2009年10月26日 10時45分
『第22回東京国際映画祭』で最高賞を受賞した映画『イースタン・プレイ』のカメン・カレフ監督 (C)ORICON DD inc.
映画『イースタン・プレイ』
東京国際映画祭総括 最高賞受賞のブルガリア映画、新作は「年に7、8本しかない」同国の映画市場の現状明かす
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25日に閉幕した『第22回東京国際映画祭』で最高賞「東京 サクラ グランプリ」を受賞したのは、カメン・カレフ監督のブルガリア映画『イースタン・プレイ』。同作は、最優秀監督賞と最優秀男優賞(フリスト・フリストフさん)の3冠を獲得する快挙を成し遂げた。
“圧勝”したカレフ監督だが、記者会見などで度々口にしていたのは、「ブルガリアでは映画は年間に7、8本しか製作されない」ということ。今作も「撮影が終了して、小さなノートパソコンで編集を始めましたが、途中で資金が尽きてしまった。その後スウェーデンで共同プロデューサーを見つけて映画は完成しましたが、その時が一番孤独でした」と製作の苦労も語っていたカレフ監督だけに、「この受賞はブルガリアにとって誇りです」と喜びもひとしおだ。
◆映画の完成を見ずにこの世をさった主演のフリストフさんに捧ぐ
受賞作は、アルコールに依存していた画家と彼の弟の関係を軸に、個人の魂の置き場所を見つめていくという人間の本質に迫ったドラマ。主人公の画家は、監督の幼いころからの友人であり、実際にその役を演じたフリスト・フリストフさんがモデル。「彼の人生に対する姿勢を描きましたが、家族や差別、そして薬物依存……それらはきっと、すべての人々が抱えている共通のものなんだと思います」とカレフ監督。
そのフリストフさんだが、同作のクランクアップ直前に薬物の過剰摂取で亡くなっていた。彼が立ち直ることを願って今回の映画に誘ったというカレフ監督は、受賞の瞬間は「とてもショックで、それでいて感動的だった。なぜなら、賞というものは前向きに、今後の励みとして与えられるものだと思っていたから」と複雑な心情を吐露。それでも「亡くなった人の思い出を皆と分かち合うことも重要。彼の人生を振り返るための賞なのかな」と言葉を噛み締めるように語っていた。
『イースタン・プレイ』の3冠について、同映画祭コンペティション部門の国際審査委員長を務めた映画監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ氏は「5つあった賞のうち、4賞が本当に満場一致で決まりました。監督が見せたいと込めたテーマがきちんと機能して、その表現が美しさへとつながっているんです。映画のリアリティというのは、単に現実をそのまま映すだけではなくて、真実性を見せていなければダメだと考えています。(この作品は)若者を取り巻く複雑な現実を描きながら、最後には人生の輝き、まだ希望が残っているということを指し示しています。主演のフリストフさんもきっと、天国のどこかでよかったと考えていると思います」と、選出の理由を説明していた。
◆イニャリトゥ審査委員長「気の毒なのは観客」と映画業界バッサリ
イニャリトゥ審査委員長は授賞式後、今回の映画祭の総評としてなんと45分間も熱弁をふるった。それは、現在の映画を取り巻く業界の状況と映画祭の意義、そして今後の東京国際映画祭に対する提言など、日本の映画関係者にとってとても有意義なメッセージにあふれていた。
イニャリトゥ審査委員長は監督デビュー作『アモーレス・ペロス』が9年前、第13回東京国際映画祭でグランプリと監督賞を受賞。その後、『21グラム』『バベル』といった人間の本質に迫る作品を生み出してきた。
まず、映画『イースタン・プレイ』から「僕には立つ力はある。でも立ち上がった後、立ち続けるための支えがないんだ」という主人公のセリフを引用し、「昨今の映画を取り巻く状況は、ますます苦しくなっていると言わざるを得ません。それは経済的な問題はもちろんですが、映画作りが極端なもの──高額を投じた巨大プロジェクトか、絶望的に予算のない小規模作品のどちらかしかないという状況になっているんです」と語り始めた。
経済的な危機もさることながら、「メガプロダクションのバカげた映画と、インテリに見せようとしていたら出口がふさがってしまったインディペンデント映画ばかり。気の毒なのは観客です」とバッサリ。「映画はテレビの延長ではないんです。レーティングや興行収入を気にする作品が多すぎます。映画とはやはり、人間の感情を伝えるものであるべき」と力強く訴えた。
このような映画を取り巻く状況下で、「唯一のレジスタンスが映画祭であり、唯一価値のある期間と言えるのではないでしょうか?」と国際映画祭の役割、開催の意義についても言及し、「(映画祭を開催している)10日間だけの問題ではありません。1ヵ月や2ヵ月間、賞を獲った作品を上映することで、口コミで認知が広がるはず。東京国際映画祭にはそういう試みをリードする存在になっていって欲しい」と期待を寄せていた。
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