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『神様のカルテ』深川栄洋監督、櫻井翔の新たな一面を引き出す

 27日より全国321スクリーンで封切られ、興行収入30億円突破を見込む好スタートを切った映画『神様のカルテ』。主演は櫻井翔だが、まるで別人を観ているようだ。櫻井演じる主人公は、地方病院で日夜働く内科医・栗原一止(いちと)。忙しさのあまり髪型はいつもボサボサで、言葉使いも古風な一風変わったキャラクターだ。彼を演出した深川栄洋監督は「ファンは期待していた“櫻井くん”じゃないと思うかもしれないが、彼にはこんな一面もあるということを認めてもらえたら嬉しい。役者としての彼の演技を受け止めてほしいと思っていました」と話す。

『神様のカルテ』は昨年9月9日にクランクイン。偶然にも深川栄洋監督の誕生日であり、キャスト・スタッフからサプライズでバースデーケーキをプレゼントされたのも忘れがたい思い出に  (C)ORICON DD in 

『神様のカルテ』は昨年9月9日にクランクイン。偶然にも深川栄洋監督の誕生日であり、キャスト・スタッフからサプライズでバースデーケーキをプレゼントされたのも忘れがたい思い出に  (C)ORICON DD in 

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 深川監督の自宅には、つい半年前までテレビがなかったそうだ。櫻井の印象といえば『ハチミツとクローバー』(2006年)と『ヤッターマン』(2009年)の映画作品くらいで、嵐のメンバーとしてテレビの音楽番組やバラエティ番組、CMなどで活躍する姿を「よく知らなかった」という。「『神様のカルテ』の撮影が終わって、初めて嵐のコンサートを観させていただいたのですが、映画の現場とは別人のようにキラキラしていて…。これが嵐か!と、ものすごくびっくりしました」。それは櫻井が“嵐”のオーラを脱ぎ捨て、“一止”という役を生きたということなのだろう。

 物語は、信州・松本のとある病院――医師不足の中、24時間365日対応で多くの患者を抱える――を舞台に、一人の青年医師が、地方医療の現実と向き合いながら、命を救うとは? 人の心を救うとは? と、医者としての在り方、人間としての在り方に思い悩みながら成長していく姿を描く。原作は長野県在住の現役医師でもある夏川草介のデビュー小説。

 映画化を任された深川監督は「僕個人の死生観みたいなものも映画に内包できたらいいなぁと思った」と語る。それは「“生きる”ことも“死ぬ”ことも、どちらもとても静謐な、淡々とそこにある」という感覚。そのせいか、あからさまに作為的な“泣かせどころ”がこの映画にはない。淡々として、静かで落ち着いた展開の中に、リアリティの気配を感じて揺さぶられる。

 一方で、監督を悩ませたのは、一止と妻・榛名(宮崎あおい)の夫婦関係だった。「原作を読んだ時、なぜ、このふたりが一緒にいるんだろうと不思議に思った。一止がハルさんを好きな理由はわかる気がするけど、ハルさんは一止のどこが好きなのか、撮影している間、ずっとわからなかった。わからないまま、撮ることもあるんですよ(笑)」。

 そんな監督のモヤモヤっとした視界を晴らしたのは、一止と榛名を演じた櫻井と宮崎だった。「編集作業に至って、ようやく自分なりに合点がいったというか。一止は患者のことで悩み、自分のキャリアについて悩み、戸惑って苦悩してばかり。悩むってことは、優しいということでもある。傲慢で自分勝手だったら悩まないでしょ。彼の優しい心がハルさんは好きなんだなって。自分を必要としてくれていると実感できるから、ハルさんも救われているんじゃないかな。それは2人の芝居が僕に教えてくれたことでした」。

 今年、同作を含めて監督した映画4作品が劇場公開された。新作『ガール』(2012年公開)も製作中にある。世間一般的には「売れっ子」と呼んでいいはずだが、本人は「この状況はそう長くは続かないと思っている。自分に順番が回ってきているだけ」と冷静だ。映画監督としての地位や名声よりも「深川栄洋に興味がある」という。

 「映画作りは、自分と向き合う時間でもある。自主映画から始めて14年くらい経つけれど、つまり、その間ずっと自分のことを見つめ続けてきた。学校の成績も良くなかった僕が映画を撮っている。作文も得意ではなかったのに、脚本を書いている。そういう変化が楽しいと思える。飽き性というのもあるけど、どんどん変わっていきたい。いまは映画というフィールドにいるけれど、テレビのフィールドでやってみたり、海外のフィールドでやってみたり、変化し続けていきたい。人生はそのほうが面白いと思うから」。何やら目の離せない人だ。

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