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NFTがぐっと身近なものに 総合マーケットプレイス「LINE NFT」の勝算

 今やネットニュースで“NFT”のワードを見かけない日がないくらい、存在感が増してきている「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」。しかしながら実際のところ、「言葉は耳にするものの、よくわからない」、あるいは、「知ってはいるが売買は面倒そう」と感じている人が大多数ではないだろうか。そのハードルを下げてくれる新サービスがこのほどスタートした。LINEの暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLINE Xenesis社が4月13日にローンチした、NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」だ。

NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」

NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」

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■ユーザーなら簡単・手軽にNFTの購入&取引が可能な「LINE NFT」

 改めてNFTを簡単に説明しておくと、動画や画像、音などのデジタル上の“モノ”に対して、ブロックチェーンで複製やデータ改ざんが為されていないモノであるという唯一性と所有者のデジタル証明を持たせたものを指す。すでに、アートやトレーディングカード、ゲームアイテム、さらには音楽といったさまざまなNFTが世界中で発行され、売買されているというのが現状だ。

 現在、NFTの売買が行えるいくつものNFTマーケットプレイスが存在する中、今回スタートしたLINE NFTの特徴は大きく分けて2つある。LINEアカウントがあればすぐにNFTの売買を始められ、ワンストップでNFTの購入や交換、出品などが可能だ。そして、日本円での決済を可能としたことだ。詳しく説明しよう。

 NFTを売買する際、従来は自身でウェブウォレットを用意し、NFTマーケットプレイスに登録するなど複雑な手続きと手数料が必要で、しかもNFTの売買は暗号資産で行われるなど難易度の高いものだった。だがLINE NFTは、LINEアカウントがあればすぐに利用でき、LINEアカウントから登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」(資産的価値のあるデジタルデータを一元的に管理)との連携で、わざわざウォレットを用意せずともNFTの購入や保管が簡単に行える。さらにLINE Payを利用すれば、日本円で売買できるという仕組みになっている。つまりLINEユーザーなら、今すぐにでもNFTを購入できるというわけだ(なお、LINEが発行する暗号資産「LINK」にも対応しており、決済は日本円とLINKの選択ができる)。

LINE NFTプロジェクトマネージャー・栗原俊幸氏

LINE NFTプロジェクトマネージャー・栗原俊幸氏

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「我々は、NFTと暗号資産は完全に別物だと考えており、そこを分けたうえで日本円での決済を実現することで、ユーザーの皆さまがよりNFTを利用しやすい環境を目指しました。同時に、NFTを販売する企業様にとっても、暗号資産での売上は財務上の扱いが難しいという問題もあり、円決済によって参入していただきやすい状況を整えました」(LINE NFTプロジェクトマネージャー・栗原俊幸氏/以下同)

■ストーリー性のあるNFT が人気 新しいアーティストへの応援の形

 では、ユーザーはここで何を買うことができるのだろうか。サービス開始時点では、吉本興業の人気芸人による完全撮り下ろし限定NFT動画『よしもとNFTシアター』や、アニメ作品『機動警察パトレイバー』30周年突破記念展で特別制作されたジオラマアート、体操・内村航平選手の最終演技動画NFTといったものから、100円の人気キャラクターNFT動画まで実に多種多様なアイテムが用意された。今後も、エンターテインメントやスポーツ、ゲーム、アーティスト、アニメ、キャラクター、イベントの7ジャンルで100種類以上の NFTを順次販売予定だという。

 サービス開始から間もないことを前置きしたうえで、栗原氏は、「ファンにとってストーリー性のあるNFTの人気が高いようだ」と分析する。

「例えば、先日5大ドームツアーを発表したアーティストのNissy西島隆弘)さんは、新曲のミュージックビデオに登場するチケットやポスターなどをNFT化したところ、即完しました。ファンからすると『Nissyの今後の活動とどんな関係があるんだろう』とワクワクする気持ちをさらに刺激するストーリー性がありますし、アーティストの世界観を楽しむアイテムとして作られた、熱意のこもったNFTであることも伝わってくる。だから、NFTを買って応援しようという気持ちになれるのだと思います。TM NETWORKさんが7月から始まるライブのオープニング曲をNFTで販売した際も、大きな反響がありました。やはり『とりあえずNFT作ってみました』ではなく、アーティスト本人がファンとしっかりコミュニケーションを取り、ファンの心情に訴えられるNFTを販売することが大事なのだと感じています」

 アーティストが音楽や動画作品を作り、データを販売(一次流通)、ファンが視聴するという点では、従来のデータ販売サービスと本質的な部分は変わらない。しかしアーティストがLINE NFTで作品を販売する大きなメリットとして、購入者が作品を手放し、他のユーザーへ売却した際にも(二次流通)、アーティストに永続的にコンテンツ料(ロイヤリティ)が支払われる点が挙げられる。

「実はNissyさんのNFTも、一気に完売した後、二次流通にも出品されていました。ただSNS上でのファン同士のやり取りを見ていると、二次流通もアーティストの応援になるということを理解したうえでのやり取りのようでした。つまり、従来の転売ヤーのような『転売=悪』という図式ではなく、これも新しいアーティストへの応援の形であり、しかもそういったことをファン同士で啓蒙活動しているという点が、従来のリアルな物のやり取りとNFTとの大きな違いのように感じています」

■プロモーションにも有効なNFTはコレクション型から利用型へシフト

ずっと真夜中でいいのに。が、今年4月に行ったさいたまスーパーアリーナ公演で無料配布した開催記念の限定デジタルアート(1日目)

ずっと真夜中でいいのに。が、今年4月に行ったさいたまスーパーアリーナ公演で無料配布した開催記念の限定デジタルアート(1日目)

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 また新たな動きとして注目したいのが、販促物としての無料配布NFTだ。LINE社では2021年にアサヒ飲料と行ったコラボレーションで、アンケート回答者に、キャラクター「うさぎゅーん!」とのコラボNFTデジタルトレーディングカードをプレゼントしている。音楽シーンでもそういった活用の仕方が広がりつつある。ずっと真夜中でいいのに。は、今年4月のさいたまスーパーアリーナ公演で来場者約3万5000人に、開催記念の限定デジタルアート作品を無料配布。2日間で異なるNFTコンテンツが用意された。観客にとってはライブの記念品としてコレクションするだけでなく、LINEアプリを使って友達や知人へプレゼントでき、初日と2日目のNFTコンテンツの交換ができるとあって話題を集めた(なお、NFTコンテンツをLINEアプリ上の“友だち”に送ると、自身のウォレットからは移動される)。従来は物として配布されていた来場記念グッズと同等の価値を持たせながら、NFTおよびLINEアプリの利点を活かすことで、ファン同士でのやり取りは圧倒的に手軽となり、ファン起点の“拡散活動”にも利用してもらえる。単なるファン・サービスとしてだけでなく、アーティストなどのプロモーションにも効果的に活用できそうだ。

ずっと真夜中でいいのに。が無料配布したライブ開催記念の限定デジタルアート。2日間で異なるNFTコンテンツが用意された(2日目)

ずっと真夜中でいいのに。が無料配布したライブ開催記念の限定デジタルアート。2日間で異なるNFTコンテンツが用意された(2日目)

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 ユーザー間で気軽にNFTをやり取りできるという点は、すでにSNSとして定着しているLINEアプリを利用したマーケットプレイスならではの強みであり、今後予定されているプロフィールやスタンプへのNFTの活用というアイデアも、LINE NFTならではの展開だと言える。このように、自分が買って眺める「コレクション型NFT」から、買ったものを活用していく「利用型NFT」へのシフトは、NFTコンテンツを制作するアーティスト対ファンという縦方向の関係性だけでなく、所有コンテンツを見せ合ったり、交換したりするといったファン同士の横方向の関係性も深めていくことにつながっていくはずだ。さらにNFTを利用する場面として、今後、間違いなく発展していくであろうメタバース上で、例えばグッズNFTのデジタル・アイテム(Tシャツやアクセサリーなど)で自身のアバターを着飾らせるといった将来的な展開にもつながっていくだろう。

 そういった未来像へ進んでいくために、まずは土壌作りから始めようというのが、現段階でのLINE NFTのアプローチであり、とにかく多くの人にNFTを体験してもらいたいというのが、同社が掲げる目下の目標のようだ。その実現を加速させるために、ソフトバンクやZホールディングスなどのグループ企業との協業として、「PayPay」の導入や「ヤフオク!」との連携も実現に向けて話を進めているという。

■コンテンツ流通の選択肢が増 アイデア次第で活用方法は無限

SNSで人気のキャラクター「うさぎゅーん!」。1000円以下の価格設定で販売されたNFTもあり、全て完売となった(C)Minto Inc.

SNSで人気のキャラクター「うさぎゅーん!」。1000円以下の価格設定で販売されたNFTもあり、全て完売となった(C)Minto Inc.

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「LINE NFTはLINEアカウントとひもづいていますから、例えばファンクラブ会員証的にNFTを発行し、その所有者に優先的にライブチケットを販売したり、ライブ会場で限定イベントに参加できたりするなど、今後はますます、いろんな活用事例が出てくると思います。“NFT”と聞くと、何か難しいものと感じている方は多いと思いますが、まずは販促NFTなど手軽なNFTの利用によって、『友達にプレゼントできるんだ』『出品するとウォレットからなくなるんだ』ということを体験していただきたいですし、今後も、できるだけわかりやすいNFTマーケットプレイスにしていきたいと考えています」

 NFTというと、高額なアート作品のやり取りばかりが話題に上るが、実際にはLINEスタンプ並みに手軽に購入できるものが多数存在している。その一方で、お笑いやスポーツ動画のように、パッケージ商品化するには予算的に厳しくても、「欲しい」というファンが少数でも存在すれば、ニッチな層に対して商品化しやすい点も大きな魅力だ。音楽業界にとっても、コンテンツ流通の選択肢が増え、ファンとの新しいコミュニケーションの形を作ることができ、二次販売でも適正なロイヤリティが還元されるというビジネス的な仕組みも含めて、NFTに対する期待感は大きいだろう。

 こうしたさまざまな可能性を秘めたNFTの新しいマーケットとして誕生したLINE NFT。現在月間利用者数9,200万人(※22年3月時点)のユーザーを持つLINEが挑む“土壌作り”は、今後の国内NFTの発展に大きな影響を与えることは間違いないだろう。

文・布施雄一郎

NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」購入方法

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