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ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』ひも解かれる宮崎駿監督のすごさ

 東京・三鷹の森ジブリ美術館で27日より、新企画展示『食べるを描く。』がスタートした(来年5月までを予定)。“ジブリ飯”という愛称もあるほど、スタジオジブリ映画に欠かせない“食”のシーンに着目。宮崎駿監督が「食事のシーンを入れると映画が豊かになる」とこだわってきたおいしそうな食べものや食事のシーンが、どのようにして描かれていたのか、その秘密をひも解いていく。

三鷹の森ジブリ美術館・新企画展示『食べるを描く。』展示室入口のメニューサンプル(C)ORICON NewS inc.

三鷹の森ジブリ美術館・新企画展示『食べるを描く。』展示室入口のメニューサンプル(C)ORICON NewS inc.

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 スタジオジブリの作品は、日常を丹念に描き、日々の営みをきちんと表現していることが特徴の一つにあげられる。そのような日常描写の中で、多くの人の記憶に残るものが食事のシーンだ。人間は生きるために食事が欠かせないということもあるけれど、ただそれだけはない。

 『天空の城ラピュタ』の中でパズーとシータが“目玉焼きパン”を食べるシーンでは、2人が同じものを一緒に食べることで心を通わせあい、『千と千尋の神隠し』で千尋がハクにもらった“おにぎり”を食べるシーンでは、困難に立ち向う内なる力がわいてくる千尋の感情の変化を描いている。何気ない食事のシーンにも物語の演出上重要な意味が込められていることもあって、印象深いものとなっている。

 ただ、数あるジブリ作品の中でも「宮崎駿監督が描く食事のシーンは特別においしく見える」と強調するのは、今回の企画監修を手掛けた宮崎吾朗氏。食べものから湯気が立ち昇り、あたたかそうであったり、ふんわりと柔らかそうであったり、登場人物がいかにもおいしそうに食べている。それを可能にしているのが、“作画”の力だ。「細かいことをきちんとやる。それが難しいんです」と吾朗氏。

 例えば、『紅の豚』のフィオがビン入りのレモネードを飲むシーンの原画には、ビンに対して、動画・仕上げのスタッフに伝わるように、塗り分けの指示が明記されているのだが、その指示が細かい。「レモネードの色」「(手の影が入った)レモネードのカゲ色」「ビンのむこう側にみえるラベルと手の色」「(瓶の底の)ビンの厚みの色」「(瓶の底の)濃いカゲ色」「(瓶の底の)レモネードカゲ色にビンの厚みを加えた色」…と、ビンだけに何色もの色を使い、さらにレモネードの水面を揺らすように指示を加えている。手で持つことによって生じる、水面の微妙な揺れを加えることで、レモネードが生き生きと「ある」ように見えてくる。

 『ハウルの動く城』といえば、ベーコンエッグ、それも調理するカットが印象的だが、その原画と作画監督による修正も、素人には何が何の指示かよくわからないくらい細かい。ベーコンが焼ける際の油の気泡だけを描いた原画もあり、フライパンに割り入れられる卵の原画とは別々に描かれていたことにも驚かされる。場面写真と原画を見比べてみると、熱せられた卵の白身が、透明から不透明に変わる様子まで、宮崎駿監督からの指示が細部にまで及んでいて、こんなにも手間をかけて描いていたのか、と圧倒される。

 ちなみに、ジブリ作品に登場する食べものは、身の回りにあるごくありふれたものばかりで、中でも多いのがベーコンエッグ。吾朗氏によれば、「宮崎家で実際にベーコンエッグを良く食べる」だけでなく、「洋食と和食のちょうど間のような料理で、かつ目玉焼きを知らない人はいない。白と黄色で描けてシンプルだが、画の中で目立つ配色」であることが理由なのだという。

 展示室の入口には、印象的な食事シーンの画面写真と、メニューサンプルを陳列。中に入ってもテーブル席が設けてあり、まるでレストランのようになっている。着席してメニューブックを開くと、壁の展示パネルの縮刷版がファイルされており、じっくり解説を読むこともできる。

 食事を“作る”シーンも取り上げており、『となりのトトロ』のサツキとメイの草壁家の台所と、『天空の城ラピュタ』のタイガーモス号の厨房を実物大で再現。サツキやメイ、シータになった気分で、改めて映画の世界を体感することができる。草壁家の台所にはまっくろくろすけ(ススワタリ)もいるので探してみよう。

 同館への入館は日時指定の予約制。さらに夏休みシーズン(7月分・8月分)は“先行抽選販売”を実施しており、7月分はすでに受付を開始している(5月31日午後11時59分まで)。8月分は6月25日正午から6月30日午後11時59分まで。

 入場時間は1日4回(前10:00/正午/後2:00/後4:00)。申し込みはインターネット(http://l-tike.com/ghibli/ ※無料のローソンWEB会員に登録が必要)、または電話(0570-084-639※発信者番号の通知が必須)。1申込み6枚まで。同一日時での複数エントリー不可。決済は、ローソン店頭決済、またはクレジット決済となる。

関連写真

  • 三鷹の森ジブリ美術館・新企画展示『食べるを描く。』展示室入口のメニューサンプル(C)ORICON NewS inc.
  • 『紅の豚』より、フィオがレモネードを飲むシーンの解説展示パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 『食べるを描く。』は2018年5月まで開催予定(C)Studio Ghibli (C)Museo d'Arte Ghibli
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。レトロなレストラン風に設えられた第一室では、各作品ごとに代表的な食事のシーンを取り上げ、展示パネルで解説している (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。テーブルの上に置かれたメニューブックで、各展示パネルを手にとって見ることができる (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『紅の豚』フィオがレモネードを飲むシーンの解説展示パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『紅の豚』フィオがレモネードを飲むシーンの解説展示パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『紅の豚』フィオがレモネードを飲むシーンの解説展示パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『千と千尋の神隠し』千尋がおにぎりを頬張るシーンの解説パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『千と千尋の神隠し』千尋がおにぎりを頬張るシーンの解説パネル (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。千と千尋の神隠し』千尋がおにぎりを頬張るシーンの解説パネルと一緒にこのカットに使用された原動画(原画+修正197枚/動画287枚)
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。短編アニメーション『パン種とタマゴ姫』のパン種
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『となりのトトロ』草壁家には靴を脱いで上がってね (C)ORICON NewS inc.
  • 三鷹の森ジブリ美術館の企画展示『食べるを描く。』より。『となりのトトロ』草壁家の食卓 (C)ORICON NewS inc.

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