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“副業解禁時代” 「個人」の自立と活躍を支える存在の重要性

 一人一人が自分の働き方を改めて考える時代となった現在。多様性が増した分、個々の判断力がさらに問われているのが現状だ。博報堂やGoogleといった一流企業に在籍しながらも、その地位をあっさり捨て、クライド会計ソフトを開発するfreee株式会社を立ち上げ、各種メディアからも注目を集める佐々木大輔氏。日本のスモールビジネスをより自由にしていこうと画策する氏に、“自由に生きる”ヒントについて聞いた。

■社会的に意義があることをやるって凄く面白い

――佐々木さんは、博報堂、ベンチャー企業、Googleといった、いくつかの企業に在籍されていた経験をお持ちですが、ご自身の会社員時代の“佐々木WAY”はありますか?

佐々木大輔:考え方の基本は「より難しそうなものを選ぶ」ということですね。「こっちの方がよくわからないな」とか、「こっちの方が難しそう」とか、そういった物事を積極的にやるし、選んできたと思います。そうじゃない方の選択肢は積極的に切り捨ててきました。「好奇心」という言葉に尽きるかもしれません。

 あと、緊張感のないことをやると、すぐ間違えるんです。例えば、僕、漢字を読むのは得意なんですけど、正しく書けないんですね。それって、もうすでに読めるから知っていると思い込んでて、だから正しく書こうと思っても書けないんですよ。それと同じで、読めないものを読めるようになるみたいな一番面白いところを過ぎちゃうと、興味なくしちゃうんです。だから、自分がすごい興味あるなぁとかテンション上がるなぁっていう場に、常にいるようにするっていうことが必要なんだと意識しています。

――山の頂上に着いちゃうともうつまんない、登るところが楽しいんだという考え方でしょうか?

佐々木大輔:そうそう、「気持ちいい上り坂」に常にいるようにするっていう方がワクワク感が高いんですよね。

――会社にいる立場を利用して、会社にいながらチャレンジする、という考えはありませんでしたか?

佐々木大輔:確かにそれもあったのかもしれないですけど、僕的にはあんまり好きなスタイルじゃなかったのかなと思っています。「このクライアントうまく利用してこんなことやろう」というような考えも広告代理店のような会社だと普通にあったんですが、それって楽しいかもしれないけど、あまり社会に価値を生んでいるようには見えなかった。

 だから会社を使って何かをするとかっていうより、「自分が納得している」とか、「自分が成長している」とかを大切にしていました。そういう意味では、会社を利用して自分が成長できるんだったらまだいいけど、そうじゃないなと思った。そういうことだと思います。

――佐々木さんご自身が起業に踏み切ったきっかけは?

佐々木大輔:Googleだと、すでに「起業したことがある人」たちもたくさんいたので、起業自体が当たり前の環境でした。何か思いついたら自分でプログラミングして作っちゃうみたいなこともよくあった。そして何よりも、中小企業向けに良いテクノロジーを広めていくっていうことの「意義」をずっと考えていて、何か意義のあることをしていると面白いんだなと気付いたっていうのがあります。これはGoogleにいた時に初めて覚えた感覚でした。

 それまでは、自分のスキルが上がったとか、もっと面白そうな仕事ができるんじゃないかとか、市場価値が上がるんじゃないかとか、その位しか考えていなかった自分が、社会的に意義があることをやるって面白いし、そういうことをもっとやりたいなって思うようになった。それが大きなきっかけですかね。

――今日freeeのオフィスにうかがって、オフィスの雰囲気とか、社員さんの空気とか、Googleに似ているのかなと感じました

佐々木大輔:そんなに似てないですけどね(笑) 。潤沢にお金があるわけではないので、どちらかといえば手作り感満載の雰囲気だと思います。昔のGoogleに似ているのかもしれません。僕が入った時は、日本のオフィスはまだ200人ちょっとだったんですよ。今のfreeeよりちょっと少ないくらい。今は3000人くらいいるみたいなので全然違うと思います。

■「組織にいるメリット」を企業側が提示していくことが重要

――佐々木さんは「みんながもっと挑戦できる社会」を目指していると書かれていますが、freeeからも独立したりする方はでてきていますか?

佐々木大輔:「起業したい」って言って起業する人はいるし、そういう人たちは積極的に応援していきたいって思っています。優秀な人材に会社にいてもらうために、「組織にいるメリット」を企業側が提示していくことが重要です。それが無いのに、いわゆる「お前恩を忘れたのか!」みたいな、そういうやり方はダメですよね。

 だから僕たちも採用活動をしている中で、相手企業に引きとめられるケースもたくさんあるんですけど、その多くは「恩義を忘れたのか!」っていう感じなんですね。恩義みたいなものも確かにあるのかもしれないけど、でも本人のためを思ったらどうなのかなってところが大事です。なので「個人にたいしてもっともっと成長を提供できる」ということを、企業側がきちんと提示していかなければいけないと思います。

――長時間労働の問題や、「企業と個人」の関係性の問題が話題にあがりますが、個人がより「自分らしく」働く環境に関してはどのようにお考えですか?

佐々木大輔:一つは、「別のオプション」を持っておくってことが大事だと思います。会社だけでない、もう一つの自分の居場所ですね。「副業」のようなものも含めて、別の選択肢を持っていることで「この道以外にも自分にはあるんだ」っていうマインドです。ただ、何か「新しいものを本気で作るフェーズ」においては、「背水の陣」みたいな形で「これだけは頑張らなくちゃいけない」って決めてやり抜くことも重要ですが。要は組織に属していて、明らかに「これは不当だ」という状況で、自分の中に複数の選択肢を持っているということが大事だと思います。

 もう一つは、Googleに入った時にはじめて分かったことなんですけど、「会社と話す」ということがとても大切だといことです。例えば「自分のやりたいことは本当はこれで、今ズレている」といったことを、ちゃんと相談するということ。実はこれをちゃんとできないまま過ごしている人が多いと思っていて、ギリギリまで思いつめてから転職活動をするっていうケースが多いんじゃないかなと。きちんと話せていれば、企業側も個人側も、もっと出来ることがあるはずです。

■“リアルマーケティング”を、身を以て感じられるのは自分を強くすることだと思う

――「副業解禁」はいい流れだと思いますか?

佐々木大輔:そうですね。いいきっかけというか、いい選択肢にはなるんじゃないでしょうか。例えば副業をやる事によって、今まで自分が意識していなかった会社としての仕事を意識しなきゃいけなくなるので「なるほどコストって意識しなきゃいけないんだ」とか、「こういう風にマーケティング考えなくちゃいけないんだ」とか「こういうwebサイトには人が来るけど、こういうのには来ないんだ」とか、たくさんの示唆があって、そういうことを自分事に考えられるのってすごく大事な経験だと思います。

 それこそ「メルカリに出品しました」っていうだけでも、リアルマーケティング上の示唆があると思うんですよ。「この時間はやっぱり売れるな」とか、「こういうヘッドラインでやれば売れるな」とか。そういうリアルなマーケティングを、身を以て感じられるのって自分を強くすることだと思います。別のことに挑戦してみて「新しい自分を発見する」のってすごく重要だと思います。単純にお金を稼ぐっていうことだけじゃなくて、それ以上の示唆があると思うんですよね。色んなスキルの幅を広げるとか、本当にやりたいことを見つけるとか、本当に自分がワクワクすることを見つけるとか。

――「副業解禁時代」における、freeeの目指しているものを教えてください。

佐々木大輔:個人が仕事をしたいと考えるときの障壁がバックオフィスの仕事だったりするわけです。設立手順が面倒くさい。確定申告がわかりづらい。それまでは「会社がやってくれていること」だったのでやり方が分からない。めんどくさいから、まぁ明日でいいか、来月でいいかみたいな。それで起業やチャレンジが遅れてしまう。そいうバックオフィスの煩雑さを極力無くしてあげるっていうのはすごく重要なことです。

 「起業のしやすさランキング」というようなものを世界銀行が出しているんですけど、まさに「提出しなきゃいけない書類」とか「起業までにかかる日数」とかで判断されているんですよ。なぜそんなランキングを出すかっていうと、結局、そこが重要だからなんですよね。どれだけ摩擦を少なく新しいことに挑戦できる環境であるかということが。

 それは制度的に変わらなければいけないことでもあるんですけど、テクノロジーで変えられるところもたくさんあります。テクノロジーの部分に関してはfreeeとして解消していきたいです。「freeeが存在する」ことによって、個人が個人として活躍しやすくなったり、中小企業が飛躍したりいける。そういう社会を作っていく企業でありたいと思います。

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔
1980年、東京都出身。一橋大学商学部卒業。ストックホルム経済大学に在学中、ITリサーチベンチャーにてインターン。2004年博報堂入社、マーケティングプランナー、投資アナリスト等を経て、2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Googleマップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括を担当。2012年7月freee株式会社。



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