ミュージック インタビュー&コメント

ミュージックライブレポート
2008年11月06日
LIVE REPORT
DIR EN GREY
“想像を超える刺激”を与えてくれる最狂のライブ

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新作『UROBOROS』の世界を、120%体感できるステージ
 去る10月18日、東京・新木場STUDIO COASTでの追加公演終了をもって、9月10日から全国展開されてきたDIR EN GREYの『TOUR08 THE ROSE TRIMS AGAIN』(全12都市/トータル公演数はこの追加公演を含めて19本)が幕を閉じた。彼らのライブについては、目撃回数を増やすたびに「過去最高!」という言葉を上書きしたくなるような充実感と興奮を味わわされているのだが、この夜のステージについても、また同じ言葉を重ねなければならない。もちろんツアー全体を振り返ればいくぶんの“波”はあったはずだ。が、やはりこのバンドはいつも“安定した満足感”を保証するのではなく、“想像を超える刺激”を与えてくれる。そこが“最強”ではなく“最狂”である所以なのではないか、と改めて感じさせられる。

 19時の開演時刻を3分ほど過ぎた頃、場内は暗転。怒号のような歓声と混ざりあいながら聴こえてきたのは、すでに耳に馴染みつつあるミステリアスなSE。実はこれが、11月12日にリリースを控えているニューアルバム、『UROBOROS』の冒頭に収録されている「SA BIR」なのである。実際のところ、今回のツアー全体を通じてこのアルバムから先行披露されてきた純然たる新曲は、「凱歌、沈黙が眠る頃」と「蜷局」の2曲にしか過ぎないし、そもそもこのツアー自体が『UROBOROS』の世界観再現を目的とするものではない。が、実はその余震めいたものがとうに始まっていたのだ。言い換えれば、旧来の楽曲たちが主体ではあっても、すでにメンバーたちの精神的モードは『UROBOROS』を基準としたものになっているということ。そこで受け手側は、知らず知らずのうちに“最狂のアルバム”の匂いや性格、たたずまいといったものを体感することになったわけである。

 重々しくも激しい「OBSCURE」で幕を開けると同時に観衆は混沌に呑み込まれ、続く「GRIEF」で揺さぶられながら、さらに「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」で激震状態へと陥っていく。まるで冒頭の3曲で体力のすべてを使い切ろうとするかのような大胆な展開だ。が、DIR EN GREYのライブで味わうことのできる高揚感の絶頂は、実は高速のヘッドバンキングが似合う激烈チューンによってもたらされるものではない。普通に考えればストーリーの“谷”にあたる部分だと解釈されがちな部分が、彼らの場合、実は“山”だったりすることが多々あるのだ。この夜で言うならば、中盤、京の独壇場ともいうべき「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS -UNPLUGGED-」をインタールード的に据えながら始まった「CONCEIVED SORROW」から「凌辱の雨」、そして「DOZING GREEN」へと連なっていく風景こそが“山脈”だった。あくまでこれは僕個人の解釈ではあるが、同じように感じたオーディエンスは少なくないだろう。

 ライブはその後も単純なエキサイトメントを追求するのではなく、観る者の感覚を低いところからゆっくりと侵食していくかのような重みを伴いながら展開され、「CLEVER SLEAZOID」での絶頂感のあとで「REPETITION OF HATRED」の重心の低い一撃を食らわせながら、ひとまず終了。その後のアンコールでは、今回のツアーの特色のひとつでもあったアンプラグドを主体とする演奏がまず3曲披露され、2度目のアンコールではとっておきの爆弾が連続で投下された。「東京!おまえら、そんなもんちゃうやろ?」という京の激しい扇動に、超満員のオーディエンスが発する熱もさらに高められ、まさに双方がガソリンを最後の一滴まで使い切るかのようにしながら、この夜のライブは終了の瞬間を迎えた。
 が、そこですべてが終わったわけではない。21時9分、メンバーたちがステージから去ると、その瞬間、場内は完全な闇へと一転。そして、どよめきのなか、ピアノを主体とした耳慣れない楽曲が聴こえてきた。その曲の正体については、敢えてこの場では明かさずにおく。が、その音が止んだとき、まるで自然現象のように巻き起こった拍手の渦は、すべてのオーディエンスが、“すでに自分たちが『UROBOROS』を体感しつつあったこと”を直感できていた事実を裏付けていたように思う。

 こうして『TOUR08 THE ROSE TRIMS AGAIN』は、実に美しい風景と余韻を伴いながら幕を閉じた。が、これは言うまでもなく何かの“終わり”ではなく、“序章”だったのである。このツアーは11月には舞台をアメリカに移して続行され(全22公演)、その全米ツアー開始後、『UROBOROS』は世界16ヵ国でほぼ同時期にリリースされることになる。その全貌が明かされる運命的瞬間が、もう間もなく訪れようとしている。
(文:増田勇一)
【インフォメーション】
11月12日、アルバム『UROBOROS』リリース。

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