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スマスマ最終回、SMAP“無言”のメッセージとは?

 様々な角度からSMAPに迫る連載第19弾。今回は、12月26日に最終回を迎えた『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)について。なかでも、5人のラストステージとなった「世界に一つだけの歌」やエンディングの演出は、世間的にも大きな話題となっている。彼らから直接のメッセージはなかった。だが、“無言”だからこそ見えてきたものが実はあったのだ。これまでのSMAP取材現場を知るからこそ見えた、彼らが最後に残した“声”とは?

スマスマ最終回、視聴率は23.1% 瞬間最高視聴率は27.4% を記録

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◆5人のラストソング「世界に一つだけの花」にある変化が

 そこにあるのは、5人の声だけ。

 「世界に一つだけの花」を、サビで槇原敬之のコーラスが入っていないバージョンで聴いたのは、この時が初めてだった。26日、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の最終回。過去の映像を振り返る総集編の最後に、SMAPが9ヶ月ぶりに5人で持ち歌を披露した。

 「世界に一つだけの花」がシングルとしてリリースされた当時、それが草なぎ剛主演のドラマ『僕の生きる道』(同系)の主題歌だったせいか、プロモーション用のミュージックビデオは特に作られていなかった。しかも、ドラマが始まった時の主題歌はアルバム・バージョンで、最終回になって初めてリアレンジされ、新たにレコーディングされたシングル・バージョンが流れたのである。さらに言えば、「世界に一つだけの花」が『僕の生きる道』の主題歌に決まるまでには、ドラマのプロデューサーが2002年の『DRINK!SMAP!』ツアーで初めてこの曲を聴いて感動し、「ぜひドラマの主題歌に」とオファーしたという経緯もある。

◆“敢えて”外した槇原敬之のコーラス、中居のハンドサイン

 この国民的ヒットソングは、これまでに何度も彼らのコンサートはもちろんこと、『NHK紅白歌合戦』をはじめとする歌番組で披露されてきた。彼らの歌を何度聴いても飽きないのは、SMAPが常に歌う時の“ライブ感”を大事にしていることも理由の一つに挙げられる。例えば、ライブのテッパン曲である「ダイナマイト」などは、ツアーによってヒップホップバージョンがあったり、ラテンバージョンがあったり。自分たちの持ち歌を“その時限り”の演出で見せることは、ある種SMAPの得意分野だった。ライブDVDを観ると、木村拓哉は一つの曲を毎回と言っていいほど違う歌い方をしてみたり、ジェスチャーを変えたりしている。香取慎吾は、体だけでなく声も表情豊かで、声そのものが爆発したように楽しそうな時もあれば、同じサビでもちょっと寂しげに聴こえる時もあったり。声量のあるこの2人の場合、その時々の自分が歌に表れることを自由に楽しんでいるようだった。声の個性で分ければ、中居正広稲垣吾郎と草なぎの3人は、繊細さが武器になっている。でも、その中でも稲垣の歌唱は驚くほど安定していて、草なぎは張り詰めた緊張感が時に霧氷のようなきらめきを感じさせることもあるし、中居の少し鼻にかかった切ない声は、歌詞が描く情景に、自然に心情を重ね合わせてくれた。

 リリースされたばかりのリクエストベスト『SMAP 25 YEARS』を聴いていても思うのだが、5人の声がちゃんと聴き分けられることも、SMAPの音楽の面白さである。ただ、「世界に一つだけの花」のアルバム・バージョンとシングル・バージョンでは、アレンジや歌割りが違う他に、変更点として、サビ部分での槇原のコーラスが厚くなっていた。だからサビに関しては、5人の個性的なユニゾンよりも、槇原の丸く柔らかい声が安定感をキープしているような側面があった。でも、“スマスマ”最後の5人での歌唱の際、「世界に一つだけの花」のサビに、槇原のコーラスが重ねられることはなかった。つまりこの曲を歌うにあたって、“敢えて”外したのだ。あの、中居が1本ずつ指を折り、最後に花が咲いたようにパッと広げたジェスチャーも一度きり。声、視線、動き、全てに入魂の1曲になった。この先、あの歌唱シーンを何度見直しても、新しい何かを発見できそうな、五角形の歌。

◆木村は“いつものように”最後にスタジオを後にした

 何度か、“スマスマ”の歌コーナー“S-Live”の収録に立ち会ったことがある。セッティングの待ち時間も木村は前室にいて、スタッフと談笑し、最初にスタジオ入りするのも必ず木村だった。次に現れるのは決まって稲垣。空き時間があると振り付けの確認をしたり、木村と言葉を交わしたりしていた。それから草なぎ、香取、最後に中居がスタジオに現れた。リハーサルから本番の間に時間ができると、中居と香取は楽屋に戻った。収録が終わると、中居は真っ先にスタジオを去り、木村は、いつも最後まで残っていた。

 “スマスマ”最終回の歌唱が終わり、1人ずつメンバーが画面から消えていって最後に木村が残った時、ふと、自分があのフジテレビのスタジオにいるような錯覚に陥った。5人が5人とも、いつもと変わらないスタイルで、収録に臨んでいたのだと思った。

◆潔癖の中居はスタッフの肩を抱き……SMAPの想いはいつも歌に込めて

 最後に、エンドロールでスタッフ1人1人と記念写真を撮る様子が流れていた。あの場面は果たして必要だったのかとか、SMAPの番組のフィナーレなのに裏方をフィーチャーしてどうするんだとか、意見や感想は人それぞれだろう。ただ、スタッフの想いを想像するに、たぶん1分でも1秒でも長く、“スマスマ”に関わるSMAPの姿を視聴者に届けたかったのではないか。歌収録を最後にすると決めたSMAPの姿を一番長く映すための方法が、あのエンドロールだったのだと。

 雑誌の撮影では、照れがあるせいか、「楽しそうに笑ってください」とか「じゃれ合う感じで」というオーダーに、あまり素直に応じてくれなかったのが中居だった。その代わり、香取が思い切り口を開けて笑ってくれたり、草なぎと仲良さそうに絡んだりして、バランスを取ってくれた。歌と同様、木村は毎回ポーズやアレンジが多彩で、稲垣は全体のカッコ良さと面白さ、大人っぽさの調整役のような立ち位置で、全体のトーンに絶妙に合わせていった。

 あのエンドロールで、中居は、撮影の時にはなかなか見せてくれなかったリラックスした笑顔を最後までキープし、潔癖症なのに、入れ替わるスタッフ1人1人の肩を抱いていた。単なる記念撮影なのに、メンバーそれぞれが、スタッフに向けて“ありがとう”という想いをその表情で伝えていた。

 バックステージでもあんなに愛し愛されて。小さなワイプの中で、それぞれが費やしてきた時間が、とても“たいせつ”なものに結実していた。番組の中で、SMAPからの直接の言葉はなかった。でも、だからこそあの「世界に一つだけの花」が、SMAPからのかけがえのないメッセージだったのだろう。SMAPの想いは、いつも歌に込められる。言葉よりも、星の数よりもたいせつでリアルでオリジナルな彼らの歌に――。
(文/菊地陽子)

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