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T.M.Revolution『アグレッシブな作品に挑戦し続ける原動力とは!?』

アイアンマンやハルク、キャプテン・アメリカなど、ヒーローものでおなじみのマーベルアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』の主題歌&エンディング曲で、新境地を築いたT.M.Revolution。デビュー20周年を目前にした現在もなお、世界基準からドメスティックまで幅広く、かつ失敗を怖れないアグレッシブな作品に挑戦し続ける原動力はどこからくるのか?T.M.R.らしさ――唯一無二の西川イズムに迫ってみた。

今作のMVは、デビュー20周年を前にした挑戦

――ニューシングルは4月からスタートしたアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』のオープニング&エンディング曲。『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』(テレビ東京系)は日本製作によるマーベル初の男児向けアニメーションシリーズですが、主題歌に決まったときはどう思いました?
西川貴教単純に嬉しかったです。マーベルがターゲットを10代の男の子ってところに絞りこんだ作品作りは初めてらしく、そこに呼んでもらえたのは光栄だなと。

――しかも母体のディズニー社はクリエイターやアーティストのセレクトに厳しいことで有名ですよね。
西川そうですね。そもそもディズニーの作品は従来だと、本国で製作したものを日本語に吹き替えて放送するんだけど、今回は日本のプロダクションで製作するっていう珍しい試みで。キャラクターの描き方とかもアメリカのヒーローってゴリゴリマッチョだったりするけど、日本だと変わってくる。『聖闘士星矢』がムキムキだったら、多分全然人気出なかったでしょ(笑)。そういう日本人の指向性に合わせた作品作りをするなかで国内での認知度が高く、かつ現地のスタッフも“ああ、彼ね”ってわかるようなアーティストってことで僕が選ばれたみたいです。

――曲作りの進め方に違いはありました?
西川そこは日本のドラマやCMと変わらずでした。ただ夕方に放送される、男の子向けのアニメってことで、何を打てば響くのか最初は全然見えてこなかった。それで、いろいろ考えた結果、自分たちも小学校3〜4年生ぐらいの頃って、大人たちが思うよりもオトナだったなと。だったら子どもがわかるようにお話してあげるような目線を下げる配慮は、あえてしなくていいんじゃないかってことになって。言葉も詩的というか、倒置法と比喩を使った歌詞だからハマる表現法をそのまま採用したんです。

――目線を下げず、いつものT.M.Revolutionのままでいいと。
西川そう、だからのっけから<眠る想い集めた>ってフレーズが出てきて、意味がわかんなかったりするんだけど(笑)、いつか子どもたちがそのニュアンスをわかってくれればいいかなと。とりあえず膝を折り過ぎることをやめたんですね。その決断は大きくて、そこから「突キ破レル」ってタイトルも出てきた。副題の「Time to SMASH!」とどちらにしようか悩んだけど、今回はこっちが主題だなと思ったんです。

――確かに子どもって大人が思っているよりもずっと大人っぽいものが好きだし、それをちゃんと“カッコいいもの”と認識しますよね。そういう意味でエンディングの「Thread of fate」も、かなり通好みの曲ですが単純にカッコいいなと思いました。
西川エンディングだから、その日観た回の余韻を残すような切ないものにしたくてこういう曲になったんだけど、ミュージックビデオ(MV)に収録するリアレンジしたバージョンは僕のなかではデビュー20周年を前にした挑戦。実は去年から、J-POPとラウドなものを併せておもしろいことができないかなと思っていて。でも自分が若いバンドの子たちと同じようなアプローチをしてもしょうがない。もっと挑戦的で刺激的なものはないかずっと悩んでいたんですね。で、みんながあまり触っていなくて、僕自身も新たなマインドでトライできるものとなるとジャズやフュージョンかなと。それがJ-POPと混ざったらおもしろいんじゃないかってところからできた曲アレンジなんです。

必死だし強迫観念も……孤高でいるつもりはない

――新鮮なのにノスタルジーを感じる、今までのT.M.R.にはなかった曲ですよね。MVもすごく実験的な映像で。
西川昔のスタジオライブみたいな映像というか。ああいう感覚でできたらいいなと思って、生演奏を一発録りしたんです。で、海外の方にも観ていただけるかなと思って、日本のシンボリックなもの――空手家の女性にも出演していただいたっていう。

――バンドと西川さん、そして空手女子と、三者が同じ画面にいるって絵がすごくシュール(笑)。
西川あの女性は宇佐見さんという空手の女子形で世界チャンピオンになった方で、ため息が出るくらい素晴らしかった。腕の角度とか水準器をつけているんじゃないかってぐらい、真っすぐで正確なんですよ。今回は曲もジャズやフュージョンというある種、決めや仕掛けが多いアプローチで、それって切れ味が重要じゃないですか。そこと共通するものってことで、彼女の空手パフォーマンスをエンターテイメントとして同じ絵の中で見せたかったんですよね。

――西川さんならではというか。西川さんじゃないと思いつかないアイディアですね。
西川今の自分が出せるキラキラ感は何かなって考えて出てきたものが、この曲であり映像だったんだけど、完成したことで20周年が途端に楽しみになった。これができるなら何でもできるというか。照明とかセットとかがシンプルなところ、例えばブルーノートやクラブとか“T.M.R.じゃないよね”っていう場所で、呼吸の音も含めてガッツリ演奏を楽しんでもらうとか。そういうこともやれる気がするんですよね。

――デビュー20周年を目前にした今も、世界基準からドメスティックまで網羅できるアーティストは国内では珍しい。西川さん自身、T.M.R.がそういう“孤高”のスタンスを維持している理由は何だと思いますか?
西川僕は孤高でいるつもりはないですよ、全然。むしろ必死だし強迫観念も強くて、スタッフにも常に「明日があると思うな」って言ってます(笑)。だから道を外したことはやりたくないし、自分を律するってことももちろん必要。あとはファンの欲求を受け入れつつ、受け入れ過ぎないバランスが大事というか。期待にどう応えたらいいか、正解はないじゃないですか。しかも仮に満足してもらって、次また同じことをやったらダメだったりもするから、内外の批判は覚悟での上で結果を見てもらうしかない。そのためにはあえて周囲の評価を最優先にせず我を張らなきゃいけないこともあるわけで、そのなかで自分がどれだけアイディアを出して汗をかけるか。大事なのはそこだと思いますよ。
(文:若松正子)

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