| 下北に捧ぐ 若者文化の重要都市・下北沢再開発を目前に控え オマージュ作品が多数登場 若者文化の重要都市、東京・下北沢が小田急線の地下化に伴い、転機を迎えようとしている。その注目度は東京のひとつの街の問題に終わらず、多くのクリエイターを動かし、下北沢を題材にした音楽、映画、小説、ドラマなどのアイテムを生み出した。街と文化の幸福な関係の終わりを惜しむ声は多い。 街と文化との関係を下北沢を通して考える 演劇・音楽カルチャーの発信地として独特の存在感を発揮する街、東京・下北沢。70年代に端を発する演劇文化から始まり、その文化的な空気は音楽へも派生し、小さな街のなかに多数の劇場とライヴハウスを抱えるシーンの中心地となっている。本多劇場、スズナリ、CLUB Que、下北沢シェルター。演劇青年、音楽青年が目指す舞台がこの街に集中している。 終電間際のホームにこれほど、楽器を抱えた若者たちが佇んでいる風景は日本でも珍しい。この小さな街をホームにしたバンドが毎年のようにロック/ポップス・シーンの桧舞台に駆け上がり、ブレイクしていく。このような背景を見ても、下北沢は日本の音楽シーンに最も大きな影響を与えている街であることが分かるだろう。 古くから活発であった商店街と街の構造も、この街の独特な個性を作る要因となった。入り組んだ路地には食料品や生活雑貨を扱う個人商店が立ち並ぶ。その中に古着やセレクト雑貨を扱うこだわりのショップやカフェが混在し、生活感とカルチャーが違和感なく同居する街となっている。住みやすく、かつ、文化的なあれこれに携わることができるのが特徴だ。下町の商店街と若者カルチャーの融合の幸福な形である。下北音楽祭のような、商店街とライヴハウスが連動したお祭りも盛ん。この雰囲気に憧れ、下北沢に居を移す若者も多い。 最近、この下北沢が全国的に注目されている。もちろん以前から若者カルチャーの発信地として知られてはいたのだが、この下北沢を題材にしたメディア作品が増えているのである。そして、この下北沢という名前をプロモーションとして利用する戦略も見受けられるようになってきた。 下北沢に大規模道路が通ることになり、再開発が行われそうな状況であることはご存じの方も多いと思う。現在のところ大規模道路が通る可能性が高まっているのだが、当然、道路が通れば街の様相は一変してしまう。今の街並みは完全になくなってしまうだろう。それらも相まってメディア上でなにかと注目を集めている。 ここ最近の下北沢を題材にしたメディア作品をいくつ挙げてみる。小劇団を舞台にした、上戸彩主演のドラマ『下北サンデーズ』(ANB系)が06年7月から9月にわたってオンエアされた。原作は直木賞作家、石田衣良の青春小説。藤井フミヤが歌った主題歌「下北以上 原宿未満」もタイトルに下北沢の名を冠したものであった。下北沢の再開発問題に一石を投じるべく下北沢ゆかりのレーベルやアーティストが集結したThe Sound of Shimokitazawa。下北沢をテーマに各アーティストが、下北沢限定発売ということで、北沢のレコードショップで販売のリリース作品を発表している。曽我部恵一や銀杏BOYZの峯田和伸とチン中村を中心としたアコースティック・ユニット「敏感少年隊」のCDは全国流通となったこともあり、耳にしたリスナーも多いと思う。 |
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フーテンの寅さんをモチーフに下北沢を舞台とした、映画『男はソレを我慢できない』(出演:竹中直人、鈴木京香)も上映された。アートディレクターの信藤三雄が監督となりメガホンをとった作品である。信藤三雄も下北沢在住であり、出演者も下北沢ゆかりの役者・ミュージシャンが数多く集った。小沢健二とスチャダラパーの名曲「今夜はブギーバック」を、竹中直人とワタナベイビーがカバーしたことでも話題を呼んだ。他にも下北沢を舞台にした小説は多く発表されており、現在、下北沢は各種メディアのモチーフとなっている。また、プロモーションでも下北沢出身という縁で、新人女性シンガー・ソングライターの甲斐名都が「下北沢南口」という楽曲を11月8日にリリースし、街頭フラッグ設置など、下北沢をトピックスに宣伝展開をしたのも記憶に新しい。 このように全国的に下北沢の名前を目耳にする機会が増えているわけだが、下北沢カルチャーが現在の姿を保てるかどうかは、実際、微妙なところだ。大規模道路が通るとなると街は分断され、多くの商店地域が姿を消すこととなる。また、注目を集めたが故のテナント料の高騰や、高齢の家主の引退閉店などで、昔ながらの匂いを残す店もだんだんとなくなってきている。代わりに大手資本のチェーン店舗や携帯ショップが、ここ数年で相当数の増加を見せている。もちろん、カフェや雑貨屋、古本屋など、この街に自分の店を持つことを目標にしていた若き店主がオープンさせたショップも次々に姿を現しているのだが。 この街がどこに向かうのかはわからない。住民間でも利害の相違で再開発問題では賛否わかれているところだ。ただ、この下北沢独特の歴史と生活に根づいたカルチャーを見ておきたいのなら、今のうちだということは確かである。街と文化の幸福な関係が、今、目の前で変わっていこうとしている。下北沢が都市開発のひとつの重要なケースとなることは間違いないであろう。街と文化との関係を下北沢を通して考えてみてほしいと思う。 (取材・文/山本貴政) ■続きが気になってしょうがない←山田悠介の新作小説『ドアD』 |
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