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3D仮想世界「セカンドライフ」日本語版の可能性

日本語版公開に向けて高まる期待3D仮想世界「セカンドライフ」の可能性

 アメリカ発の3D仮想世界体験サービス「セカンドライフ」が話題になっている。書店には数多くの入門書が並び、国内でもいち早く進出する企業が増えている。音楽業界にとってもセカンドライフは新たなビジネスの場として成立するのだろうか?

仮想通貨による活発な経済活動

 まずはセカンドライフについて簡単におさらいしておこう。セカンドライフとは、米リンデン・ラボ社が運営するバーチャルワールド(仮想世界)だ。3Dで表示される画面はオンラインゲームによく似ているが、モンスターを退治するといったような目的は特になく、アバターと呼ばれる自分の分身を使って、実際の世界と同様ショップや公園、映画館や野球場など様々な施設がある巨大な世界の中を自由に歩き回ったり、世界中のユーザーとアバターを通してチャットなどのコミュニケーションを楽しんだりすることができるものだ。

 



 だがこれだけではオンラインゲームとさほど変わらない。セカンドライフの最大の特徴は、リンデンドルというUSドルに交換可能(レートは変動相場制)な仮想通貨が用意されている点だろう。ユーザーはリンデンドルを使って様々なアイテムを購入できるだけではなく、購入した商品を他のユーザーに販売したり、開発ツールを使って自ら作成したアイテムを販売することが可能になっている。さらにセカンドライフ内の土地も売買可能であり、大きな土地を購入し、家屋を建てて他ユーザーに賃貸するなど、活発な経済活動が営まれていることが大きな特徴だ。ちなみにこのような行為はオンラインゲームではRMT(リアル・マネー・トレーディング)と呼ばれ、禁止されているのが普通だ。

 07年6月現在アカウント取得者は700万人を超えており、みずほコーポレート銀行の調査によると08年末には人口が2億5000万人に迫り、06年には104億円だったリンデンドルの年間取引量は1.25兆円に達するだろうという予測が示されている。

大手企業がプロモーションやマーケティングに活用

 これだけの規模のコミュニティーだ。当然新たな媒体として米国ではすでに認知されており、ネットユーザーと親和性の高いEC・IT業界はもちろん、製造・サービス・メディア・エンターテイメントなど様々な分野の大手企業が続々参入している。その中からいくつか事例を紹介しよう。

 自動車メーカーのメルセデス・ベンツが運営するバーチャル展示場では、3Dでモデリングされた車やプロモーションムービーを見るだけではなく、展示場屋外に設置されているテストコースで実際に試乗することができる。また、独自に編集したドライブのBGM集(MP3データ)を無料でダウンロードすることも可能になっている。

 レコードメーカーの米SONY BMGはメディア・アイランドという大規模な展示場を用意し、アーティストのプロモ映像や音源の視聴、アイテムの販売、公式サイトへの誘導などを行っている。構内には実際に乗車できるモノレールが走っており、ただ乗っているだけでも楽しい。

 これらの事例は主にプロモーションが目的だが、マーケティングを主眼においたものもある。米ホテルグループのスターウッドホテルは、新たなホテルブランド「Aloft」を立ち上げる際、まずユーザーから外装やインテリアなどの意見を募ってセカンドライフ内にバーチャルホテルを建設し、建設過程をブログでも逐次レポートしていった。この結果を元にリアルワールドのホテルが建設され来年オープンするのだが、セカンドライフを使ったマーケティング活動を元にリアルへフィードバックした格好の事例として、数多くのメディアから取り上げられた。そのため結果的にはプロモーションの効果も得ることができたというラッキーな事例といえよう。

 次に、日本企業の事例を見てみよう。日活が運営するCATVチャンネル「チャンネルNECO」は、昭和30年代の「丸の内日活劇場」を模した建物や、コスプレをして記念写真を撮影することができる映画のオープンセットなどを提供している。また、07年6月に開催された「ケーブルテレビショー2007」への出展と連動し、ここで撮影した記念写真のデータを実際にブースにもっていくとリンデンドルをもらえるというリアルとバーチャルを連動したキャンペーンの実験も行われた。

 またテレビ東京もこのほど、日本のテレビ局としては初めてセカンドライフへの進出を発表。7月2日〜8月31日の期間限定で、昭和30〜40年代を彷彿とさせる街並みを出現させ、懐かしい日本の夏祭りを再現する「テレトロ祭り!2007」を開催する。

 音楽業界ではEMIミュージック・ジャパンがいち早くセカンドライフに参入している。所属アーティストの音源やビデオの試聴、アーティストサイトへの誘導、QRコードを利用したケータイ「着うた」サイトでの楽曲購入などができる建物を建築。07年4月には吉井和哉の新作ライヴDVDの映像を、発売よりも一足早くセカンドライフ内で公開するというキャンペーンも行っている。

待たれる日本語版公開、ユーザー同士のつながりに期待

 さてこのように事例は増えてきているのだが、実際問題セカンドライフへの企業進出は現状でどれだけ効果があるのかと疑問を持っている方も多いだろう。

 リンデン・ラボ社提供のデータによると、07年5月現在の登録者数は全世界で約680万人だが実際のアバター数は437万、そのうちアクティブ(過去60日以内にログイン)ユーザーは150万人ほどとなっている。また、日本人の比率は3.7%なので、現在日本のアクティブユーザーは多くとも5万人弱と推測される。また、男女比率は57:43、年齢層は25〜34歳が最多で38.47%、次いで18〜24歳の27.34%、35〜44歳の21.13%となっている。

 日本人ユーザーが少ない理由としては、07年6月現在いまだ正式には日本語化されていないということが大きい。建物内に表示する説明文やチャットなどは日本語が使えるのだが、設定画面やチュートリアルは日本語化されておらず、英語が苦手なユーザーは参考書籍やサイトを参照する必要があり、まだまだ敷居が高い。このため日本ではPCに慣れ親しんでおり、なおかつ新しい物好きないわゆるアーリーアダプター層が現在のユーザーの主流であると思われる。ただし、この層は流行の発信元となっており、これらの層を早めに取り込んでおく必要があると考える企業にとってはリーチする価値は十分あるだろう。

 先ほど事例を紹介したEMIミュージック・ジャパン Virgin Music Co. マーケティング部の城所祐一氏(Ca-style)によると「今回キャンペーンを行った吉井和哉のターゲット層自体が20代後半から30代とセカンドライフのユーザー層と合致しており、音楽から離れてしまっている人も多いこの層にもう一度音楽に触れてもらいたいという意図がありました」とのことだ。

 城所氏によると、キャンペーン参加者の半数はこのためにセカンドライフに登録した人で、ムービーの再生方法など、ベテラン住人が初心者に教えてあげるなど、ユーザー同士(ファン同士)のつながりが多く見られたという。確かにこのような現象は企業対個人のメディアであるウェブサイトなどではなかなか見られないことだろう。さらに「一つの新たな媒体として、まずはユーザーにセカンドライフを楽しんでもらうことが目的でした。アーティスト側の反応も良好でしたし、企業が押しつけるのではなくユーザー同士の口コミで広がっていくメディアとしてこれからも注目していきたいと思っています」(城所氏)とも語っている。

 現段階では直接売り上げにつながったり、プロモーション目的でも既存メディアと比べて目立った優位性が見られるわけではないが、新しいスタイルに敏感な比較的高年齢層、そして今後増えるであろう若年層などを見越して今からテスト的に導入してみるのはそう悪い選択ではないかもしれない。


     

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