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名放送作家・藤井青銅氏インタビュー(下) 大人気コンビ・オードリーの誕生前夜

 「『M-1グランプリ2008』で準優勝した頃、まだ世間の人たちはオードリーといえば『トゥースの人』だと思っていたから、このままだとマズいと感じていました。一発芸で春日さんだけがテレビに出て消費されて、若林さんがしゃべれるんだって気付く前に飽きられるのが一番良くないから、しゃべりをアピールする場として『オールナイトニッポン』をやってくれたらと思いました」。放送作家という立場から多数のテレビ・ラジオ番組に携わってきた藤井青銅氏(61)と、お笑いコンビ・オードリーとの出会いは、その3年前の2005年までさかのぼる。このほど新著『幸せな裏方』(新潮社)を出版した藤井氏に、大人気コンビの誕生前夜を聞いた。

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■フリートークで光った若林のセンス M-1後のラジオ特番に勝算「2時間しゃべりで…」

 同年、藤井氏の発案で30分間のフリートーク・ラジオ番組『フリートーカー・ジャック!』(ラジオ日本)がスタート。数組の若手芸人たちがフリートークを披露する“実験の場”として設けられた。放送前には、藤井氏が出演する芸人たちからトークの内容を聞いて、15分くらいかけて構成を考えていった。「番組には、ブレイクする前のオードリー、ナイツハマカーンいとうあさこさんも来ていました。会議室みたいなところに皆さんが集まって、ひとりずつ僕に話をするのですが、センスが良い人は待っている間に、前の人に僕がどんな修正をするのかをしっかり聞いて、自分の番が来るまでに直していました。そこで若林さんの話が面白いということで、番組に何度も来てもらったんです」。

 週に1回で放送時間はたった5分という短さながらも、同番組で結果を出した若林の冠番組『オードリー若林はフリートーカー・キング!』が放送された。それから3年間は特に関わりがなかったが、2008年12月の『M-1』で強烈なインパクトを与えたオードリーは準優勝とともに大ブレイク。かねてから若林のトークに注目していた藤井氏は「オードリー売れたから使おうよ。絶対しゃべれるから。トゥースの方はしゃべれないけど」と旧知の仲のスタッフを口説き、翌09年2月に特番『オードリーのオールナイトニッポンR』(ニッポン放送)が決定。若林のトークを聞いてきた藤井氏には“勝算”があった。

「ラジオ日本の時に聞いていたものの中に、確実に面白くて、かつ誰も知らない話がいっぱいありましたし、さらに『M-1』の話もあるはずだから、2時間全部しゃべりでいけるなと思った。それで、オードリーに久しぶりに会って『全部トークでやってね』って伝えたら『えー、藤井さんらしいな』って言いながらもやってくれた。この時のしゃべりは、今振り返ってもめちゃくちゃ面白かったんですね」。

■大活躍のオードリーに感慨 現在の放送業界は「若手を育てる余裕ない」

 藤井氏の予感は見事に的中し、8ヶ月後の10月からレギュラー放送『オードリーのオールナイトニッポン』が始まった。通常のラジオ番組では、フリートークやコーナーの合間に音楽が流されるが、現在も続く同番組は曲が一切オンエアされない“超ストロングスタイル”で有名。さらに藤井氏は、オードリーの潜在能力を見込んで高いハードルを設定した。「2人のトークが1本、ひとりずつのトークが1本ずつ、これで1時間持たせてくださいとお願いしました。それと、テーマを募集して、リスナーの皆さんからおハガキやメールをいただくコーナーを意図的に少なくしています」。

 言わずもがなだが、これが決してリスナーを軽視している訳ではない。2人がリスナーを「リトルトゥース」という愛称で呼ぶことや、10〜20代の若年層をメインターゲットにするためパーソナリティーが替わりやすい深夜ラジオにおいて、今年で8年目を迎えた長寿番組になっていることからも明らかだろう。その間、春日は奥底にしまっていた“狂気”を開放して肉体同様にキレッキレの芸を多くの番組で披露、若林はマルチな才能を発揮してMC、エッセイ、大喜利、俳優とさまざまなジャンルに活動の幅を広げ、コンビとして大活躍している。

 そんな彼らの今の姿に、藤井氏は目を細める。「本当にスゴい活躍ですよね。オードリーのオールナイトも8年目になったんですけど、この間『ウッチャンナンチャンのオールナイト(過去に藤井氏が担当)より長いです』って言われてビックリしました。こんなに長く続くとは思わなかったんですけど、やっぱりフリートークは大変だと思います。毎週面白い話をするのは難しいから、もっと早い時間からコーナーを始めてもいいのかなと思っていますが、いまだにオープニングで40分しゃべっていて…あれは、たぶん意図的にやっていますね。僕はもうオジサンだから、一緒にブース(放送スペース)の中には入らず、その外から見守っているだけですけど(笑)」。

 1979年に『第1回星新一ショートショート・コンテスト』に入賞し、ほどなくして放送業界の門を叩いてから、まもなく40年。これまで数々の“伝説の現場”に立ち会ってきた藤井氏だが、今の業界に少しさみしさも感じている。「ニッポン放送にドン上野さんっていうラジオ界で超有名なプロデューサーがいらっしゃって、とにかくタレントと作家を育てるのが好きだった。若手にちょこちょことした原稿を書かせたり、飲ませたり飯を食わせたりするんですが、そこから何人も育っていきました。今は、そんな余裕があんまりないように見えますね」。よくありがちな「昔は良かった」タイプの論調で進まず、藤井氏の今の活動にも触れている本書。テレビ、ラジオ好きはもちろん、さまざまな仕掛けの成功の裏に隠された“藤井流の仕事術”にも触れることができる「一粒で二度おいしい」内容だ。



関連写真

  • 『幸せな裏方』(新潮社)の著者・藤井青銅氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 『幸せな裏方』(新潮社)の著者・藤井青銅氏 (C)ORICON NewS inc.

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