訪ね、久々の再会を果たすも、カンゴの態度はどこかぎこちない。

 センはカメラマンとしてアオイの取材にも同行し、パリを満喫していく。ヒールが壊れた靴のまま歩き、「新しい靴、買わなくちゃ」とつぶやくアオイを、センは優しく見つめる。やがてふたりは、誰にも言えなかった思いも打ち明け合うのだった。なぜひとりでパリに暮らしているのか。これからもカメラの仕事を続けるべきなのか。抱きしめ合うふたりの気持ちはひとつになっていく。

監督・脚本:北川悦吏子
プロデュース:岩井俊二
出演:中山美穂 向井理 桐谷美玲 綾野剛
【OFFICIAL SITE】
2012年10月6日(土)全国ロードショー
(C)2012「新しい靴を買わなくちゃ」製作委員会

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