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森山未來×高良健吾『動物的なエネルギーだけでいける!? ろくでナシ対談!』

友ナシ、金ナシ、女ナシ!バブル到来前夜の1980年代中盤、浮かれる世間の狂騒を尻目に屈折した毎日を送る主人公のやるせない姿を描く青春映画『苦役列車』。芥川賞を受賞した西村賢太の私小説を森山未來、高良健吾、AKB48の前田敦子を迎えて映画化した本作は、刹那的な生活を送りながらも他人とのつながりを求めてもがく愛すべきろくでナシが主人公。19歳の肉体労働者・北町貫多役の森山、彼の同僚・日下部正二役の高良が、エネルギッシュな作品世界を語り合うとともに、青春群像を描く名手・山下敦弘監督との仕事を振り返ってくれた。

そこに美学はなく とりあえず何か入れる(森山)

――バブル到来前後の時代はリアルタイムでの経験はないと思いますが、今回『苦役列車』の世界にどっぷりと浸かってみて、どのようなことを感じましたか?
【森山】 貫多や正二はバブルに浮かれていた人間たちのしわ寄せを一手に引き受けた人たちだと思いました。それと現代よりも25年前のほうが日雇いで生きている人たちに対して世間は柔らかくて、ちゃんと受け入れていたように感じました。ただ、貫多はそういう生きづらくて窮屈な場所で生活をしていても、正二や康子ちゃん(前田さん)をしっかり見つめていて。彼の人と関わりたいという強烈なエネルギーをこの映画から僕はすごく感じました。それにバブルをはた目に見ているからこそのエネルギーもあったと思いましたね。
【高良】 この映画にエネルギーがあるといったら、貫多のエネルギーのことだと思います(笑)。それはもう、前向きや後ろ向きとか、そういうことじゃなくて、この人は360度、全部の方向に向いちゃっているような人。僕はそこから全然目が離せなかったという感じでした。

――苦役というタイトルからネガティブな印象を受けますが、エネルギッシュな若者の物語ですね。だから映画でよく登場する“生への象徴”たるメシを喰うシーンも多いですよね。
【森山】 僕のイメージは“入れる”でした。味わうのではなく、腹に溜めるために喰うみたいな。原作にも、飯を喰う金がないので日雇いに行けば飯が付いてくるから、行けばありつけるみたいな描写があって。そこに食べることに対する美学はなく、とりあえず腹が減ったから何か入れると。単純な欲のひとつとして捉えていました。
【高良】 貫多が仕事場で初めて温かいご飯を食べることになって、たくさんおかわりをするシーンがありますが、それは昇格しないと温かいご飯が食べられないからという細かい設定がありました。
【森山】 ちょっとした時間経過からシーンが始まっているので、そのタイミングでは貫多の飯は全部なくなっていて、おかわり自由だからもらいに行っている場面ですね。正二はまだゆっくり味わって食べているから、そこそこ残っている。ただ、このふたりのなかで分かっている事実としては、漬け物を正二は食べない、いつも残す人ということです(笑)。なので貫多はその漬け物とみそ汁を自分のご飯にかけて喰う、そういうシーンなんですよね。
【高良】 それと貫多は食べている口のなかが見えるとか(笑)。いろいろあるんです。

芝居に無駄な“欲”もたのしめた(高良)

――おふたりとも山下監督作品への出演をもともと熱望されていたそうですね?
【高良】 僕が初めて観たのは高校生のときで、北野映画をオマージュ(?)した『その男狂棒に突き』(2003年)という汁男優の話(苦笑)。おもしろくてハマりました。その後に『ばかのハコ船』(2002年)などいろいろ観ましたが、最初に観た映画が『その男狂棒に突き』だったのが印象が強いです(笑)。
【森山】 僕は、山下監督とはケータイドラマで以前にご一緒していて、その撮影中に映画『松ヶ根乱射事件』(2007年)を観て衝撃を受けました。ドラマは1話5分、5話完結のものだったんですが、そのときに「次は本編を一緒にやりたいね」と話していたので、とても楽しみにしていました。


――青春のモヤモヤを切り取る山下監督の作品は、優しい眼差しだけれど、残酷な視点で見つめていたりもしますよね。今作をともに作り上げていかがでしたか?
【高良】 今回の現場でもそうだったと思います。優しいけれど残酷というのはなんとなく分かる気がします。だからすごく緊張しました。言葉では上手く言えないですけど、現場でそういう感覚になることが何回かあったかもしれません。満足してもらいたいと思ってがんばる瞬間とかあるんですね。それは僕にとって芝居には無駄な「欲」だと思うんです。でも、今回山下監督、森山さんと仕事をしていて、その嫌いな欲が出てきても、今ではもおもしろかったと思えるんです。
【森山】 山下監督は作品の印象と、普段の印象と、現場で監督しているときの印象が全然変わらない(笑)。撮影中は僕に投げかけてくる残酷な視点があっても、その存在に対して肯定してくれていたし、「わからない」と言いながら明確な意思を持っていたりして、何を考えているか分からない感じもよかったです(笑)。しっかりとしたリアリティがあった上で、それを飛び越えてファンタジーになってしまう瞬間もありながら、それを淡々と映画の内容で語ってしまうんです。そこはすごく信頼できる感じでしたよね。

――最後に2012年の今を生きる同世代のろくでナシたちへメッセージをお願いします!
【高良】 貫多の動物的なエネルギーがすごい。それだけで(この映画は)いける(笑)。「貫多、何やっちゃってるの!?」って思っても、それでも全然嫌いになれなくて、ずっと貫多のことを見てしまう。貫多がひどいことを言っても、正二やほかの人がかわいそうだという気にもならない。それがこの映画のいいところだと思います。
【森山】 単純に人と関わる方法が、この時代は貫多のような方法しかなかったということに尽きると思いますね。そういう意味では人と関わるということのエネルギーは、この時代だからこそ世間一般で考えたときに、なかなかイメージしにくいものになっているかもしれないとも思いました。でもそれを25年前の物語としてあえてうたわずに、2012年の『苦役列車』として出していっていることが、僕にはとてもいいことだなと思いました。
(文:鴇田 崇/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

映画情報

苦役列車

 1986年。19歳の北町貫多(森山未來)は、明日のない暮らしを送っていた。日雇い労働生活、なけなしの金はすぐに酒に消えてしまい、家賃の滞納はかさむばかり。いよいよ大家の眉毛もつり上がり、払うか、部屋を出るかの瀬戸際まで追いこまれていた。そんな貫多が職場で新入りの専門学生、日下部正二(高良健吾)と知り合う。中学卒業後は、ひたすら他人を避け、ひとりぼっちで過ごし、ただただ読書に没頭してきた貫多にとって日下部は、初めて「友達」と呼べるかもしれない存在になる。

 貫多には、かつてから恋い焦がれる女の子がいた。行きつけの古本屋で店番をしている桜井康子(前田敦子)。読書好きの康子は、貫多にとってまさに理想の存在。彼女への思いを日下部に話すと、適度に世慣れた日下部はうまく仲介して、晴れて貫多は康子と「友達」になる。でも「友達」って、何だろう――貫多は、自分の人生に突然降ってきた新しい出逢いに戸惑いながらも、19歳の男の子らしい日々を送るが……。

監督:山下敦弘
出演:森山未來 高良健吾 前田敦子

2012年7月14日(土)全国ロードショー
(C)2012「苦役列車」製作委員会
【OFFICIAL SITE】

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