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押切もえ、障がい者交流で気付かされたこと 壁を作っていたのは自身から

 文筆業でも活躍するモデル・押切もえ(37)が自身初の児童書『わたしから わらうよ』(ロクリン社)を発売した。鳥取県でハンディキャップを抱える人との交流で経験し、学んだことをまとめた1冊は、児童書ではあるが、テーマは全ての人に共通する人と人との間に存在する“壁”。押切が障がいを持つ人から学ばされた、誰もが経験したことがある“壁”を乗り越える方法とは。

児童書『わたしから わらうよ』の執筆理由を語った押切もえ (C)ORICON NewS inc.

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■『あいサポート運動』が児童書執筆のきっかけ

 物語は素直に自分の気持ちを伝えることができない小学校3年生の女の子・桜が、鳥取県の祖母の家に1人で行くところから始まる。戸惑いと不安を抱えながらも海が大好きな少年・海斗や、障がいのある人が働くパン店『ぱにーに』で車椅子のお兄さんと出会ったことで、桜が「『みんなとちがう』なんて思わなくていいんだ」と気付き、成長するひと夏のできごとをつづっている。

 児童書を書こうと思ったきっかけは、押切が2014年から参加している『あいサポート運動』だという。「『あいサポート運動』で鳥取県に初めて行きまして、ハンディキャップのある方、障がいのある方と好きな絵を通して1つの作品を作ろうという企画があった。そこで私自身もたくさんのことを教えていただいたり、みなさんの絵に刺激を受けた。好きなことをやっていくことで誰かの役に立てる喜びを知りました」。

 15年には『あいサポート大使』にも就任。「おこがましい気持ちもあったんですが『あいサポート運動』は自分が何をできるのかを探していく、ちょっとでもいいから何かできることを実践しようという活動。なので、それだったら自分も積極的にできるかもしれないと思って、お受けしました。そこで、障がいを持った方が働いているいろんな仕事場を見学させてもらい、そういう触れ合いの中で心に残る出会いとか言葉があったので1冊の本にしようと思った。それが1番の始まりですね」と振り返る。

■「自分から、壁を作らない」という言葉の衝撃

 物語は他人との間に壁を感じている少女・桜の成長に主軸を置いており、桜の背中を押す一言に「自分から、壁を作らない」というせりふがある。これは実際に押切が、大きなハンディキャップを抱えながらも在宅で動画編集やイラスト、デザインなどの仕事をしている山本拓司さんから言われた言葉だという。拓司さんは筋ジストロフィー症で、指先や唇しか動かすことができない。押切は「拓司さんに言われた『自分から壁を作らないようにしている』という一言に、すごくハッとさせられました。それは拓司さんの役に立ちたいと思っている側からしても、すごくうれしいことですし、拓司さんも自分が壁を作ると始まりが遅くなるというのは実感しているみたいです。それは学ばされましたね。それをお互いがやったら早く深くコミュニケーションがスムーズになるんだろうな、と思いましたね。作中にも、そのせりふは出しています」。

 かつて自身も壁を作ってしまうタイプだったことも作品に影響を与えた。高校時代、自分の理解者以外とは疎遠な関係だった。「私も桜と似ている。恥ずかしい話、高校時代とかは誤解されても分かってくれる人だけが分かってくれるだけでいいと思ってました。友人関係も狭く深くで期待もしないし、努力もしない人間でした。私のことを派手な人だと思っているだろうけど、それ以上はいいやって。弁解もしなかったですね」。モデルの仕事を始め「自分の内面をもっと出していこうと思った。そこで自分から変えていこうという努力をするようになりました。不器用なので、もう30代後半ですけど4、5年ぐらい前までこじらせてました。すごく遠回りしちゃいましたね」と自身の経験を素直に明かした。

■自分のためではなく「誰かのために書く」 拓司さんのSNSも励みに

 自身の弱かったところを桜と重ね執筆した児童書『わたしから わらうよ』。「子どものころに感じた新鮮なことをできるだけ織り込んだ。擬音語、擬態語も思うまま、音のままに考えすぎずに書きましたね」と話す。カエルの鳴き声を「ぐぉーぐぉー」と表現したり、押切独自の感性で思ったことや感じたことをそのまま表現した。さらに「田舎に行くっていうのも私の思い出。山形県におばあちゃんの家があって、そこに行くのはすごく楽しみだけど、ちょっと夜は怖いとか、そういうところを書きました」とも語った。

 一方で障がいをテーマとして扱うことに葛藤もあったというが、それも拓司さんらの反響で書いてよかったと思えるまでになった。「障がいのことを書くというのが提案としてあったので、どこまで書くのか、とまどった面はあります。でも、拓司さんも読んでくださって温かい感想をくださった。本当に書いてよかった。アイデアが浮かばなかったり、次の場面が思い浮かばなかったとき、この本は鳥取のみなさんとか誰かのために書いているという意識が強かったので書けました」。拓司さんをモデルとした登場人物がキーになっており、拓司さんも「私がモデルです」と自身のSNSに喜びの投稿もした。押切は「励みになりますね」と感謝した。

 私生活では昨年の11月にプロ野球・ロッテの涌井秀章投手と結婚。「思っていた以上に、すごく楽しい。穏やかで。お互いに励まし合えるのは、とても心強いですね」と幸せを感じている。「心身ともに健やかでいられる。私の場合は夫を支えるという役割もある。独身だったら倒れてでも仕事をするとかっていう日もあった。だけど今は、そういうことはやっちゃいけないと思っている。体調管理をしっかりして主人の役にしっかり立ちたい」と献身的にサポートもしている。

 また、得意の料理を生かし、アスリートフードマイスターの資格も取得。インスタグラムには栄養バランスの考えられた料理の写真が多くアップされている。「登板の前はエネルギーを効率よく燃やすものとかを考えて作ったりしています。もともと栄養のこととかを考えるのが好きなので、誰かの役に立てるというのはいいですね」と料理の時間も楽しんでいる。しかし、勝負の世界に生きるアスリートのため、結婚するまでは不安もあった。それでも「もともと主人もしっかりしている方。何から何までやってというタイプではないので自立している。ゲン担ぎのようなものもまったくしません」と明かし、お互いに思いやる夫婦像を築いているという。

■桜ちゃんと同世代の女の子に読んでほしい

 児童書という分野に挑戦。読んでほしい人について「まずは桜ちゃんと同じ小学3年生の女の子に。すごく多感な時期だと思うんです。私も自発的に何かをする時期だった。そういうときに人との違い、相手との違いを気付いて何かを感じたりいろいろ考えてほしいです」と語った。さらに「好きなことを一生懸命やって誰かの役に立ったり、喜んでもらうっていうのは年齢も性別も問わずに大切で尊いこと。そんな風に思ってもらえたら。働いていて自分の仕事が無意味に感じて疲れている女性とかに、ぜひ読んでいただきたい」と悩みを抱える全ての人に向けてメッセージを送った。

 「自分から笑う、心を開く。そうすると世界は変わってくるかもしれない。タイトルは、まず自分からやってみましょうって意味なんですよ」。押切が児童書で書いたことは、さまざまなコミュニティーで関係を改善する可能性を秘めている。

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