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みうらじゅんインタビュー 「最近、俺自身がゆるキャラになってる?」



 テレビ東京系『TVチャンピオン』で2006年4月と2008年9月に放送された“ゆるキャラ日本一”を決める大会がDVD化され、ゆるキャラたちが郷土の誇りを胸に、様々な競技に奮闘する姿がいつでもお茶の間で楽しめるようになった。これを誰よりも喜んだのが、ゆるキャラの名付け親であり、同大会の審査委員長も務めたサブカルチャーの雄・みうらじゅん。ORICON STYLEの独占取材に応じた彼に、ゆるキャラブームの行方を聞いた。


DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』(C)2009 TV TOKYO 

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◆『ゆるキャラ日本一決定戦』に起きた“奇跡”を目撃せよ


DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』より(C)2009 TV TOKYO
 2006年4月20日放送の『TVチャンピオン ゆるキャラ日本一決定戦』と2008年9月11日放送の『TVチャンピオン2 ゆるキャラ王選手権』の2大会を収録したDVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』。10月9日に発売され、初週売上げがオリコンDVDランキング102位という、ゆる〜いスタートを切った。


【みうらじゅん】 2006年の1回目は、テレビ東京(以下、テレ東)がものすごくお金かけて番組を作ってくれたんだけど、あまり視聴率は取れなかったんだよね(笑)。ちょっと早過ぎたというか、その後だもんね、ひこにゃん(滋賀県)とか、せんとくん(奈良県)が現れて、一気に『ゆるキャラ』ブームが過熱したのは。1回目の大会を知らなかった人も多いから、DVD化してほしかったんだよね。パッケージに総制作費4000万円と書いてあったけど、『ゆるキャラ』のためにクレーン車入れて、4000万円もかけるなんて相当ですよ。さすが、テレビ。さすが、テレ東ですね。


――2大会の審査委員長を務めて、思い出に残っていることは?


【みうら】 着ぐるみになったときの不安定感が『ゆるキャラ』の魅力なんだけど、それをうまくテレビで表現できたと思うんだよね。実は、奇跡が2度起きていて、1回目の時は、スギッチ(秋田県)が最終競技のバトルロイヤル(すもう)で“脱ぎ落とし”という奇跡が起きた。これはもう見て頂くしかありません。『ゆるキャラ』の神がついていたね。予測していなかったからね。「見ちゃいけないもの見てしまった!」という感じと驚きで、会場がドッとなったね。



DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』より(C)2009 TV TOKYO
――着ぐるみの中に人が入っていることはみんな分かっているのに・・・


【みうら】 それを忘れさせてしまうのが『ゆるキャラ』のすごさですよ。


――そのような『ゆるキャラ』らしさをヤラセなしで出せたから“奇跡”なのですね。


【みうら】 2回目の時は、最後の最後でわたるくん(兵庫県)とタラ丸(北海道)の勝負になって、わたるくんが誰も想像していなかった背負い投げを決めて勝ったんだよね。これもぜひ、DVDを見て欲しいけど、タラ丸はバタバタ相手を倒して、ちょっとヒールになっていたのね。わたるくんは足も短いし、勝ち目ないとみんな思っていたところで、背負い投げだからね。後で聞いたら、中に入る人を柔道経験者に変えたっていうんですよ(笑)。この必死さと『ゆるキャラ』のギャップが、めちゃくちゃおかしいんだよね。


――1回目と2回目を見比べると、ゆるキャらも洗練されてきたような・・・。


【みうら】 結局、『ゆるキャラ』が盛り上がったのは、ひこにゃんの権利問題とか、せんとくんのかわいくない論争だからね。それで突然、世間が関心を持って、女性が「かわいい」とか言い出した。流行語大賞の候補に『せんとくん』と『ゆるキャラ』が入ったのは昨年(2008年)のことだからね。結局、流行語は共倒れだったのが、僕的にはすごくおかしかったけどね。


◆日本人にはゆるキャラを愛するDNAがある


DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』より(C)2009 TV TOKYO
 みうらさんが『ゆるキャラ』と呼んだのは、全国各地で開催される地方自治体主催のイベントや村おこし、名産品などのPRのために作られたキャラクターのこと。特に着ぐるみとなったキャラクターを指す。『ゆるキャラ』の三か条とは、
一、郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。
一、立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。
一、愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせている事。


――みうらさんが週刊誌に『ゆるキャラ』の連載を始めたのは2003年1月からでした。


【みうら】『ゆるキャラ』というか「地方キャラ」と呼ばれていたものはの古くからたくさんあったと思ったんだよね。僕の中では、ピーポくんがきっかけなんだよね。


――みうらさんが週刊誌に『ゆるキャラ』の連載を始めたのは2003年1月からでした。


【みうら】『ゆるキャラ』というか「地方キャラ」と呼ばれていたものは古くからたくさんあったと思ったんだよね。僕の中では、ピーポくんがきっかけなんだよね。


――ピーポくんは、警視庁のシンボルマスコットとして1987年(昭和62年)に誕生したそうです。


【みうら】ピーポくんは、いろいろな動物のかわいいところをイメージ化っていうんだよね。人間でもないし、動物でもないし、じゃあ何者なんだかわからないことになっちゃっていて、すごく気になってね。頭から飛び出している角みたいなものは、社会の動きをキャッチするアンテナで、名前の由来は「ピープル&ポリス」の略なんだって。誰だって、「ピーポーピーポー」のサイレンかと思うじゃない? 「説明してくれなきゃわからないじゃん」みたいなところがてんこ盛りで、どんどん面白くなっていったんだよね。


――確かに突っ込みどころ満載なんだけど、キャラクターに対してはそれを許せる寛容さが私たちにもありますよね。



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【みうら】鳥取県のマスコットキャラクターにトリピーというのがいるんだけど、もともとは1997年の山陰・夢みなと博覧会のキャラクターとして誕生した。頭からヘタが飛び出しているんだけど、「梨をモチーフにしている」と説明されて「梨に見えない」と怒る人はいないんだよね。「あ〜、梨なんだ〜」と、半笑いだよね。「鳥取だから、名産品の二十世紀梨なんだ〜」と何となく納得できるんだよね。「鳥取だから鳥なんだ。な〜んだ、そうなんだ」って。

 日本には、昔からあらゆるものに神が宿っているという信仰があった。トイレには不浄を清めてくださる『うすさま明王』がいるとか、八百万の神様を信じてきた祖先のセンスが、現代の日本人にもちゃんと受け継がれているんだろうね。どんなものにも目と鼻と口を付ければ、生きているような気がしてくるし、もともと形のない神様が『ゆるキャラ』という姿で現れたと言っても、素直に受け入れることができるのかもしれないよね。


――――『ゆるキャラ』の今後をどう思いますか?


【みうら】この3、4年にものすごく増えているんだよね。彦根市だけでもすごくいるし。ひこにゃん以降は「かわいくしたほうがいい」って、みんなが思っちゃたから、昔みたいにいろんなものを盛り込みすぎて、説明されないと何がなんだか分からなくて笑いを誘うようなキャラクターが減ったよね。商品開発のことを考えて、リサーチしたりしているから、ゆるくなくなってきていることは確かだけど、放っておけばまたゆるくなると思いますよ。とんちんかんな所は失って欲しくないよね。「何だコレは」と思わせるものがないと、面白くないもの。ほっといたほうがいいと思うんですけどね。

 ただ、最近は俺自身が『ゆるキャラ』になりそうな恐怖を感じているんだよね。昔から特徴出すために長髪にして、眼鏡もかけているもんだから、『ゆるキャラ』であることは自分でも認めざるを得ないんだけど、そこに目をつけられたらおしまい(笑)。あくまでも『ゆるキャラ』を見つける側にいないとヤバイと思っているんです。


DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』

DVD『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦』

出演:みうらじゅん 糸井重里 安齋肇ほか
発売:テレビ東京
品番:TDV-19256D
発売日:2009年10月9日
定価:2940円(税込)




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