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関ジャニ∞、脱退会見と“編集なし”ラジオ発言に見るアイドルの本音の出し方

 渋谷すばる関ジャニ∞脱退を発表した日から、10日以上が経った。全員が報道陣の前で思いを語ったあの日。様々な報道が出尽くしたあと、ラジオではメンバーが再び口を開いた――。関ジャニ∞のCDデビューから14年。嘘なく、泥臭く、新しいことへ挑戦してきたグループは今、トップアイドルとなっていた。誤解を恐れずに言えば、彼ららしくないある種の“安定”を崩した今回の事態は、それぞれにとって“次の一手”ともなり得る。「嘘はつきたくない」7人の決断、その先にあるものとは?

6人でステージに立つ、5大ドームツアーは7月15日からスタート

6人でステージに立つ、5大ドームツアーは7月15日からスタート

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◆渋谷すばるの目から、不意に大粒の涙があふれた

 “嘘のない”グループだった。
 2016年のツアー最終日、大倉忠義が腸閉塞で欠席したとき、「大倉がいなくて、さびしい思いをした人もたくさんいたと思う」と言って、渋谷すばるは号泣した。渋谷が最終日で号泣したことは、それまでにも何度かあった。2006年、内博貴が脱退した年のツアーでは、アカペラで「大阪ロマネスク」を歌った。渋谷は横浜アリーナいっぱいにその美声を響かせていたが、大サビのところで不意にその目から大粒の涙があふれた。「最高で最強のグループです。僕らは、応援してくださる皆さんが恥じないグループになります」。ほとんどのメンバーは泣いていたけれど、横山裕は涙を見せることなく、きっぱりとそう言った。2009年7月の京セラドーム。横山が「長野に行ったとき、メンバーで言い合いもしたしケンカもしました。意味のあるケンカだったと思います」と語った。渋谷や大倉は号泣していた。涙の理由はわからなかったが、彼らなりにまた一つの壁を乗り越えたような、そんな清々しい雰囲気があった。

 “泥臭い”グループだった。
 2007年のライブでも披露されていた「エイトレンジャー」というコントは、デビュー前から関西を拠点に活動していた彼らが、劇場をお客さんで埋めるために「何か自分たちにしかできない面白いことを」と、考えたものだ。発案者は横山裕。吉本新喜劇の登場人物が情けない戦隊ヒーローになったようなお約束いっぱいのコントは、毎回“友情”がテーマ。アドリブの応戦も含め、彼らの関西人らしい魅力が十二分に詰め込まれていた。

 “新しいことをやる”グループだった。
 2012年のデビュー8周年を記念し、東西の国際展示場で“フェス”を開催した。公演自体は、コンサートとトークステージの2部構成。これを朝から夕方まで、1日5セット回した。過去の衣装、子どもの頃からの写真、趣味の空間などの展示のほかに飲食ブースも用意され、1日そこで過ごせる充実ぶりだった。楽屋前の廊下にはカメラが設置され、メンバーが休憩中も観覧客に向かって歌ったりふざけたりのアクションを起こす。しかもその映像は動画撮影OKと、異例づくしのイベントだった。

◆最近の彼らの活動には、どこか“安定”があった

 彼らが5大ドームツアーを最初に敢行したのが2011年。以来、今度の『GR8EST』ツアーも含めると8年連続になる。アイドルとしてだけではなく“ライブアーティスト”として、人気、実力ともに兼ね備えていなければ、ここまで動員はできなかっただろう。『NHK紅白歌合戦』に初出場したのが2012年で、この頃から彼らは“トップアイドル”と呼ばれるようになった。それでも、2014年のデビュー10周年には、東西のスタジアムで『十祭』というお祭り感満載のコンサートを行い、2015年と2016年は、ドームツアーの他に『リサイタル』と称して、地方のアリーナを回った。2017年は夏フェス“METROCK”に出演し、その後のツアーも、前半はバンド、後半はアイドルとして歌い踊るという、彼らの特性を存分に生かした構成で会場を沸かせた。

 でも、最近の彼らのグループとしての活動には、面白さ、泥臭さ、新しさというよりも、どこか“安定”があった。だからこそ今回、渋谷脱退の報道を受けてから、3月に発売済みだったライブ映像『関ジャニ’sエイターテインメント ジャム』のセールスに一気に動きが出て、5週ぶりにTOP10に返り咲いたし(4/30付オリコン週間DVDランキング)、このタイミングでベストを予約した人も多かったのではないか。あの“友情で結ばれた”記者会見を見て、「関ジャニ∞ってやっぱりいい」と思ったリスナーもいただろうし、逆に報道によって、「こんなに人気のあるグループだったのか」と、あらためて注目した人もいただろう。

◆挑戦してきた関ジャニ∞が守りに入ったら、グループとしての成長はない

 渋谷が関ジャニ∞からいなくなることは、グループにとっては間違いなく大きな痛手だ。実際、脱退発表から10日以上経った今でも、彼が抜けることの喪失感を埋められない人は多い。ただ、音楽性とエンタテインメント性を備えたトップアイドルとして、一定の評価を得たその先に、“ベストを引っさげての5大ドームツアー”というのは安定しすぎて、これまでを考えてみればあまり“彼ららしくない”動きだった。アイドルの寿命が伸びたことで、応援する人は一緒に笑って泣いた思い出を共有できるようになった。とはいえ、毎年何十万人もの人を熱狂させるトップアイドルであればあるほど、“次の一手”にサプライズがなければ、気持ちは冷めていく。客観的に振り返ると、14年間、雑草魂を持って“泥臭いこと”“新しいこと”に挑戦してきた関ジャニ∞がもし守りに入ってしまったら、そこからグループとしての成長はない。“関ジャニ∞のこれから”に注目が集まっている今、あの記者会見はある意味、彼らにとっての“新しいこと”で“泥臭いこと”だったように思えるのだ。

 渋谷が目指す“ロック”に反骨精神はつきもの。グループとしての“安定”が約束される中で、満足したらそこで終わりだと、彼は思ったのかもしれない。彼自身の音楽魂が、アイドルを続けるにはあまりにもロックだったということかもしれない。関ジャニ∞が、まだ全員で楽器を演奏するスタイルではなかった時代、ボーカル渋谷すばる、ギター安田章大、ベース丸山隆平、ドラム大倉忠義による“すばるBAND”がバンドコーナーを担当していた。そこに、錦戸亮がギターで参加することもあった。すばるBANDの代表曲は「ONE」。作詞が渋谷、作曲が安田だ。“戦う事恐れず 心からぶつかれば その先で花は咲くだろう”と歌うこの歌詞のまま、たぶん渋谷は生きている。

◆「やっぱり僕は嘘つけないな、これからも嘘つきたくない」

 渋谷は、戦うことを選んだ。今の立ち位置に安心することなく、今の人気に安住することなく。渋谷が抜けた今、もう二度と「ONE」が歌われることはないかもしれない。でも、会見後初のラジオで、7月からのツアーに渋谷が参加しないことをメンバー自身が話し合って決めたことについて、渋谷はこう話していた。「いくら事務所の人でも、メンバーというか、タレントにしかわからん気持ちはたくさんあって。だから6人の出した結論の思いは、僕は痛いほどわかるつもりなんです」。

 同じく大倉は、生放送のラジオでこうも言っていた。「後から映像を観て、俺子どもだなと、なんだあの会見の態度って思った。でもやっぱり僕は嘘つけないな、これからも嘘つきたくないし。自分らの口から伝えたいというのがあの形になったわけで。色々話したところで、なんかすっきりしたんですね」と。

◆戦うことを選んだのならば、根っこはきっと繋がっている

 7人がそれぞれに戦うことを選んだのならば、根っこはきっと繋がっている。7人はこの決断をきっかけに、もっと面白く、もっと新しく、もっと素晴らしくなるはずだ。案外どんな場所にだって行けるはずだ。「ONE」というタイトルに込められた意味。それが今、“どんなに離れていても心はひとつ”と、そんなニュアンスを持って立ちのぼる。

 先輩たちが切り開いてきた道を辿るのではない。音楽性とエンタテインメント性の両方を“極めた”、唯一無二のアイドルグループへ。7人の本気の戦いが始まった。
(文:菊地陽子)

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