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川栄李奈の女優として作品を支える“透明力” 前へ出すぎない謙虚な実力派

 元AKB48で女優の川栄李奈の躍進が止まらない。年女で亥年の彼女は“猪突猛進”の言葉通り、現在、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK総合)、『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)のほか、『デザイナー 渋井直人の休日』(テレビ東京系)に出演。3月には映画『九月の恋と出会うまで』の公開も控えており、まさに快進撃を見せている。SNSでは「AKBグループ卒業組の女優のなかで別格」とも評される川栄だが、「大躍進」と聞けば、ファンでもなければ「そこまで?」と気づかない人も多いだろう。いい意味で印象を残さず、“色”がつかない女優・川栄李奈の“透明力”に迫る。

『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』の熱演が高評価を得ている川栄李奈(C)日本テレビ

『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』の熱演が高評価を得ている川栄李奈(C)日本テレビ

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■AKB48時代から定評があった演技力

 川栄李奈は10年7月、AKB48第11期研究生オーディションに合格。同年AKB48研究生『シアターの女神』で公演デビューした。今でこそ順風満帆に見えるが、実は苦労人であり、11年の第3回選抜総選挙である『AKB48 22thシングル選抜総選挙』の初参加時はランク外。12年も同様で、13年にようやく25位にランクインした。

 これには同年放送の『めちゃ2イケてるッ!』(フジテレビ系)のコーナー「国立め茶の水女子大学付属第48高等学校期末テスト(第13回)」での活躍がある。大島優子や山本彩、渡辺麻友、板野友美、篠田麻里子、柏木由紀、指原莉乃らと出演するなかで、川栄は雷様(高木ブー)の扮装で登場。おバカ回答を続出し見事、成績最下位“センターバカ”の栄誉(?)を獲得。おバカキャラが当たり、一躍知名度と好感度を上げた。そして15年、彼女はAKB48を卒業する。

 川栄の演技力は、ドラマ『マジすか学園シリーズ』(11〜15年)や主演ドラマ『セーラーゾンビ』(14年)などで、ファンの間では定評があった。15年の舞台『「AZUMI」幕末編』でも主人公のあずみを演じており、この演出を務めた岡村俊一氏は「こんなにできるとは思わなかった」と舌を巻いていた。

■「ゴリ押し」評が目につかない川栄李奈の“色”のなさ

 そんな川栄の演技力が業界で注目され始めたのはドラマ『早子先生、結婚するって本当ですか?』(16年/フジ)のレギュラー出演と、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK総合)。とても自然で共演者のお芝居を邪魔せず、それでいてシーンのスパイスにもなる川栄の女優としての才能が知れ渡り、同年に『死幣─DEATH CASH─』(TBS系)、『こえ恋』(TBS系)、『ガードセンター24 広域警備司令室』(日本テレビ系)、『バスケも恋も、していたい』(フジテレビ系)、『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)と5本のドラマに出演。

 翌年の『上半期ブレイク女優ランキング』(ORICON NEWS)で10位にランクインしたが、元AKB48という看板もあったせいだろう、このネットニュースには「ゴリ押し」のコメントも目立った。そう映っても仕方のないほどの突然の活躍だったが、この後、川栄に「ゴリ押し」との評価はそれほど目にしなくなる。これこそが彼女が持つ、“色”のつきにくい“透明力”にあるのではないか。

 象徴的な例として、17年の『第48回衆議院議員総選挙』の選挙啓発イメージキャラクターがある。もちろん報道されたが、街角で当のポスターを見て「川栄李奈だ」と気づく人は少なかったようで、SNSでもそれほど大きな盛り上がりはなかった。逆にいえば、それほどに“自然”だったということだ。これが前田敦子や大島優子、渡辺麻友や篠田麻里子だったら、おそらく強く印象に残っていたはず。そういう意味で“色”が薄い。ほかauのCM『三太郎シリーズ』のはっちゃけた織姫役もそうだ。SNSでも「あれ川栄李奈だったの?」との声が多数上がるなど、いい意味で“色”が曖昧なのだ。

■芝居や存在に視聴者への押し付け感がない女優

 役者には何種類かある。例えば木村拓哉のように、超弩級の花のもとで“木村拓哉”というオーラのもと芝居をするスタータイプ。そして戸田恵梨香のように、高い演技力を持ちながらもその役を後に引きずることなく、定まった印象から回避するタイプ。強いて言えば川栄は後者であり、“前へ前へ”出すぎない姿勢は、彼女の性格も大きく影響していると思われる。

 川栄は18年1月のORICON NEWSのインタビューで「私は自信を持たないようにしているタイプ。自信を持つと調子に乗っちゃう」「謙虚な気持ちは意識してずっと持ち続けていたい」と答えている。確かに川栄のSNSを見ると、多くのファンサービスとともに、ネタ的要素があるものも多い。謙虚でありながらもユーモラスな“お調子者”が、彼女のキャラであることが分かる。

 彼女のインタビューからは「いつ自分が消えてもおかしくない」と意識しているフシもあることがわかる。これまでの歩んできた道のりと、自身と周囲を客観的に見ることができる視線を持つことが、今の“色”を薄れさせるスタンスへとつながり、それがどんな色にでも染まれる“透明力”のある女優としての活躍の場を広げていると分析できる。“元AKB48”という看板もいい意味で薄れていると言え、指原莉乃同様、その看板がなくても十分に存在感を放つ人物たり得ている。

 演技が自然で、どんな色にでも染まり、芝居や存在に視聴者への押し付け感がない。まだ長セリフでは固い部分も見られるが、それも彼女の伸びしろだ。今後、彼女がどんな役柄に挑み、どんな作品に出演するか。その活躍を見守っていきたい。
(文/衣輪晋一)

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提供元:CONFIDENCE

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