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聴取率16年連続No.1・TBSラジオのネット戦略 「スマホでradiko」革命と書き起こしの是非

 「〇〇はオワコン(終わっているコンテンツの略)だ」という言葉をよく耳にする。それまでの影響力の大きさゆえか、少し陰りが見えると“オワコン”認定され、下降に拍車がかかる。ビデオリサーチが調査した首都圏(東京駅を中心とした半径35キロ圏内)を対象にした、ラジオ個人聴取率の4月版がこのほど発表され、過去最低に近い5.6%だった。果たして、ラジオはオワコンなのか。同調査で96期(16年)連続No.1(6月版も含む)を獲得し続けているTBSラジオの番組作りに携わる橋本吉史プロデューサーと、デジタルマーケティング担当の萩原慶太郎氏に話を聞いた。

聴取率16年連続No.1!TBSラジオのネット戦略に迫る(写真はホームページより)

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 ここ数年のメディア環境の劇的な変化は、ラジオにとってむしろ“追い風”だと萩原氏は分析する。「生活スタイルから見たら、これからはラジオが活かせる時代だと思っています。テレビの場合の呼びかけは“みなさん”でもラジオは“あなた”。個人に向き合って、放送局対個人とのコミュニケーションそのものをコンテンツにして、ライブで作り続けたノウハウは60年以上。メディア自体というより積み上げた勘と経験は、今のスマートフォンメディア全盛時代に強みを発揮するのでは」。一方の橋本氏は、作り手として“チャンス”と“危機感”の両方があると分析する。

 「スマホが出た時は、僕もチャンスだと思っていました。今までは『ラジオが聞かれないのは、電波が入らないからだ』と言っていた時期が長かった。でも(民放ラジオ局の放送をインターネットで聞ける)radikoができ、1週間以内なら無料で聞き返せるタイムフリー機能もできたことで、そういう言い訳が一切通用しない。これからラジオが聞かれていない理由は、認知をされていないか面白くないかの2つになるから、番組作りはよりシビアになる」。

 そんな中、大事になってくるのがネット戦略。橋本氏が“名誉プロデューサー”という形で携わる『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(毎週土曜 後10:00)を例に挙げたい。番組の公式サイトでは、コーナー紹介やコラム、次週予告などさまざまな記事を配信しているが、特筆すべきは、パーソナリティーの宇多丸による映画評コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」の全文書き起こし。文字起こし職人のみやーん氏が書き起こしを担当し、放送の音源を貼り付けた上で、放送中に登場した映画や雑誌などの参考資料も紹介。BGMのタイミングや簡単な補足説明も行っており、読みやすさを意識した内容となっている。

 これまでの書き起こしといえば、もっぱらリスナー側で“非公式”に行われていたもの。さらに範囲を広げると、ラジオで発言した内容を“要約”して配信するネットニュースもそこに含まれるだろう。とりわけ後者は、刺激的な見出しと発言の意図的な切り取りによって発言の真意が十分に伝わらないと、パーソナリティーやリスナーから不評を買うこともある。公式での書き起こしが行われることで、こうした問題が解消されるが、番組の作り手の立場からすれば、書き起こしで満足してリスナーを減らす懸念もある。橋本氏によると、局内でも意見が2分しているという。

 「いろんな考え方があって、正直社内でも意見が割れています。起こしを書くこと自体は悪いことではないのですが、読んでもらって完結なのか、そこからオンエアも聞いてもらいたいのかということを決めていかないといけない。反響としては、サイトのPVが上がったり、映画評の記事をいっぱい読んでくれるとかはあります。ただ、それが聴取率につながるのかというと、決してそうではないので、それでよしとするのかっていうのがまだ決まっていない。僕たちもやるからには結果を残さないといけないと思っています」。

 サービスは各番組スタッフが任意で行うため、同局のサイトを見ると、全文書き起こしをしているものから簡単な紹介文に音声配信を貼り付けたものまで、番組ごとに取り組みにバラつきが見られる。これも、ネットとの適切な距離感を測っている過渡期ゆえだと橋本氏は語る。「ラジオをもっと良くしていきたいという方向性は一致していますが、番組内容の書き起こしまでやった方がいいという派と、そちらにスタッフの作業時間を費やすよりも、番組作りの密度を上げていく方が大事だという派で議論があるので、そうした状況になっています」。

 一方、萩原氏は番組を放送する土壌(プラットフォーム)を作る立場から“書き起こし”の意義を説く。「テレビ番組はいくら事後宣伝しても、スマホに(番組視聴までを導く)スイッチはない。でも、ラジオにはradikoがあって、タイムフリーというすばらしいデバイスサービスも手に入れた。だから、書き起こしも最終的には聞くっていう行動に結びつけばいいのかなと感じています。ネットとの親和性ということでいえば、未来はそこにあるんじゃないかという気がしています」。

 明るい話題をもうひとつ。星野源がニッポン放送のレギュラー番組『星野源のオールナイトニッポン』(毎週火曜 深1:00)のパーソナリティーとしての活動を評価され、このほど『第54回ギャラクシー賞』のラジオ部門「DJパーソナリティー賞」を受賞。他局の快挙ながら、橋本氏はラジオ界の未来につながると声を弾ませる。「今、星野源くんがオールナイトニッポンをやっているってすごく意味がある。発信力があって、ラジオにものすごく愛情がある人を、人気者を使うのが上手なニッポン放送さんが使う。彼のおかげでラジオ体験をしている人もたくさんいるので、それもひとつのPRだと感じています。ただ、星野くんが聞いてきたラジオ番組の中には、TBSラジオも多いんですが、それはひとまず置いておきましょう(笑)」。聞く環境もパーソナリティーも充実している今こそ、“ラジオ”の攻勢の時だ。

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  • 聴取率16年連続No.1!TBSラジオのネット戦略に迫る(写真はホームページより)
  • TBSラジオのネット戦略について語ってくれた(左から)橋本吉史プロデューサーと、デジタルマーケティング担当の萩原慶太郎氏

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