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井上陽水『名盤『氷の世界』を“解凍” 自身が語る制作舞台裏!!』

 史上初のミリオンセラーを記録した歴史的名盤『氷の世界』。発売から40年が経過し、デジタルリマスター盤が発売。ORICON STYLEでは井上陽水にインタビューを敢行し、当時の制作秘話や、故・忌野清志郎さんとの思い出など、貴重な話を聞いた。

『氷の世界』のヒットには戸惑いがあった

――実際に『氷の世界』が大ヒットして、少なからず達成感も井上さんの中で芽生えたと思いますが、当時はどのような心境だったんですか?
井上うーん。まぁ、どのアルバムも作る度に、少なからず達成感はあるんですけど、『氷の世界』を作り終えた後に、特別に「凄いの出来ちゃったね〜」という気持ちは無かったですね。結果として色々な偶然が重なってね。時代が後押ししてくれたというのが一番大きいんじゃないかなぁ。もちろん、ミリオンを突破したということを聞いた時は喜んだし、うろたえたしね。自分の作品が多くの人に受け入れられるとか、ランキングでトップを飾るとか考えられない! って気持ちだったし。

――やっぱりそうだったですね。
井上福岡にいたときも「天下を取るぞ!!」みたいな野心があったワケでもなかったし。音楽が仕事として成り立てばいいなぁ〜くらいな気持ちしかなかったかなぁ。

――井上さんというと、常に自然体で、あまりガツガツしていない印象が強いですよね。
井上うん。スペシャルな野心はない(笑)。

――NHKの特番でも井上さんが『氷の世界』について「モンスターになって独り歩きしている感覚」というコメントが印象的だったんです。
井上僕自身、人気歌手の対象に自分がなるとは夢にも思わなかったし、多くの人が受け入れてくれるのは戸惑いがあったんです。でも、それでも若いですから。 妙な自信もあって「当然だよねぇ」なんてうそぶいていた面も無かったのか? と言われたら……ちょっとはあったよねってなりますけど(笑)。

――ちょっとはあった(笑)。
井上多少の自信過剰ね(笑)。でも、やっぱり戸惑いの方が大きかったなぁ。いきなり事務所にテレビとかCMとか、いろんなオファーが来て殆ど辞退してたんですけどね。「なんかおかしいなぁ〜」って感じてはいましたね。“ブーム”っていうのは、ワケのわからない感じになっていくことは何となく分かっていたので。なんかね、そういった華やかな舞台に出て行って「どうですか? いいでしょ!」っていうのも何だかなぁって(笑)。

――確かにそういう井上さんはあまり想像出来ないですね(笑)。
井上そうでしょ(笑)。だから、嵐が過ぎ去るまでひっそりしておこうと思った記憶はありますね。

なんでテレビに出なかったというと…

――でも、普通だったらその勢いに乗るという選択肢も当然沸き起こりますよね?
井上人間って生きていれば、色々な方とのお付き合いがあって、その繋がりで何らかのオファーがあったらお付き合いで出演するのが普通なんですよね。だけど僕は、へそ曲がりだったせいなのか、自信過剰だったせいなのか、単にうろたえてただけなのか(笑)。社会人としてそこをちゃんとやらなかったんですよね。

――そこが井上さんの凄さだと思います。普通は流されると思うんです。でも、流されなかったことで、テレビやラジオにあまり出演されなかったことで、逆にプレミア感が増したワケですから。
井上当時はテレビってやっぱり凄い力を持ってましたからね。テレビ局に勤めてる方も「出してやるよ」的なノリだったんですよ。それがイヤでね〜(しみじみ)。

――上から目線が気に入らなかった(笑)。
井上ただ、もしかしたら、それは僕の勘違いでね。「(テレビに)出してやるよ」的な風に勝手に見ていたのかなって。まぁ大人を信用してなかったんでしょうね(笑)。

――アハハハハ! でも、ご自身を安売りしないという思いが自然に芽生えていたんでしょうね。
井上やっぱりアーティストも消耗品とまではいかないにしても、枯れていく可能性は否定できないワケで…。そこまでのケアはテレビやマスコミの方もしてくれませんから。そういうストッパー的な感情は割と若いころからあったんでしょうね。

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