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香取慎吾40回目の誕生日、SMAP解散後も今を生きる5人の今後

 様々な角度からSMAPに迫る連載第25弾。昨年末をもって“解散”してから1ヶ月が経ち、メンバーはそれぞれ個々の活動にまい進している。本連載がスタートして半年。香取慎吾の40回目の誕生日である今日、彼らが見てきたであろう景色とこれからの未来に想いを馳せつつ、本連載の最終回としたい。

SMAPとしての公式サイトは31日で終了、今後の活動は各個人のサイトで閲覧できる

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◆香取慎吾の40回目の誕生日に思うSMAPというアイドルの形

 最新作が、最高傑作だった。

 8月にこの連載が始まって、原稿を書く上での必要に迫られながら、繰り返し繰り返しSMAPのライブ映像を観て思った。好きなセットリスト、好きな曲、好きな衣装、好きなアレンジ、好きな振り付け、好きなメンバー同士のやりとり、好きな挨拶、好きな表情……。デビュー直後から、それぞれの映像に見所はあるけれど、彼らの場合、年齢を重ねるごとに魅力が加速していることに、何より驚かされる。同様のことは、映像集『Clip!Smap!コンプリートシングルス』を観ても感じられた。人間としてのキャリアは、人を磨きこそすれ、腐らせたり、衰えさせたりするものではないのだということを、SMAPは身をもって教えてくれた。人間としての頂点は過去にはない。いつも、“今”こそが最善なのだと。

 2017年1月31日は、香取慎吾の40回目の誕生日である。早生まれの香取は、SMAPが結成した1988年に11歳の小学6年生、CDデビューした1991年は14歳の中学3年生だった。ある程度完成された形でデビューし、自分たちの世界観や関係性を提示するバンドなどとは違い、未熟な時代から成長を見守ることもまた、アイドルグループを応援する醍醐味である。

◆“新しい価値観”と“大人アイドルの可能性”を創出してきた

 デビューした時は、全員が10代だった。全員が20代となる前年に冠バラエティ『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)がスタートし、「夜空ノムコウ」という従来のアイドルの枠を超えた大ヒット曲が生まれたときでも、香取はまだ21歳になるところだった。いわゆるメジャーな学園ドラマにあまり縁のなかったSMAP(唯一の例外がデビュー前の森且行のTBS系『3年B組金八先生第3シリーズ』への出演)にとって、うら若き時代の代表作を持たなかったことは、もしかしたら幸いだったのかもしれない。彼らの場合、20代には20代の代表作が生まれ、30代には30代の代表作が生まれていた。個人個人での芝居の役柄もそうだが、音楽的にも、“今だから歌える曲”にその都度その都度巡り会えた。そのため、過去映像を追いかけても、不思議と「あの頃は良かった」とか、「この頃がピークだったな」と“若さ”への憧れが生じることはなかった。彼らは、常に、ファンの想像を超えるカッコ良さや美しさ、優しさや強さ、豊かさや明るさを提示してくれたのである。

 10歳という若さでジャニーズ事務所に入所し、11歳の時はすでにメンバーの連絡係を担当していた香取は、小学生の頃からショービジネスの英才教育を受けてきた。それから20年のキャリアを積み、31歳になった2008年のツアー『super.modern.artistic.performance tour』から、コンサートの演出を一手に任された。それから2014年までの4回、ツアーの総合演出を手掛けているが、過去からのライブ映像の中で『Mr.S “saikou de saikou no CONCERT TOUR”』の「Battery」から「CRAZY FIVE」までのノンストップのダンスコーナーは、SMAPのダンスコーナーにおける“K点越え”のような華麗さと迫力があり、個人的にはこの先最もリピートしてしまいそうな予感がしている(それまで一番ヘビロテしていたのは、『Live BIRDMAN』のダンスコーナーだった)。2014年の夏のライブだから、7月生まれの草なぎ剛は、この時すでに40歳の誕生日を迎えていた。香取を除けば、全員が40代のグループで、このダンスの激しさは驚きだったし、大人だから出せるゴージャス感には、ただただ酔いしれるばかりだった。そうやって彼らは主にライブで、“新しい価値観”と“大人アイドルの可能性”を常に創出してきたのである。昨年末のSMAPの解散がなければ、今頃は、全員が40代のアイドルグループとして、また新鮮な驚きをくれたに違いないのだ。

◆解散しても、5人は変わらずエンタテインメントの世界を生きる

 でも、起きてしまったことと違う未来を思い描いたところで、それが真実になるわけではない。SMAPは、一旦は解散してもメンバーの5人は相変わらずエンタテインメントの世界の住人として、精一杯“今”を生きている。「もう十分人を楽しませてきたのだから、個人としての幸せを掴んで欲しい」なんて、SMAPに好意を持つ一般の人たちの声も聞かれるけれど、ファンとしては、これまでの彼らの数々の“献身”によって獲得したものは、少なくとも、一般人の想像を絶するような幸福の景色だったと信じたい。SMAPが、ステージでファンに見せてくれたものは、ものすごい絶景だったけれど、彼らから見る景色もまた、表現者だからこそ体験できる最高の景色だったのだと。あの経験を心の支えにして、辛いことも乗り越えていける。そう思えるような、かけがえのない体験だったのだと。

 この6ヶ月、SMAPとは何か、エンタテインメントとは何か、ファンとは何かを自分なりに考えながら、同時に、幸福とは何かということにも想いを馳せた。SMAPに出会えた幸福。SMAPと同じ時代を生きられた幸福。アイドルに夢中になった経験のない人は、たかがアイドルグループの解散ぐらいで大げさに騒がなくても、と言うかもしれない。でも、例えばラジオでのトークや、彼らの音楽を聴いて、一緒に悲しんだり、時には涙したり、一緒に安堵したり。いろんな感情を共有できた。幸福とは結局“生きている実感”なのだと思う。この半年間、苦しみも痛みも含めて、SMAPという存在は生きている実感をくれた。さらに、年が明けてからの彼らの活動を見るにつけ、それぞれの中に、さらに例えば番組のスタッフの中にも、SMAPへの限りない愛があることが実感できる。

 草なぎ剛は、今年になって掲載された雑誌のインタビューで、“すべてが思うほどうまくはいかない。でも、それが人生”と、自分が置かれている境遇について、「夜空ノムコウ」の歌詞を引用して語っていた。5人が結集する未来なんて、どこにも確約されてはいない。でも5人の表現活動は続き、その輝きは褪せず、見上げればそこに彼らが見るのと同じ空が広がっている。SMAPが東日本大震災の募金活動を呼びかけながら教えてくれた、“関心を持ち続ける”というスピリットや、“世界中が幸せになれ!”と歌うピースフルなマインドを受け継いだファンは、今はただ、信じて待てばいいのだ。彼らの最高傑作が、きっと未来にあることを。
(文/菊地陽子)

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