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実写映画『キングダム』大ヒットの理由と裏側 松橋真三P、続編も「視野に」

■「Film makers(映画と人 これまで、そして、これから)」第3回 松橋真三プロデューサー
 4月19日に公開して以来、大ヒットを続け興行収入は45億円を突破した映画『キングダム』。近年、壮大なスケールの漫画を実写映画化することには否定的な意見も多いなか、『キングダム』はなぜ多くのファンの支持を得て大きな結果を残すことができたのだろうか。本作のプロデューサーを務める松橋真三氏に分析してもらった。

『キングダム』大ヒットの理由と裏側を語ってくれた松橋真三プロデューサー (C)ORICON NewS inc.

『キングダム』大ヒットの理由と裏側を語ってくれた松橋真三プロデューサー (C)ORICON NewS inc.

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■売れる原作に乗れば当たるんじゃないかという安直な考えはダメ

 この10年、日本映画界は人気漫画の実写映画化が一つのトレンドになっていた。特に映像技術の発達により、「実写化不可能」と言われてきたような漫画も続々と実写化が発表された。しかし一方で、日常を描くことが多い少女漫画の実写化と違い、壮大なスケールが描かれる青年漫画系の実写化は、成功に導くことが非常に難しいという印象を受ける。

 松橋プロデューサーも「売れる原作に乗れば当たるんじゃないかという安直な考えは、お客さんに見透かされてしまう」という危険性は持っていたという。そんななか、マーベルコミックを原作にしたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品群や、DCコミックの実写化など、ハリウッド資本のもと作られるエンターテインメント作品は世界中で多くの支持を得ているという事実も認識していた。

 「金銭的なものを含め、どこかで妥協するのではなく、良質な原作にしっかり投資し、良いクリエイタースタッフ、キャストを集めれば、質の高いものはできる」という信念のもと『キングダム』製作に覚悟を持って臨んだ。

■徹底したマーケティング調査 主人公・信の配役は山崎賢人が一番人気 まずやったことは、徹底的なリサーチ。日本映画としては破格のバジェットをつぎ込むプロジェクトだけに、徹底的にマーケティング調査をしたという。そのなかでもメインターゲットとしたのは原作ファン。ファンにとって、主人公となる信を誰にしたらいいのか、データに基づくアンケートをとった。結果は山崎賢人への支持が一番多かった。

 「人気がある=批判も多いということはある。確かに主役が発表されたとき、SNS上では批判が目立っていたのかもしれませんが、大局的にみると山崎さんは信にふさわしいという意見が一番多かったんです。一つには原作10周年記念の動画で彼が信を演じたという事実もあったと思いますが、山崎さんへの期待は大きかったんです」。

■脚本へのこだわり、原作者の協力は不可欠

 続けて松橋プロデューサーが挙げたのは脚本への徹底的なこだわり。いわゆるハリウッドメジャーが採用しているような、脚本の市場調査だ。

 「脚本がお客さんからどのような評価を得るか、何度も調査をして、撮影前にいくつかの欠点を見つけだし是正しました。それによってクライマックスに向けて盛り上がる流れをつかむことができました。さらに原作者の原泰久先生にも脚本構築にご協力いただけたことも大きいです。原先生が入ってくれたことで、我々だけでは手を加えられない部分に映画的なアプローチを行うことができました」。

 作り手の思いは映画作りにとって大きな原動力になることは間違いないが、そこにこだわり過ぎると客観性を欠く危険性があると指摘する。

 「こうした大作を扱ううえで、リサーチマーケティングをすることはとても大切。僕は、自分の思い込みを正すためにやっています。もちろん脚本段階で、こうした調査をすることは莫大な費用がかかります。でも『予算がかかるからやめよう』ではなく『予算をかけるべき映画なら、しっかりやろう』という考えを採用しました」。

大沢たかおに王騎将軍を受けてもらえなかったら延期していた可能性もあった 先ほど主人公・信のキャスティングは、客観性を持った判断だと話していたが、同じく作品の大きな核となると考えていたのが、山の民を束ねる女王・楊端和役の長澤まさみと、将軍・王騎役の大沢たかおだという。

 「映画を大作に見せていくことも大事な要素。その意味で、長澤さんと大沢さんの二人に出演していただくというのは、山崎さんと同じぐらい大事なことでした。この三人が揃うことでメジャー感も出る。このブレない三人がいることで『キングダム』という映画は一本筋の通った安定感が増すんです」。

 なかでも大沢に王騎将軍を演じてもらいたいという思いは非常に強かった。王騎将軍と言えば、原作ファンのなかでも人気の高いキャラクターだ。実写化が発表された際、誰が演じるのかというトピックスはファンの間でも大きな議論となった。

 「私もこの業界に長くいるので、大沢さんがどれだけ作品に真摯に向き合う俳優さんであるかは知っていました。そんな方が王騎将軍を引き受けてくれたら、現実離れしたキャラクターもしっかり作ってくれるという確信があったんです。もし大沢さんが引き受けてくれなかったら、王騎にふさわしいと思える人が見つかるまで、撮影は延期になっていたかもしれません。それだけこだわりは強かったんです」。

■三年後の大ブレイクを確信した吉沢亮のキャスティング

 さらに、主人公の親友・漂と秦国の若き王・エイ政役の吉沢亮の起用も、作品にとって非常に大きかったという。「とてもラッキーなことだった」と語っていたが、そこにも松橋プロデューサーの未来を見つめる眼力が大きく作用していた。

 「先ほど山崎さん、長澤さん、大沢さんの三人が核になると話しましたが、そこがビシッと決まっていたからこそ、そのほかのキャストは新鮮味や時代に合うかどうかという部分でチャレンジできました。一番のポイントはエイ政役の吉沢さん。この規模の映画だと、企画を動かし始めてから公開まで3年ぐらいはかかります。当時はまだ突き抜けていなくても、3年後、必ずスターになれる人、それが吉沢さんだと思った。僕は『オオカミ少女と黒王子』で仕事をして以来、彼の素材の素晴らしさ、演技力は確かなものだと思っていました。いつ爆発してもおかしくない存在という確信はありました」。

 この言葉通り、松橋プロデューサーと吉沢は『オオカミ少女と黒王子』以来、『斉木楠雄のΨ難』、『ママレード・ボーイ』、『銀魂2 掟は破るためにこそある』と作品を重ねる。「『キングダム』に向けて着実にステップアップし、スターになっていきました。そうなってほしいとは思っていましたが、タイミングはドンピシャでした。神のお導きというか、ラッキーだとは思っています」。

■興収40億円は最低ラインという覚悟 見えてくるのは続編

 製作時から最低ラインとして「興行収入40億円」という数字は意識していた。もし達成できなければ、佐藤信介監督と松橋プロデューサーは、職を辞する覚悟で臨んだという。結果は公開5週目で早くも45億円を突破。さらなる数字の上乗せは期待できる。当然、話題になるのは続編だ。

 「『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』などを意識しながらやっていた作品。もちろん続編は視野に入れていますが、日本はハリウッドと違って、資金調達が簡単ではないんです。どんなに自信があっても、一本目の結果が出なければ動けない。そこが難しいところですが、こうして結果が出て、ファンからの熱い要望も伝わってきています。絶対なんとかしなければという気持ちでいます」。

 舞台あいさつなどのイベントでも、山崎をはじめとするキャストたちは総じて「続編」への期待を口にしていた。この先、まだまだ人気のキャラクターが多数登場する『キングダム』。このままヒット街道をばく進すれば、近い将来「期待」はきっと現実になるだろう。

※山崎賢人の「崎」は立つ崎
(取材・文:磯部正和)

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  • 映画『キングダム』より場面カット  (C)原泰久/集英社(C)2019映画「キングダム」製作委員会
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  • 映画『キングダム』より場面カット  (C)原泰久/集英社(C)2019映画「キングダム」製作委員会
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