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「ミタ」脚本家・遊川和彦、“逃げ恥”には「してやられた」

 社会現象となったドラマ『家政婦のミタ』(2011年/日本テレビ系)を筆頭に、数々の話題作の脚本を手がけてきたヒットメーカー・遊川和彦氏。「いい作品をつくるため」には撮影現場で演出に口を出す“危険人物”にもなるという熱い脚本家に、昨年大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)『ドクターX』(テレビ朝日系)についての意見など、昨今のテレビドラマ事情について聞いた。

ドラマ脚本への異業種参入には「おもしろければ誰が書いてもいい」と語る遊川和彦氏

ドラマ脚本への異業種参入には「おもしろければ誰が書いてもいい」と語る遊川和彦氏

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◆『逃げ恥』は、今の若者が感じる不安や孤独を代弁した

――2016年10月期のドラマシーンが盛況で、エンタテインメントシーンにおける“ドラマ復権”とする声も上がっています。遊川さんは現在のドラマシーンをどう見ていらっしゃいますでしょうか?
【遊川和彦】 今までの価値観で作品を作ってはいけないということにテレビ局が気付き始めた兆候として、『逃げるは恥だが役に立つ』が出来たような気がしています。昔だったら、(新垣結衣と星野源が演じた2人の男女の)関係性は成立しないが、今だったらリアリティがある。我々が望む望まないにかかわらず時代は進んでいき、人間の考え方も変わっていくんですけど、今はある種の飽和状態になっている。そこから脱却するには新たなキャラを創造するというチャレンジをしなければいけない。そんな時代に入っているような気がしますね。

――「恋ダンス」も流行りました。
【遊川和彦】 あれはたまたま星野源さんの楽曲「恋」がすばらしくて。それにダンスがあり、作品にハマっていて、新垣さんが可愛く、何回見ても楽しかったから。二番煎じを狙うドラマが出てくるような気がしますけど、そこは本質的な問題ではないんですよ。『逃げ恥』は、今の若者が感じる不安や孤独をしっかり代弁したからおもしろいし、新鮮な感じが出た。作っている側から見ると、「してやられた」感があります。今の時代の人間は、どんな想いで生きているのかということを深く考えて掘り下げることが大切。どこかの局のようにかつての成功事例を追ってもしょうがないわけですよ(笑)。

◆ドラマ脚本への異業種参入は歓迎「おもしろければ誰が書いてもいい」

――『逃げ恥』には、遊川さんをしても「してやられた」と思った?
【遊川和彦】 そうですね。なんだかんだ言ってドラマ制作は、今まで見たことのないものを作ろうという意識がなければダメだと思うんです。『逃げ恥』にはそれがあって、見事に成功させた。『ドクターX』も高視聴率を取っていますが、続編をやるならば、今までにない『ドクターX』が観たいと僕は思ってしまいます。従来の方法論も正しいし、成功をなぞることも大切かもしれませんが、今の人間の悩みは何なのか、今の時代に訴えかけるべきものは何なのか、常に世の中の動きを考えながらメッセージ性を持った作品を作っていくことが、ドラマシーンの隆盛につながっていくと思います。

――芸人のバカリズムさんが2回目の連ドラ脚本を担当した『黒い十人の女』も評判になりました。異業種からの参入についてはどう捉えていますか?
【遊川和彦】 『黒い十人の女』もおもしろかったですね。僕は作品がおもしろければ、誰が脚本を書いていようが関係ないと思っています。本職の脚本家の仕事が奪われていくとかよく言われますけど、そもそも連ドラの脚本を1クール10本分書くというのは本当にしんどいことなので、それをやってくれる方が増えるということ自体、ありがたいこと。ただ、役者などの方で腰掛け的にやるのはやめてもらいたいという思いもありますね。そういうイージーなところで結果を出そう、名前を売ろうというのは、観ている側もうんざりしていると思うので。仕事に命をかけているひと、または逃げ場所がないひとたちというのは覚悟が違います。そんなひとたちといいものを作っていきたいですし、そういったことから刺激を受けているようにも思います。
(文:衣輪晋一)

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