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原作者・空知英秋氏が語る『銀魂』実写化への葛藤、連載終了後の展望も

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の人気漫画『銀魂』。現在、単行本は69巻まで刊行され、幅広い世代から大きな支持を集めている。テレビ・劇場アニメ化もされた本作だが、今回、初めて実写映画化されることとなった(7月14日公開)。様々な漫画が実写化されている昨今だが、人気作になればなるほど、ファンの反応は様々。『銀魂』原作者である漫画家・空知英秋氏に、実写化に踏み切った心境を聞いた。

(左から)菅田将暉、小栗旬、橋本環奈 (C)空知英秋/集英社 (C)2017映画「銀魂」製作委員会

(左から)菅田将暉、小栗旬、橋本環奈 (C)空知英秋/集英社 (C)2017映画「銀魂」製作委員会

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◆実写化には「完全にノータッチ」、漫画読者への配慮も

 これまでにも実写化の話はありながら、一度も実現してこなかったという『銀魂』。今回のオファーを受けた理由には、コメディの鬼才、福田雄一監督の存在が大きかったという。

 「福田さんの『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『勇者ヨシヒコ』シリーズ(同系)を観て、この方なら実写化もイケるんじゃないかと思ったんです。『勇者ヨシヒコ』が始まるときは、エラいドラマが始まるなぁと思っていたのに、実際に観たらすごく面白かった。あえてコスプレ感を出しながら、違うところに面白さを求めるやり方をしていたんですよね。そんなことがあったので、担当編集者から『福田監督で提案がきている』と聞いたときは、福田さんなら実現するかもと思いました」

 とはいえ、最初から乗り気だったわけではなく、まずはそれまで『銀魂』を応援してきた読者のことを考えたそうだ。

 「漫画は、読者が登場人物へと感情移入するものじゃないですか。そうなっているところに、『実は銀さん(主人公・坂田銀時)は小栗旬くんです』と言われても、中には反対する人も出てくるでしょう。読者にもそれぞれの銀さん像があるだろうから、あまりイメージを壊したくないというのが正直な気持ちでした。この気持ちは、ほかの漫画家さんも同じだと思います。難しいですよね、実写化される作家のスタンスって」

 原作者としての葛藤もありながら、実写化について空知氏は「完全にノータッチ」と言い切る。「変に関わっても、ダメ出ししたくなるし…(笑)。やりたいように楽しく作っていただいたほうが、いいものが出来ると思うので」と、自ら見込んだ福田監督にすべてを一任。実際の仕上がりについても、「面白かったです。福田さんが実写流のアレンジをたくさん加えてくださったので、そこはすごく楽しめました。キャストの皆さんも再現度が高くて、ホントに良かった」と満足しているようだ。

◆主人公のイメージは『探偵物語』の松田優作と『ケイゾク』の渡部篤郎

 このように、実写化の期待も高まる『銀魂』だが、そのベースとなっているのはもちろん原作漫画である。同作は、ストーリーやギャグも魅力ながら、個性豊かなキャラクターが寄与するところも大きい。なかでも、なんでも屋としてダラダラした生活を送りながらも、実は滅法強い主人公・銀さんは、これまでにない一味違ったヒーロー像。このキャラクターはどのようにして生まれたのだろうか。

 「僕の中では、『探偵物語』(日本テレビ系)の松田優作さんや、『ケイゾク』(TBS系)の渡部篤郎さんのイメージ。『ケイゾク』での渡部さんの芝居は、だるい雰囲気がすごくカッコ良くて、何を考えているかわからない怖さもあって。そんな感じにしたいと思い、銀さんを描き始めました」

◆キャラ全員に自身の要素を投入、「自分を出さないと漫画家としてはダメ」

 そして、銀さんは「読者の先を走っている先輩キャラ」なのだという。“読者の先”といえば、『銀魂』の単行本には毎回、空知氏が読者の質問に直筆で答える「質問コーナー」が存在する。漫画に関するものもあれば、時には読者の人生相談のような内容もあり、ある意味、空知氏自身が“読者の先”を行く先達として、若い読者を導いているようにも見えるが…。

 「僕が考えているのは笑いをとることだけで、マジメなことは何も考えていません。もっともらしいことを書いていても、落とすためのフリだから。感激している人には申し訳ないとは思いますけど(笑)」

 とはいえ、「実は、胃が痛くなるくらいめちゃくちゃ考えて、時間をかけて書いています」と、あくまで真剣。「もう、なんでこんなもの始めちゃったんだろう、と思うけど。やめたいけど、やめたら読者から文句を言われるんですよ(笑)」。大真面目に笑いとりながら、それが感動に繋がったりもする。そして時にボヤく…。そのスタンスは、どこか銀さんにも通じるものがあるのかもしれない。

 「キャラクター全員、どこかしらに自分の要素は入っていますが、僕はあんな変態じゃないです(笑)。ただ、自分のエキスを何も入れないと、単なる創作上のキャラクターになってしまうので、そこは地に足の着いた何かが必要。でもそうやって自分を反映しているうちに、“この作家、絶対に変態だよな”と、全部がバレちゃうんですよね。逆にそれくらい自分を出さないと、漫画家としてはダメだと思っています」

◆原作連載もクライマックスへ「すぐに次の漫画を描き始める」

 そんな『銀魂』も、連載では最終章に入り、いよいよ佳境に。
「なんとなく終わりの時期は決めてるんだけど、どんどん伸びていて。最終話も、細かいところ以外は、もやっと決まっているんです。今まで横道にそれてきましたが、最初から決めていたゴールに向かって描いてますね」

 長く続いた連載が終わったら…そう尋ねると、空知氏は少し考えて答えてくれた。

 「終わってすぐは遊ぶでしょうけど、漫画家なんて漫画を描いてないと、社会の役にひとつも立たないゴミですから(笑)。唯一、社会と接点を持てるのが漫画。たとえ遊んでいても、どんどん孤立感が深まり、すぐに次の漫画を描き始めると思います」
(取材:今 泉)

関連写真

  • (左から)菅田将暉、小栗旬、橋本環奈 (C)空知英秋/集英社 (C)2017映画「銀魂」製作委員会
  • 『銀魂』原作者・空知英秋氏の自画像

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