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奥田弦『プロ作家として本格始動した12歳の天才ジャズ・ピアニスト』

12歳の “天才ジャズ・ピアニスト”、奥田弦の楽曲が、9月より上野の森美術館で開催予定の『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』のテーマ曲に大抜擢された。デビューから3年、9月には2ndアルバムの発売も控えるなか、自身の成長についてや、プロ作家としても活動の幅を広げている今の心境について聞いた。

ジャズは「自由な会話」 自分の気持ちをどう音で表現できるか

  • 現在12歳、プロ作家としての道を歩み始めた奥田弦。夏休みにやりたいことは「木登り」

    現在12歳、プロ作家としての道を歩み始めた奥田弦。夏休みにやりたいことは「木登り」

 2011年、日本のピアニスト史上最年少となる9歳の時に録音したアルバム『奥田弦』でCDデビューし、ジャズ・スタンダードやクラシック曲を中心に、オリジナル曲も収録したこのアルバムで、その年の「ジャズ・ジャパン・アワード」のニュー・スター部門を獲得した奥田弦。あれから3年。昨年10月にリリースされたビートたけし監修ジャズアルバム『たけしとブルーノート』の収録曲「浅草キッド(English Version)」ではアレンジと演奏を担当し、青山テルマと競演。さらに、現在放送中のテレビ朝日系『烈車戦隊トッキュウジャー』の挿入歌「夢眼∞イマジネーション」ではピアノアレンジと演奏を担当するなど、プロの音楽作家としての活躍の場も広げている。この9月1日には、JASRACに史上最年少の作曲家として入会する。

 奥田が初めてピアノに触れたのは3歳のとき。おもちゃのピアノで遊び始めたのをきっかけに電子ピアノに触れるようになり、5歳からは生のピアノを弾き始めた。とはいえ、きちんとピアノの先生に習ったのは3ヶ月間のみ。他は自己流で腕を磨いてきた。ジャズに傾倒しはじめたのは5歳のときのこと。家にあったCDを聞いてからその魅力に取りつかれ、ビル・エヴァンスのCDを買ってもらったのを皮切りに、オスカー・ピーターソン、アート・テイタム、バド・パウエルらに心酔。ジャズにのめり込めばのめり込むほど、ピアノに向かう時間が長くなり、自己流で大人顔負けのテクニックや表現力、さらに、作曲力、アレンジ力も身につけた。

 「クラシックは「よくできた本」で、ジャズは「自由な会話」だと僕は考えています。僕は会話のほうが好きだし、自分の今の気持ちをどう音で表現できるか考えて、自分の世界観を作り上げていくのが好き。それができるのが自由なジャズなんです」

 食事や入浴などの基本的な生活と学校以外、空いた時間はすべて音楽に費やし、最近は打ち込みにものめり込んでいるという。新曲も溜まり、10月には2ndアルバムをリリース予定なのだが、「ここ数年で曲自体のグレードがあがったと思う」と自ら冷静に分析する。
「作曲をし続けると、どうやったらかっこよくなるかがわかってくるんです。前は楽器の種類も使い方もわからなくて、できることと言えば、適当に音符を並べて、バイオリンとか楽器を鳴らしてすべて全音符で打ち込むくらいだったけど、今は、ギターやドラムやフレームも考えられるようになって、曲としてまとめることがなんとかできるようになってきました。前より“遊び”のグレードがあがったという感じです」

スーパー戦隊シリーズとの不思議な縁

 「自分が楽しまなければ、人を楽しませることはできない」が音楽をやる上での奥田のモットー。その根底には好きなことならまっしぐら、ハマりやすくトコトン研究する性格も力を発揮している。たとえば、ドラムならアート・ブレイキー、ベースならレイ・ブラウンやロン・カーターなど、各パーツで好きなプレイヤーがいるのだが、それも、CDを聴いていいなと思うプレイヤーがいたら、そのプレイヤーが関わっている作品を探し、聴いて、その人がなぜカッコイイか、自分が惹かれるかを研究する。そうやって自分の中に感性の種を次々と植えつけているのだ。

 さらに、最近は、アレンジや作曲の依頼等、仕事の幅が広がったことで、自分の興味の範囲を超えた音楽に触れる機会も増え、「ますます音楽が楽しくなっている」と笑顔で語る。
「テルマさんとの曲では、ボーカルと一緒に作るのが初めてだったのですが、相手の音域に合わせてキーや音程を変えたり、かっこよくするために、よくブルースやジャズで使う半音下げるブルーノートを加えてみたりしました」

 『烈車戦隊トッキュウジャー』では、前述の「夢眼∞イマジネーション」に加えて、敵対する悪の王国「シャドーライン」の“ノア夫人”のキャラクターソング「ノア ノア ノアール」の作曲も担当。音楽ディレクターからは「シカゴミュージカルとか、オール・ザット・ジャズのようなイメージで」というリクエストがあったという。
「シャドーラインは悪者なので、大人っぽい感じが合うと僕も思ったし、オール・ザット・ジャズも大人っぽいので、ちょっと大人っぽくかっこよく、をイメージして作りました」

 ところで、『烈車戦隊トッキュウジャー』には意外な縁があった。奥田はプライベートの時間はほぼ音楽と読書に費やしているため、テレビをほとんど見ないのだが、唯一ハマったことがあるテレビ番組が同じスーパー戦隊シリーズの『魔法戦隊マジレンジャー』。ピアノを弾くようになってすぐ、主題歌を弾き語りで歌っていたという。その曲を作り、歌っていたのが、「夢眼∞イマジネーション」の作詞・作曲・編曲・歌を担当した岩崎貴文氏。不思議な縁に感激したそうだ。

「子どもなのに」と言われたくない 大人と同じ舞台で勝負したい

  • 『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』のテーマ曲「北斎」を書き下ろしたことも話題に。 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」William Sturgis Bigelow Collection Photograph(C)2014 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved.

    『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』のテーマ曲「北斎」を書き下ろしたことも話題に。 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」William Sturgis Bigelow Collection Photograph(C)2014 Museum of Fine Arts, Boston. All rights reserved.

 9月13日〜11月9日に東京・上野の森美術館にて開催予定の『ボストン美術館浮世絵名品展 北斎』ではテーマ曲を担当。直接の依頼ではなく、コンペに参加し、多くの作品の中から抜擢されたというから驚きだ。「北斎は好きだったので、『富嶽三十六景』の『神奈川沖浪裏』の絵をピアノの前に飾って、波の勢いや激しさといった水を中心にイメージして作曲しました」。

 その年齢とテクニックのギャップから、「子供とは思えない」と評されることが多いが、「史上最年少のタイトルは嬉しいけれど、“子どもなのに”と言われるのはイヤなんです」と本人はキッパリ。その根底にあるのは、自分がまだ未熟なことはわかったうえで、大人と変わらないものを提出しようという心構えと、「子どもなのにすごい」ではなく、年齢に関係なく一流のプレイヤーとして認められたいという目標。音楽に対するそんな真摯な姿勢と向上心に感じられるのは、無限の可能性だ。

 最後に今後の目標を聞いてみると、海外に留学して、世界というフィールドで腕を磨くこと、と返ってきた。
「チャレンジへの恐怖心はありません。チャレンジがあったから人は成功するわけで、成功のもとを捨てるということは失敗もしないけど、成功も絶対しないということですからね。世界には素晴らしいプレイヤーがたくさんいますから、僕の上にいる人の技術を盗んで、その人の上に行ってというふうに、どんどん上に昇っていけたらと思っています」

 世界を見据える目で希望を語る一方で、「夏休みにやりたいことは?」の問いに「木登り!」と9歳の頃と変わらない笑顔で変わらぬ答えを返してくれた奥田。自由で熱いソウルにもますます磨きをかけてほしい。
(文/河上いつ子)

イベント・コンサート情報


■『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』
○期間:2014年9月13日(土)〜11月9日(日)
○会場:東京・上野の森美術館

テーマ曲「北斎」を奥田弦が書き下ろした。
楽曲の一部は、オフィシャルサイトで公開中の「冨嶽三十六景」3D動画で聴くことができる。
[詳細はこちら]公式サイト



■コンサート予定
○11月16日(日)兵庫・新神戸オリエンタル劇場
『奥田弦JAZZトリオコンサート』
○12月13日(土)福井・響のホール
『奥田弦ソロコンサート』

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