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【編集長の目っ!】メジャーシーンでもブレイク、ネットスター・supercellって?

いい言葉といいメロディといい音。
ネットも“リアル”も判断基準は同じ


 アルバム『supercell』が好評だ。supercell feat.初音ミクとクレジットされたこの作品は3/4に発売され、3/16付アルバムランキングの4位に初登場。その後も着実に数字を伸ばし、3/30付のランキングでは24位、売上は7万枚を超えた。「なんだ、なんだ? 誰だ、誰だ?」と一躍注目を集める存在になったが、実はこのsupercell、ネットシーンではすでにスーパースター的存在だった。

supercell feat.初音ミクのメジャーデビューアルバム『supercell』 

supercell feat.初音ミクのメジャーデビューアルバム『supercell』 

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 supercellは、ミュージシャンのryoを中心に、何名かのイラストレーターが在籍するクリエイターユニットで、音楽とイラストを融合させた作品を発表。楽曲に関しては、音声合成ソフト「初音ミク」を“ボーカリスト”として迎えている彼らの作品は、動画投稿サイトなどで圧倒的な人気を誇り、代表曲の「メルト」は関連動画の再生数が1300万回という驚異的な数字を記録している。なぜここまで見られているのかというと、supercellのオリジナル作品を、ネット上で誰かが演奏し、歌い、アレンジし、見ず知らずのクリエイター同士が集まり「オンライン・コラボレーション」し、ひとつの作品を作り上げ、それを投稿する―――そんな楽しみ方が受けているからだろう。

 「初音ミク」という、人ではない“ボーカロイド”を使っているという点は、好き嫌いが分かれるところだが、そこは全く視点が違う。前述したような楽しみ方をしている人がネットシーンでは多いわけで、そしてクオリティの高いイラストがCDと一緒にパッケージされている、というところが彼らには魅力的なのだ。メジャーシーンに登場しても、彼らの音楽とイラストが融合したその世界観に共感しているファンが、売上7万枚という自主制作盤時代を超える数字となって表われており、さらに伸びている。

 supercellの中心人物であるryoは「初音ミク」について、「トラックはずっと作っていたが、そのうちに自分が作ったトラックに歌を入れたくなった。歌が入ったらどうなるかって。でも周りに歌える人がいなかったから…だから「初音ミク」を使った。もちろん表現力は欠けるけど、自分の要求することには完璧に応えてくれる」と語っている。

 当たり前といえばそうかもしれないが、supercellの自主制作盤と比較すると、今回の作品は音が格段に良くなっている。音質が素晴らしい。この音、メロディを歌いこなせるボーカリストはそうはいないと思う。

 音も素晴らしいが、ryoが作るメロディがこれまた秀逸で、良質なポップミュージックに仕上がっている。初音ミクがどうのこうのという問題ではない。「僕は曲も詞も書いて、アレンジもやっています。ですからもし職業は? って聞かれたら“作家”って答えられるようになりたいです。筒美京平さんのような、あまり表に出てこない(顔が見えない)、でも作る曲はみんなが知っている、そんな作家になりたい」と、希代のメロディメーカー・筒美京平の名前を出してくるあたりに、ryoの目指す方向がハッキリとわかる。

 「ネットも“リアル”も、音楽の聴こえ方は変わらない。届く層もあまり変わらないと思う」とryoは言う。いい音、いいメロディはどこで誰が聴こうと、いいものはいいということだろう。

 さて、メジャー第1弾となった今回の作品だが、ryoの元には早くも楽曲提供の依頼が来ており、さっそく中川翔子の次のシングルのC/W曲に彼の作品が起用されている。「今までの彼女にはなかった部分を引き出せるような作品を書いた」と、プロデューサー気質もしっかりと持ち合わせたクリエイターsupercellに、そしてryoに注目したい。

「初音ミク」を使ったアルバム『supercell』が初日2位に(09年03月05日)

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