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葵わかな、『わろてんか』撮影は「挑戦と発見の日々」

 NHK連続テレビ小説『わろてんか』でヒロインの北村てんを演じている葵わかな。笑顔あふれる少女から、元芸人の恋人と駆け落ちして夫婦で寄席を開き、やがて日本で初めて“笑い”をビジネスにした女性に……という展開のなか、大役に抜てきされた彼女自身の女優としての成長も見て取れる。新年から後半に入るに当たり、朝ドラの撮影の渦中で思うあれこれを聞いた。

NHK連続テレビ小説『わろてんか』でヒロインの北村てんを演じる葵わかな (C)NHK

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――オーディションで『わろてんか』のヒロインに決まってから、方々で「大変だよ」と言われたかと思いますが、実際の大変さは予想と比べてどうでした?
葵 確かに撮影のペースは早くて、寝る時間が少ないとか休憩時間があまりないとか、体力的な大変さはありますけど、ペースがつかめたら意外と元気にやれてます。毎日ヘトヘトでも「わーっ! ムリだー!」みたいな状態になったことはなくて。それぐらい大変なことがいつ起きるか、ドキドキしていたんですけど、ドキドキしたまま7ヶ月経って(笑)、このままあと3ヶ月過ごせそうです。

――体が朝ドラ仕様になったような?
葵 休憩時間が25分あったら、10分でごはんを食べて10分寝る、みたいなことが、電気のスイッチを入れるみたいにできるようにはなりました。

――1日のうちで、てんでいる時間のほうが長い毎日かと思いますが。
葵 長く役をやらせて頂いてると、どっちが自分でどっちがてんちゃんなのかわからなくなってきますけど、私はそれは良い傾向だと思っています。普通のドラマと違うのは、撮影が10ヶ月あって、最初から最後まで全部経験しているのは私しかいなくなるんですね。監督も2週間分演出されたら次の監督に変わるので。なので演技の方向性もディスカッションしながら、最後の判断を監督だけでなく、演者にも委ねられてい頂けるのが朝ドラならではだと思います。

――流れを一番体感しているのが役者だから。
葵 たとえば、てんちゃんがどんな母親になっていくかを監督や脚本家さんに加えて、自分でも想像して膨らませていく。役を演じる責任が1コ増す気がしますけど、すごくやりがいを感じます。

――実際、てんは自然に変わっていってるように見えます。結婚して子どもができて、生活感みたいなものがにじみ出てきたり。そこも演じるうえで意識するところですか?
葵 声のトーンやしゃべり方、動きの所作の感じはもちろん考えますけど、逆に、若い頃のてんちゃんをすごく若く作ってました。今は監督と一緒に作った元気ハツラツなてんちゃんをどんどん剥がしていってます。

――最初の頃のてんは天真らんまんな笑顔を見せてました。台本には“鈴のような笑顔”などと書かれていたそうですが。
葵 「それはどういうふうに笑うの?」と思いますよね(笑)。最初は今以上に“笑顔”がキーポイントになっていたので、難しいなと思いつつ、いろいろ考えてやってました。最近はただ天真らんまんではなく、家族を慈しんだりする笑い方が自然に出ればいいなと。あとは何より思い込みです。「自分は母親だ」「この子が私の息子だ」と思い込むことが一番大事だと感じているところです。

――実年齢19歳で、母親役をやるのは大変では。
葵 自分が母親であることにちょっとでも迷う気持ちがあると、それは絶対お芝居の綻びとして画面に出てしまう気がするんです。息子の隼也が大きくなって、演じる成田(凌)さんは私より5歳上なんですよ。私は現場では最年少。それでも「私がこの子のお母さんなんだ」と思い込むことによって、距離感や目線、言い方といったものに「これで当然」という雰囲気が出れば、観てくださっている方にも違和感なく伝わるのではと思います。

――夫の藤吉(松坂桃李)との空気感も、結婚する前と暮らしを営むようになってからで変わりましたよね?
葵 それまでは藤吉さんは正義で、やることに間違いはないと本当に思っていたんですけど、結婚して環境が変わると不満も抱くようになって。でも、それをちゃんと言えて、自分の陽だけでない陰の部分も見せられるのは、夫婦として一緒に生きていくうえで大事なことだし、より絆が深まったんだと思います。

――そうなんでしょうけど、わかなさんは実際に結婚生活を経験したわけではないですよね。そこも思い込みで?
葵 それに関しては、演じてきた積み重ねがあったので。いきなり結婚したところから始まったお話でなく、出会いがあって、2人で家を出ると決めて、励まし合いながら夢を追いかけてきた過程があっての結婚だったから、「どうしよう?」とかは全然なかったです。

――つまり、役として生きてきたのが実際に体験したのと同じだったわけですね。「お母さんってどうなんだろう?」といったことは、人に聞いたりもしました?
葵 まず子どもを抱いたことがなかったので、抱っこやおんぶの練習をしたり、慣れるために1歳の隼也と触れ合ったりしました。あと、7歳の隼也の本当のお母さんに「まだ一緒に寝たりしますか?」「お風呂に入ったりは?」とか聞いたりしてましたね。

――小さい頃の隼也を膝の上に乗せてごはんを食べるシーンもありました。
葵 不思議と「守ってあげなきゃ」という気持ちになりました。現場ではなるべく隼ちゃんの近くにいて見てようと思ったり、リハーサルで人形を相手にしていたときとは全然違います。てんちゃんの扮装をして、おうちに藤吉さんがいて、隼ちゃんがいたら、意識しなくても家族になれました。

――自分の母性本能に気づいたりも?
葵 私はもともと子どもがすごく好きで、このお仕事をしてなかったら、保育園の先生になりたかったくらいなので。どの年代の隼ちゃんとも、遊ぶのは楽しかったです。子どもだから泣いちゃうこともあれば、ふとしたところで笑ってくれることもある。そういうことも経験しながら、最初は母親を演じるのが不安だったのが、周りの方が自分を母親にしてくれているように感じました。

――朝ドラはヒロイン役の女優の成長物語とも言われますが、撮影の渦中で鍛えられてる感はありますか?
葵 それはもう、挑戦と発見の日々というか。これだけ長い撮影を経験するなら、きっといつか「なるほど。こんな感じか」とわかる日が来るのかと思っていたんですけど、まだ来てません(笑)。

――これまで演じてきたなかで、特に課題が多かったシーンはどの辺ですか?
葵 う?ん……。どこですかね?

――たとえば、藤吉の実家の北村家でいけずをされたのは、朝ドラのひとつの定番でしたけど、てんは一向に明るかったですよね。それまでお嬢さん育ちだったのが、いきなり女中になったにも関わらず。その辺の心境などは考えました?
葵 てんちゃんはたぶん、ものすごく心が強い子なんでしょうね。どうしていつもニコニコ笑顔でいられるのか考えると、いけずをされて傷つくマイナスな感情を飲み込んで、自分のなかでプラスに変化させることができるから。その強さがてんちゃんの本当にすごいところだし、彼女の本質的なものじゃないかと思いました。もちろん落ち込むこともあるけど、それもプラスに変えられる器の大きさというか、心の広さというか。そこは本当に尊敬します。

――なるほど。
葵 そして諦めが悪いというか、のめり込み型なんですよね。でも今思うと、のちにあれだけ大きな会社を作って新時代を切り拓いていくような人が、普通であるわけがなくて。藤吉さんも突っ走って、いろいろな人に迷惑もかけてますけど(笑)、それぐらい馬力がないと、北村笑店は大きくならなかっただろうし、そんな藤吉さんについていけるてんちゃんも、よほど奇抜な人だったんじゃないかと。あの頃のてんちゃんは「みんなを笑顔にしたい」というのと「藤吉さんが好き」という二つの気持ちだけで立っていたんですよね。そこまで思い込む力、のめり込む力が異常なくらいあったから、寄席を始めて大きくすることができた。最初は普通の明るい子だと思っていたてんちゃんだけど、実はかなり変わった子だったんじゃないかと(笑)、最近すごく感じます。

――そういうのめり込む力は、わかなさん自身にもあるもの?
葵 うーん……。てんちゃんはすごく直感型だと思うんです。私は結構考えるタイプなので、どちらかというと演じていて見習う部分が多いです。怖がらずに自分を外に向けていくのが大切だと、痛感しました。

――わかなさんはもともと、お笑いに関しては?
葵 あまりテレビを観なくて、こだわりがあったり、好きな芸人さんがいたわけではないです。『わろてんか』をやらせて頂くに当たって、初めて寄席に落語を見に行ったり、なんばグランド花月に行ったりして、「面白いな」と思いました。一緒にやらせていただいている芸人さんたちが、どんな姿勢で笑いに取り組んでいるか、垣間見える瞬間もあって。人を笑わせるのは本当にすごい才能だと思うし、カッコイイです。

――てんは自分が人を笑わせる役どころではないですが、コメディー的なお芝居をやってみたい気持ちもあります? 深夜ドラマの『&美少女』で演じた妄想女子もすごく面白かったですが。
葵 ありがとうございます。コメディは楽しくて好きですね。真摯に取り組まないと人を笑わせることができないのは、今回の現場で身に染みてますけど、お芝居でなら挑戦したいです。『わろてんか』の後半でも、そういう要素を出していけたら。

――藤井隆さんが演じる芸人の万丈目と座布団の席の取り合いをするちょっとしたシーンも面白かったです。
葵 あれも楽しかったですね。笑いをこらえるのに必死でした(笑)。

――新年からの『わろてんか』も、クライマックスに向けて盛り上がりそうですね。
葵 安来節から始まって、各週にゲストの方が来て、カラーが変わるのが新鮮でした。1月の放送で大きな節目を迎えて、新章が始まるくらい、雰囲気がガラッと変わります。いよいよ女社長として手腕を振るうてんちゃんも見えてきます。最初からうまく行くわけでなくて失敗もありつつ、ハラハラしながら観ていただけたら嬉しいです。

(取材・文/斉藤貴志)

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