世界第2位の映画市場である「中国」を重視した米ハリウッド映画が増えている一方で、中国のエンターテインメント業界がその大きな資本力でハリウッド進出を加速させている。今や中国ドラマは、映画同様の撮影手法で大規模ロケを行い、有名デザイナーが衣装を手がけ、CG処理にお金をかけるのは当たり前。ドラマ製作にもハリウッド並みの巨費が投じられ、世界をもターゲットにできる完成度の高い作品が次々と生まれている。

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　2010年に放送され大ヒットした『三国志 Three Kingdoms』では「製作費25億円」で大きな話題を呼んだが、その翌年、11年『水滸伝』では55億円と一気に倍増、15年『武則天』では56億円が投じられ、そのスケールは年々大きくなっている。

　昨年、中国で放送され大ヒットした時代劇大作『ミーユエ 王朝を照らす月』（以下、『ミーユエ』）の製作費は58億円。11年末より12年にかけて放送された『宮廷の諍い女』のスタッフ・キャストが再結集し、歴史小説をドラマ化した同作は、時代考証に基づいて秦が中国を統一する以前の春秋戦国時代を再現。中国史上初の女性政治家の生き様を迫力のアクションと華やかなロマンス満載で描き、昨年のドラマ最高視聴率を獲得、インターネット視聴の累計再生数も最終回配信時点で200億を突破する歴代記録を更新した。

　潤沢な製作費が作品のクオリティを上げ、大規模なヒットと莫大な利益を生む好循環で、世界からも注目されるようになった中国ドラマ。その鍵を握っているのが、知的財産権に関する法律の整備だ。

　中国といえば「著作権無視の国」というイメージもあるが、自分たちで作品を作りはじめて、ようやく気付いたようだ。中国では21世紀に入ってから、知的財産権に関する法律が整備され、近年その保護政策も強化されてきた結果、多くの若者に支持されるヒット小説やゲームなどの知的財産（IP）を活用したドラマが、大きな流行を巻き起こすようになっている。

　『ミーユエ』もその一つ。放送前から宣伝タイアップが大々的に行われ、作品にちなんだ服飾品、酒、電化製品、ゲームアプリなどが販売された。1992年まで知的財産権を守るベルヌ条約に加盟しておらず、偽物が横行していたひと昔前の中国ではできなかったビジネスモデルだ。『ミーユエ』はこれら商品化も含めた版権収入だけで約58億円の製作費を、放送前に回収できたのではないかといわれている。

　“IP（知的財産）ドラマ”の成功はさらなる投資を呼び、ドラマのクオリティーの底上げにもつながっている。巨額の制作費を武器に作られた中国ドラマは、国内だけでなく世界での競争力を高め、『ミーユエ』は日本、台湾、香港、シンガポール、マレーシア、韓国、ベトナム、カンボジア、タイといったアジア地域だけでなく、アメリカ、カナダの北米地域にも輸出された。日本でもここ数年、買い付けされる中国ドラマの本数は時代劇を中心に増加傾向にあり、新たな潮流が生まれそうだ。

　『ミーユエ 王朝を照らす月』は、10月3日よりDVD-SET1 （第1 回〜12 回収録）の発売・レンタルがスタート。DVD-SET2 （第13 回〜24 回収録）は11月2日。以降、SET7まで順次リリース（全81回）。