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『タイヨウのうた』ヒットストーリー

映画、ドラマと音楽とが生み出したシナジー
2つの『タイヨウのうた』から生まれた2つのシングルヒット



 この夏、映画とドラマ両方がヒットした『タイヨウのうた』。難病を抱えるストリートミュージシャンの少女を主人公とし、音楽が重要な役割を果たすストーリーでもあり、それぞれが主人公・「雨音薫(あまね・かおる)」による大きなシングルヒットをも生み出している。それも、二人の雨音薫=YUI、沢尻エリカそれぞれのキャリアにとって、確実にターニングポイントの一つになり得るであろうかたちでのヒットになった。

アーティスト性が映画、ドラマとそれぞれシンクロ

 もともと、93年の香港映画『つきせぬ想い』のリメイク化権をS・D・P(スターダスト・ピクチャーズ)が取得し、企画がスタートした映画『タイヨウのうた』は、『つきせぬ想い』を原案として脚本家・坂東賢治氏が書き下ろしたオリジナルストーリーが採用され、進行することになった。

  「タイヨウのうた」
Kaoru Amane


「Good-bye days」
YUI for 雨音薫

 太陽の光に当たることができない難病・色素性乾皮症(XP)を抱えるため、昼夜を逆転させた生活を送らざるを得ない少女・雨音薫が、夜になるたびギターを抱えて歌っていた広場で孝治と出会い、愛を育むが…、というラブ・ストーリーだ。S・D・Pらとともに、制作委員会に名を連ねるソニー・ミュージックレコーズが初めて映画への出資を行った作品でもある。

 主演には昨年2月にシングル「feel my soul」でデビューしてまだ間もなかったシンガー・ソングライター、YUIが抜擢され、次いで、映画公開から間を置かずにテレビドラマも放映することが決定。こちらは女優である沢尻エリカが主演を務めることに決まった。

 YUI、沢尻とも、その音楽制作を担ったのはソニー・ミュージックレコーズ(SR社)内に新たに発足した新レーベル“STUDIOSEVEN Recordings”だ。「このレーベルで行うタイアップ施策は、従来のそれよりも一歩踏み込んだかたちで、映画にしろドラマにしろ、脚本の段階から映像側のスタッフと話し合いながら共同で作り上げていくというケースがほとんどです。そういったケースでは、音楽に力がないとそれだけで作品全体がだめになってしまう。映画、ドラマサイドのスタッフも含め、関係者すべてが納得する完成度が求められます」と語るのは同レーベルのチーフプロデューサー・今野義雄氏だ。同レーベルはこれまで『NANA』への出演、劇中歌のリリースでブレイクした伊藤由奈や、Kらを輩出した同社Hプロジェクトが発展するかたちで発足している。

 YUIの場合、曲作りについては昨年5月頃から監督の小泉徳宏氏、プロデューサーの守屋圭一郎氏らを交え、徹底的なディスカッションが重ねられた。

「小泉さんも、守屋さんも、当初からアーティストとしてのYUIを真正面から捉え、向き合っていただきました。ただ、タイアップというのはコラボレーションだから、曲作りについて、映画サイドはどこまで踏み込んでいっていいものか、こちらもどこまで映画サイドの要望を飲みながら進めるかと、その距離感を掴むまでどうしても時間がかかる。結局そこで中途半端に終わってしまうケースが多々あると思いますが、「Good-bye days」と、同じく劇中でYUIが歌った「Skyline」(シングル「Good-bye days」に収録)の場合は、互いに最初は言いにくかったこともどんどん言い合える空気になり、最終的にかなり完成度の高い共通の着地点を見出すことができました」(今野氏/以下同)

 こうしてできた楽曲の雛型は、昨年夏の撮影開始以降もさらに進化していく。それまで演技の勉強すらしたことのなかったYUIは、「演技をするというのではなく、雨音薫になりきってみよう」という気持ちで撮影にのぞんだという。「YUI自身がリアリティをもって映画の世界観を掴んでいき、雨音薫に重なっていく中で感じたものを詞に込めて完成させたのが「Good-bye days」です」。

 一方、YUIが初めて演技を行ったのとは反対に、ドラマ版の主演女優である沢尻エリカにとっては、CDリリースが初めてとなった。しかし、今野氏には沢尻の歌を聴く以前からある種の確信があったという。同じくSTUDIOSEVEN RecordingsのKが昨年11月、沢尻が主演するCX系ドラマ『1リットルの涙』主題歌となった「Only Human」をリリースしていたことから、続いて今年1月にリリースされた1stアルバム『Beyond the Sea』のCMに沢尻が出演することになった。

 アップで映し出された沢尻の片目からこぼれる涙がCG処理され「K」という文字になるというものだが、まぶたの中央から涙を一筋だけ、それも片目だけ流すという難しい演出だっただけに、スタッフは目薬を用意。しかし、沢尻はその目薬を使わず、ものの30秒とかからずにまったくオーダー通りの涙を流してみせたという。「現場にいたスタッフすべてが、鳥肌が立つくらいびっくりしたんですが、そんな経験があったので、彼女が歌い手としてどうこうという以前に、表現者としてとてつもない才能をもっていることを実感していましたし、相当良い作品に仕上がるという予感を持ちました」。

 もちろん、楽曲についてはドラマの場合もTBSのプロデューサー・津留正明氏との間でディスカッションが重ねられた。沢尻が歌う楽曲は2曲。劇中でオーディションに出るたびいつも最終選考まで残るものの、あと一歩というところで落とされ、あるオーディションでは審査員に「本当の恋をしたことがありますか?」と評される「Stay with me」と、孝治と出会い、本当の恋を知ったことから生まれる「タイヨウのうた」だ。今年4月から、ドラマの撮影が開始された5月にかけて行われたレコーディングでは、「単に上手く歌うというより、表現者として、いろんな表情の声を持っていた」沢尻とともに、その様々な声の中から雨音薫というシンガー像を模索する作業からアプローチしていったという。

ワンステップ昇った YUI、沢尻は記録づくめのデビューに

 こうして制作された二つの『タイヨウのうた』と、二人の雨音薫による楽曲だが、まず、YUI for雨音薫の「Good-bye days」が6月14日にリリースされ、映画『タイヨウのうた』が6月17日に公開。さらにTBSドラマ『タイヨウのうた』第1話が7月14日に放映されている。

 映画封切り前の段階では、全国各地で開催された試写会それぞれで、試写後にYUIのライヴパフォーマンスも披露。「映画を観た人は必ずYUIのファンになってくれるという確信があったから、映画を観た直後に本人が生でライヴをやれば、YUIが持つアーティスト性そのものが映画とシンクロしていることを理解してもらえると思いました。だから、映画のおかげでシングルがヒットしたというより、映画を通じてYUIのアーティスト性が正しく伝わったということだと思います」。

 シングル「Good-bye days」はYUIにとってそれまでの本誌チャートにおける自己最高位を塗り替える3位に初登場。続いて9月20日にリリースされたシングル「I remember you」はノンタイアップながら、「Good-bye days」のそれをさらに上回る2位に初登場し、今野氏の言葉を証明している。

 一方、ドラマ版では、「Stay with me」が初回から劇中に登場していたのに対し、「タイヨウのうた」が登場するのは第5話目(8月11日放映)、それもフルコーラスで披露されるのは第6話目(8月18日放映)になってからだった。Kaoru Amane名義で行われた「タイヨウのうた」CDリリースはこのストーリーの進行にそって8月30日になされたが、ドラマと見事にシンクロした楽曲への視聴者による飢餓感は、まず先行配信された着うたに向けられた。18日に配信が開始された「タイヨウのうた」は、「Stay with me」と合わせ、CD発売日までに約50万ダウンロードを記録。これはソニーミュージックグループ全体としても過去最高の記録だという。

 しかも、それだけのダウンロード数を記録したあとにリリースされたCDの方も、9月11日付本誌チャート2位に初登場。翌週には首位も獲得し、「女性アーティストのデビュー作における歴代最高の初動売上枚数」「女優による歌手デビュー作として12年ぶりとなる首位獲得」等々、まさに記録づくめのデビューとなった。着うたの方も勢いが止まらず、2曲の累計ですでに200万ダウンロードを突破している。

 映画とドラマ、さらにそれぞれ劇中で主人公によって歌われる楽曲とが濃密に絡み合い、大きなシナジーを生んだ典型的なヒット事例と言えるだろう。






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