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アンジェリーナ・ジョリー、戦争の性暴力根絶へのスピーチ全文「現在なお苦しんでいる問題」

 ハリウッド女優であり、さまざまな慈善活動でも知られるアンジェリーナ・ジョリーが29日、東京の国連大学を訪れ、UNHCR(国連難民高等弁務官)特使として戦争における女性への性暴力の根絶についてのスピーチを行った。アンジーは、同問題について被害者に取材した事実を、自ら脚本、監督を務めた映画『最愛の大地』(8月10日公開)で描き、そのメッセージを広く世界中へ発信している。

UNHCR(国連難民高等弁務官)特使として国連大学でスピーチを行ったアンジェリーナ・ジョリー

UNHCR(国連難民高等弁務官)特使として国連大学でスピーチを行ったアンジェリーナ・ジョリー

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 アンジーのスピーチは以下の通り。

 私たちの世界は、貧困から不公正、戦争まで、さまざまな大きな問題によって傷つけられています。でも、若い皆さん方の可能性は無限です。これまでの世代を打ち負かしてきた問題を、皆さんは克服するチャンスがあります。それは私たちを本当に勇気づけてくれます。

 ボスニアでの戦争が始まったのは、私が17歳のときです。包囲攻撃や虐殺で、何十万もの人たちが亡くなりました。それもヨーロッパの中心部で。性暴力が、民族浄化の手段として大規模に用いられました。そして、NATOの介入により殺戮が終結するまでに、3年半という長い苦難の時間が必要でした。

 私がこの映画(『最愛の大地』)を作ったのは、ボスニアでの戦争について、私が当時理解していなかったことがたくさんあったからです。それは、私たちの多くが現在なお苦しんでいる問題でもあります。

 友人や隣人として平和に暮らしてきた人たちが、いったいどうして互いを攻撃するようになるのか――。戦争がいかに人間を変え、言葉にできないほどの残虐な行為をさせるようになるのか――。そして、すべてを失うとはどういうことなのか。ありとあらゆるトラウマや暴力を経験し、そのうえ国際社会に見捨てられる――助けが必要なときに、世界から背中を向けられたと感じる。それはいったいどういうことなのか――。

 私はこうした問題を、映画という方法を通じて見きわめようと思いました。でも、それはアートであり、ドキュメンタリーではありません。ここでの目的は、非難や中傷ではなく、理解しようとすることです。人間のありように対する考察です。アートですから、人によって見方はさまざまでしょう。どんな判断を下すかは、ご覧になる方、一人ひとりの自由です。でも、判断の中身がどうあれ、皆さんがこうした問題についてもっともっと考えるようになってほしい――それが私の願いです。

 とてもありがたいことに、ウィリアム・ヘイグ英外相は『最愛の大地』を観て連絡をくださり、そのテーマに関してできることがあれば手伝いたいとおっしゃってくださいました。14ヶ月前にロンドンで、私たちは、戦争における性暴力根絶のために地球規模の行動を起こすことをめざし、新たな取り組みをスタートさせました。

 以来、私たちはコンゴ民主共和国を訪れ、G8会合、国連安全保障理事会で話す機会を得ることができました。被害者の公正を確保し、政府の責任を問うために努力する優れた人々や組織と出会いました。紛争下の性暴力に関する国連特別代表として活躍されるザイナブ・バングーラさんとも協力しています。ここまで目覚ましい進歩がありました。

 今年の4月、G8は戦地での性暴力をなくすために一致協力するという歴史的な約束を交わしました。この画期的な合意において、日本はとても重要な役割を果たしてくださいました。またつい先月には、安全保障理事会が、実際的・集中的なリーダーシップを発揮するという新たな決議を採択しました。

 しかし、これはまだ始まりにすぎません。私たちの目標は、かつてのボスニア、そして現在のコンゴやシリアのように、性暴力を戦闘の手段として使い、処罰をのがれるという状況が世界で起きることを、これ以上絶対に許さないことです。これは壮大なタスクであり、各国政府や国連から地域社会、家庭、さらには皆さん方一人ひとりまで、あらゆるレベルのあらゆる努力を必要とします。

 でも、実現は可能です。これは私たちが生涯かけてめざすことのできる目標です。この映画を撮りはじめたとき、私は物語を語り、被害者に発言の機会を与えることだけを考えました。今日、私は監督としてだけではなく、活動家としてここにいます。日々大きくなるグローバルな活動の一員として。この映画が描く苦しみは計り知れません。そしてそれは、世界的な状況のほんの一部でしかないのです。

 しかし、問題は大きくても、私たちが手にしているチャンス、国際社会としての私たちにそなわった強さは、それよりもはるかに大きなものです。力を合わせれば、こうした悲劇を二度とくり返させないことができます。過去を変えることはできませんが、未来はそう、私たちの自由になるのです。そして、あなたはその未来のカギを握るひとりなのです。

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  • 第8代国連難民高等弁務官・国際協力機構(JICA)前理事長の緒方貞子氏とアンジェリーナ・ジョリー
  • アンジーが長編初監督を務めた『最愛の大地』(8月10日公開)(C)2011 GK Films, LLC. All Rights Reserved.
  • UNHCR(国連難民高等弁務官)特使として国連大学でスピーチを行ったアンジェリーナ・ジョリー
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