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チャド・マレーン、『ガキ使』黒塗り騒動に持論 海外からの批判の“ズレ”指摘

 「アニメとかクールジャパンとかいろいろある中で、お笑いが一番ポテンシャルを持っているコンテンツ。日本の芸人さんは世界制覇できる力を持っている」。ちょうど20年前の1998年にNSC(吉本総合芸能学院)大阪校21期生として入学した、オーストラリア人漫才師・チャド・マレーンは自身の経験を元に断言する。日本の笑いにどっぷり浸かりながら、その魅力を字幕・翻訳などを通して海外へも発信する様子をまとめた新書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を出版したチャドに、今なお物議をかもしている『ガキ使』黒メイク騒動について聞いた。

『ガキ使』黒塗り騒動を語ったチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.

『ガキ使』黒塗り騒動を語ったチャド・マレーン (C)ORICON NewS inc.

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■発端の批判に感じた“ズレ” 差別の意識なしでも「反論できないのも事実」

 昨年大みそかに日本テレビ系で放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』で、ダウンタウンの浜田雅功が大ヒット映画『ビバリーヒルズ・コップ』(1984〜94年)のエディ・マーフィ演じるアクセル・フォーリー刑事になりきるために、顔全体を黒塗りした姿で出演。これが国内のみならず、『BBC News』や『New York Daily News』、そして『The New York Times』など海外メディアに取り上げられ、さまざまな意見が交わされた。

 今回の黒塗り騒動の前提として、チャドはまずこう切り出した。「そもそも最初にこの問題を取り上げた人は、浜田さんが毎回変な格好をさせられているのが恒例で、今回はたまたまエディ・マーフィだった、というのを理解せずに見ていた。『黒人キャラが必要なら、黒人俳優を雇って』ということを言っていましたが、あれはただ単に黒人に扮していたのではなくて『浜田さんがエディ・マーフィをやる』というボケなんです。そこが伝わっていないのは歯がゆいですね」。

 自身の故郷の話題を引き合いに出しながら、寄せられた批判についても向き合った。「実は去年、オーストラリアでも同じような問題がありました。小学生が自分の好きなフットボール選手のコスプレをしようとして、そのフットボール選手が黒人だったから、自分もブラックフェイスになった。本人は何も悪気はないのですが、バッシングされたんです。浜田さんのケースも差別の意識があるかと言えば、まずないと思いますが、ブラックフェイスを見ると気分を害される方が何百万人といるのも確か。日本のことに置き換えると、海外で原発事故の後に福島のことを笑いのネタにした時に『あれはとんでもない』という批判があったのと同じだと思う。海外の人からしたら、福島はあまりにもかけ離れていて、リアリティーがないから笑いのネタにした。今回も日本ではリアリティーがないんですが、過去に黒人差別という悲惨なことがあったのは事実。だから、そこに対しては反論できないし、ブラックフェイスがそうした悲しい歴史を背負っていることは忘れてはいけないと思います」。

■黒塗り騒動が拡大したワケ 世界の“まなざし”受け入れは「前向きなこと」

 一方、海外では人種差別を含んだ風刺ネタが当たり前のように行われているのも事実だとチャドは指摘する。「海外のお笑いでは、実は人種をネタにすることは普通です。もっとキツいことを言ったり、言われた側がやり返す…というのもお笑いの中でやっている」。ただ、今回の批判の中心となった“ブラックフェイス”については、状況が違うと見ている。「そういう差別ネタが日常茶飯事の中で、たまたまブラックフェイスはアウトだった。言い方は良くないですが、アンラッキーパンチで、金的に当たってしまったということだったと僕は考えています」。

 芸人としての“性(さが)”を理解しているチャドだからこその提言も飛び出した。「本来、芸人は人を笑わせたいので、人を悲しませることは当然避けたい。今回のことも前もって(海外に波及した時のリアクションが)わかっていれば、やっていなかったのではないかと思います。笑われなくなったら、誰も得しないし、それが一番ツラい。芸人は常日頃から『これを笑いとして表現したいけど、こういう風にやったら勘違いされそうだから、ちょっとやめとこう』っていうことを考えています。自分たちの笑いが海外まで広がるとなれば、知らないことがもっと増えてくるから、それをもっと気をつけながらやっていくというのは、自主規制という風なネガティブなことではなくて、より多くの人を笑わすために前向きなことだと思っています」。

 同書の中で触れられているが、『ガキ使』の人気企画「サイレント図書館」が、海外でも大きな反響を呼び、今ではアメリカ、スペイン、ロシアで毎週、現地制作の番組が放送されている。日本の笑いのコンテンツ力は世界にも誇れるものだと、チャドは言葉に力を込めた。「松本さんが作った『サイレント図書館』の設定が、世界各国で放送されていることからもわかりますが、日本の芸人さんやバラエティー番組はものスゴくポテンシャルを持っています。今回の件は、悪意がないだけに不本意な形で広まってしまいましたが、このままだと報われないので、これをきっかけに『ガキ使』がどういった番組なのかっていうことに注目が集まるといいなと思います」。

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