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振付稼業air:man「動くものならなんでも振り付けます」

 振付稼業air:manは、「動くものなら何でも振り付けます」という新進気鋭の振付集団。商品売上を一時200%以上も伸ばしたという新垣結衣のアサヒ「十六茶」、強烈なインパクトを放つキンチョー「虫コナーズ」、2008年には振付を担当したユニクロのウェブ広告「UNIQLOCK」が、世界三大広告賞を受賞する快挙も果たした。ミュージックビデオも多数手がける彼らを代表して、杉谷一隆氏、菊口真由美氏の2人に話を聞いたところ、単独では成立しにくい振付師をユニット化したことが大きな転機だったと振り返る。

仕事や取材はすべてチームで受ける振付稼業 air:man(左から)野本清氏、菊口真由美氏、杉谷一隆氏、辰野翔亮氏

仕事や取材はすべてチームで受ける振付稼業 air:man(左から)野本清氏、菊口真由美氏、杉谷一隆氏、辰野翔亮氏

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 air:manはもともとは杉谷氏主宰の演劇集団。杉谷氏は、その劇団で脚本と演出を担当していたが、主に経済的な理由で、劇場ではなくライブハウスやクラブで作品を発表するようになる。演目もストレートプレイをベースにした内容から、ライブハウスという環境に合わせて音楽を多用し、ダンスを主軸にしながら、間に台詞を挟むような形式へと次第に変化させていった。

「そういった諸々が功を奏したのか、クラブという場所柄、ヒップホップ世代の多種多様な人たちといい出会いが果たせるようになったんです。その中に現メンバーの菊口がいました。90年代の半ばくらいです」と杉谷氏は振り返る。

 ダンサーとして踊るのではなく、あくまで“振付師”でいたかっというその頃の菊口氏は、周囲にそれを理解してくれる人はなかなかいなかったという。表舞台に立ちながらも、裏で振付をすることもあった。

 当時は「タレント兼振付師」という土壌が、世間一般に認められているレベルだった。しかも、仮に著名な振付師がいて弟子入りしたとしても、ヘアメイクやスタイリストのような、のれん分けのシステムがないため最悪の場合は一生アシスタントかもしれないという思いが振付師を志す人にはあった。

「それを変えられないかと始めたのが振付稼業air:manです。下手をするとただの徒党で、徒労に終わるかもしれない。振付だけ、それも複数でユニットを組んで、それが武器になるのかと。しかし、当時ユニット活動を展開するディレクターやデザイナーが増えていた状況にも、背中を後押しされました」(杉谷氏)

 このなじみのないシステムに、「メインの振付師さんは?」、「全員です」と言い続けて9年。現在は7人所帯で活動している彼らは、「ユニットの強みは現場です」と言い切る。

「人数を乗算しただけのアイデアが出ますし、信頼する人の数が多いと物理的に仕事がスムーズに運びます。諸々の事情で監督のプランを変更しなければならなくなることもありますが、振付稼業air:manのフォーメーションなら、変更が出た瞬間に対応できます。一人が監督の横に、もう一人がタレントの横に控えていて、さらにもう一人がその2人を同時に見える位置にいるようにする。そうすれば、すみやかに監督とタレントをつなぐための対応ができる。つまりトライアングルで動けるんです」(菊口氏)

 待ち時間が減るので、タレントの付加も軽減できる。何よりコミュニケーションが早く取れるだけで、現場の雰囲気は良くなるという。「air:manは速いね」と言われるのは、彼らのフォーメーションの価値を認めた最大の褒め言葉だ。

 ミュージックビデオ(MV)やライブでの振り付けも多い彼ら。奥田民生の「Tripper」やサカナクションの「ネイティブダンサー」(09年)なども手がけているが、「本来、踊らなくていい人たちが躍るときって、何とも言えない格好良さがあって、見ていて嬉しくなります」と菊口氏。

 杉谷氏も、「深い思い入れが歌詞には込められているはずなので、歌詞の世界を大切にすることも心がけています。あえて歌詞に当て振りするパートと、音楽を大事にするパートを使い分けて、線引きするように心がけています」と話す。

 「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」のMVの時は、サカナクションの山口一郎から「裏の拍の取り方が気持ちいい踊り」という言葉をもらったことが嬉しかったと振り返る杉谷氏。お互いの音楽の流儀とダンスの流儀でものを考えていたが、目指すところは同じだったため、心地よい一体感があったというのだ。

 「動くものなら何でも振り付けます」というキャッチフレーズに嘘はない。これが彼らair:manの本質だ。そんな彼らは、「職人のように明日も明後日も振り付けをし続けていたい」。これが最大の目標なんですと笑顔で話した。(オリジナル コンフィデンスより)

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