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新たな顔を見せた俳優・木村拓哉、歌やダンスへの思い明かす

 ドラマ『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)で、初の医者役に挑み、これまでにない抑えた演技を見せた木村拓哉。映画『無限の住人』(4月29日公開)では、そんな彼の“カッコイイ”だけではない、泥臭く苦悶する姿が多く映し出されている。木村の演技の裏側にあったもの、そして彼がこれまで積み上げてきた歌や踊りに対する見解も聞いた。

◆“痛い”とか“寒い”とか、そういうことは作品に関係ないこと

 オリジナルの世界観で、圧倒的なアクションが展開される映画『無限の住人』。沙村広明の人気コミックを三池崇史監督が映像化した本作で木村が演じるのは、やむなく不死身の体にさせられた侍・万次。無限に生きなければならない男の孤独と苦悩をにじませながらも、両親を殺された少女・凜を守り抜くために、次々に襲いかかる敵を斬って斬って斬りまくる。

 ノースタントで体を張った壮絶な死闘の連続に、“俳優・木村拓哉”の“覚悟”を思い知らされる。「まずは原作ありき。自分が役作りをこうしようというのではなく、原作の世界観を三池監督と具現化していくしかないのです。右目を潰して演じるのも、万次がそうだからであって、演じさせていただく条件のひとつとして、当たり前のこと。自分が“見えにくい”とか、“痛い”とか“寒い”とか、そういうことは作品に関係ないことですから。現場にいらない感情です」と、こともなげに言う。

 日本のみならず海外の監督や俳優たちもよく口にするのは、“献身”という言葉。携わる者すべてが自我を捨て、キャラクターに、ひいては作品に献身してこそ、良質で満足のいく作品を生み出せるということだ。その“真理”を、木村拓哉はスーパースターでありながらわかっている。300人が入り乱れるクライマックスの大バトルや、市川海老蔵が演じる同じく不死身の閑馬永空(しずま・えいくう)との決闘についても、その資質が伺えた。
「ごく大まかな段取りはあっても、最終的には対峙する相手に対して、“そっちが避けなかったら、そこで死ぬからね”という瞬間の積み重ねでした。とくに海老蔵さんとは動きの相談はまったくなくて、たがいの反射で作っていたというか」

 その反射能力は、杉咲花が演じたヒロイン・凜とのシーンでも不可欠だった。
「万次は長い時間を生きていても、剣を持つ意味が見いだせなかった。でも凜と出会ったことにより、剣を持って人を殺めることに対する“答え”が得られたのだと思う。だから僕としては、杉咲(花)さんの演じる凜を100%感じて、それに反応して、自分の表現に還元させていただきました」

◆三池崇史監督との初タッグ、「威嚇はしてません」

 もちろん、木村拓哉が本作で披露した“献身”“反射能力”“適応性”は、これまで主演してきた数々のドラマや映画の経験から培われたものあるし、彼本来の資質なのかもしれない。しかし、そのすべてが呼応して新しい境地に至り、“これまで見たことのない木村拓哉”を見せてくれたのは、やはり奇才・三池崇史監督とのタッグの賜物だ。
「最初は、『こういうお話があるんですが、いかがですか?』と言われて、『あっ、そうなんだ。よろしくお願いします』とお答えして。正直、初めてお会いした時は僕も構えていたし、監督も“Let’s!”ではなく“Excuse”な感じだったんです。まぁ、後になって監督から『威嚇されたからだよ。趣味は威嚇でしょ?』って言われましたけど(笑)。ほんと、威嚇していません。構えていただけです」

 出会いは「間合いを取り合っていた」けれど、いざタッグを組めば志は同じ。全幅の信頼関係が結ばれた。「我々が無我夢中で作ったものが、結果的に日本人にしか作れない日本の物語として、世界中の人たちにとって、見たことのない価値あるものになるはずだ」とは、三池監督の言葉。期せずして木村拓哉も、「あの現場でプレイすること、それがすべてでした。作業をしている間は無我夢中で、劇場に座ってくれる人たちのことはぜんぜん考えられなくて。そこは監督やスタッフに委ねるしかなかったですね」と現場を振り返る。

◆撮影は「非常にごたごたしていた時期」、爆発できる場でバランス保つ

 まさに、一心不乱。そして、それにちょっと拍車をかけた思いも吐露している。
「作品にはいっさい関係ないですけど、パーソナルな自分、万次を演じるベースの自分が非常にごたごたしていた時期だったので、制限なしで爆発できる場があって、非常にバランスが保てたというか。助かりましたね(苦笑)」

 作品、そして監督との出会いは、タイミング=Right Time&Right Placeも重要だ。いかに優れた俳優でも、優れた企画でも出会いのタイミングを間違うと悲惨なものになりかねない。その点、三池監督も「彼は出会うことの強さを持っている。その強さがなければ、木村拓哉は日本で唯一と言っていいスーパースターにはなれなかった」と太鼓判を押している。

◆歌やダンスに使う“筋力”が確実に落ちているような気がして…

 世に出る順番は逆になったが、本作の後に撮影されたドラマ『A LIFE〜愛しき人〜』では、リアルな手術シーンや医師としての立ち居振る舞いにも高い評が寄せられた。しかし、渾身作と評判の『無限の住人』も、高視聴率を記録したドラマ『A LIFE〜愛しき人〜』も、「特別というケースはない。みんな“同じ棚”にあります」という。その演じることへの真摯なひたむきさと情熱があれば、常に新しい“俳優・木村拓哉”は生まれ続ける。

 しかし、そこでひとつの思いが残る。そう、俳優としての活躍の一方、長年にわたって彼が魅せてきた、歌やダンスは封印だろうか?
「ちらほら考えたりはするんですけど、ちょっとやっていない間に、歌やダンスに使う“筋力”が確実に落ちているような気がして…」

 では、今年のアカデミー賞でも話題を呼んだ『ラ・ラ・ランド』のようなミュージカルへの挑戦はあり得るのだろうか。歌って踊れて演技のできる木村拓哉にはピッタリのジャンルでは?
「今の自分の中では想像できませんが、本当に求められたら、もちろん考える必要があるとは思います」
(文:金子裕子)



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