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まもなく300万枚、SMAP「世界に一つ」秘話とこれから

 様々な角度からSMAPに迫る連載番外編。ファン投票により収録曲が決まったベストアルバム『SMAP 25 YEARS』を元に、毎回、彼らの音楽を紐解いていきたい。今回注目するのは、まもなく累計売上が300万枚に届こうとしている「世界に一つだけの花」。詞曲を提供した槇原敬之が語った楽曲誕生秘話、そして同曲の行く末とは?

◆Mステ披露はたったの4回、「世界に一つ」誕生秘話

 この期に及んで、まだ秘話があったのか。

 12月4日に放送された『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で、ゲストの槇原敬之が、「世界に一つだけの花」の制作裏話を語っていた。もともとは自分用に“人は一人一人違う”というテーマで曲を作ろうと思っていたこと。SMAPから楽曲のオファーがあり、提出したものがボツになってしまったこと。いざ書き始めたら、頭の中に紙芝居みたいに、スコッ、スコッと写真が降りてきて、槇原はその写真を歌詞として書き写しただけだったということ。10分か20分ほどで先に詞をまとめて、曲をつけてもトータルで1時間とかからなかったこと。それまでは、“曲が降りてきた”経験などしたことがなかったけれど、この曲だけは、神様からのプレゼントだと思えたこと、などなど。

 知らなかったエピソードばかりで興味深かったこともあるけれど、何より今、こんなタイミングで、「世界に一つだけの花」ができるまでを作り手が語ってくれたことが有難かった。番組ではそのエピソードのあと、SMAPが歌うの「世界〜」のワンコーラスが流れた。2015年9月の『MUSIC STATION ウルトラFES』(同系)で披露された時のものだった。そういえば、12月3日の『ミュージックステーション』でも、SMAPが「世界に一つだけの花」を歌っている過去映像が放送されている。“Mステ”初披露から、2015年の“ウルトラFES”までの間に計4回、SMAPは同番組で「世界に一つだけの花」を歌っていた。しかもそのうち3回は、曲が発売された2003年に放送されたものだ。逆に、あれだけの超有名曲が、12年間の間にわずか4回しか“Mステ”で披露されなかったのかと思うと、SMAPがいかに、音楽の分野で“攻めて”きたかがわかる。SMAPは、新曲を発表するたびに、『世界に一つだけの花』超えを狙っていたはずなのだ。

◆豊作の2003年から2005年、支持集めファン投票ベストに10曲

 「世界〜」のシングル・ヴァージョンが発表されたのが2003年3月、「Fine,Peace!」(アルバム『SAMPLE BANG!』収録)が2005年7月。わずか2年半弱の間に、今回のファン投票でランクインした10曲もの人気曲が集まっている。特に、2003年に発売されたアルバム『SMAP 016/MIJ』収録曲からは実に4曲がランクイン。これは、アルバムの中では最多である。「SUMMER GATE」は、コンサート『SMAP ‘03“MIJ Tour”』の序盤の曲で、「ススメ!」は本編のエンディング曲。おそらくSMAPファンの中で『MIJ Tour』は、中居正広が中心になってライブ演出を担当していた2006年の『Pop!Up!SMAP』ツアーまでの15年間(1998年のツアー『VIVA AMIGOS!』は木村拓哉が中心)では、最も人気が高いライブになっているのだろう。実際、スケールもセットも最大規模で、様々な仕掛けに度肝を抜かれたし、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)での2公演も含め、観客動員数は100万人を超えていた。

 このツアーがなぜそんなにも人々の心を掴んだかと考えると、やはりその背景には、「世界に一つだけの花」のヒットがあると言える。私自身、ライブ会場で「世界〜」を聴くと、それまでのSMAPのライブでは感じたことのない“一体感”のようなものに、心と体が包まれたことを記憶している。道徳的な歌詞ではあっても、SMAPが歌うことで、メッセージは一気に軽やかになった。コンサートでも、本編後のアンコールの1曲目が「世界に一つだけの花」だったのだが、そのジャンクションと呼ばれるつなぎの映像で、SMAPのメンバーを模したアメリカの人形劇に出てきそうなマリオネットの木村拓哉が草なぎ剛に、「お前、サビ外すなよ」と釘を刺してみたり。そうやって自分たちをパロディにしつつも、でも決めるところは決めてちゃんと感動させるのがSMAPなのだ。実際、DVD『Live MIJ』に収められた草なぎの歌唱は、音程もとても正確で、声が澄んでいて、なおかつ心がある。

◆ドラマ主題歌として成長、9.11後の世界を映し出す

 ベストアルバムのファン投票で、「世界に一つだけの花」は12位にランクインしていた。ファンでない人は、その結果に驚くかもしれない。ちなみに1位は、これもファン投票ならではのアルバム曲「STAY」だし、2位はカップリング曲「オレンジ」だ。ただ、この曲の票については「アルバム・ヴァージョン」と「シングル・ヴァージョン」で割れた可能性がある。SMAPファンなら誰もが知ることだが、「世界に一つだけの花」はそもそもアルバム曲だった。シングル発売前の2002年、『Drink!Smap!Tour』では、本編のエンディング曲として披露され、イントロのアレンジも違えば歌割りも違った。

 シングル・ヴァージョンは、草なぎ剛が主演したドラマ『僕の生きる道』(フジテレビ系)の主題歌として、アレンジや歌割りを大幅に変えたものだったのだ。アルバムでは、木村拓哉が一番のAメロ、次が草なぎ、Bメロが稲垣吾郎香取慎吾と中居は2番を担当している。また、アルバムの時は木村が担当していた大サビも、シングルではドラマとの連動もあってか、草なぎが歌うことになった。アレンジも、シングルはサビ始まりだし、バンジョーの音が印象的だったりと、全体的にパワフルになっている。コーラスにしても、アルバムの時よりも力強く、主旋律が音の厚みを増している。アルバム・ヴァージョンはアルバム・ヴァージョンで、シングルにはない繊細さがあり、どちらがいいか、好みは分かれるところだ。

 槇原敬之は、『関ジャム完全燃SHOW』で、「あげるつもりで書いたので、もったいないと口では言っても、内心はそんなこと思ってなかった」と話していた。失礼を承知で言えば、「世界に一つだけの花」はとてつもない名曲であることは疑いようがなくても、誰が歌ってもヒットした曲ではないと思う。9.11の数年後で、世の中が保守化し保身に走り、理解できないものに対してどんどん不寛容になっていく中で、“オリジナルを大事にしていこう”“人と自分を比べないで”と歌う曲は、時に反戦ソングと捉えられたりもした。音楽は、時代を映す鏡。あのタイミングで世に出たことは、確かに神様からのメッセージだったのかもしれない。でも、SMAPが歌えばこそ、悩み傷つく等身大の男の姿を描いた『僕の生きる道』の主題歌だったからこそ、あれだけのヒットに繋がったのだ。

◆ファンの“花摘み”活動続く、“5人最後の曲”は歌い継がれる

 SMAPファンの「世界に一つだけの花」購買運動は、実際にその活動に勤しんでいる人たちの間では“花摘み”と呼ばれ、実際、本作の累計売上は297.5万枚(12月12日付)。もう少しで300万枚に届こうとしている。

 そして、この曲が、21年続いた『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の最後を飾る曲になったというニュースが流れてきた。12月1日、SMAP5人での最後の歌収録がフジテレビで行われたと。番組は、放送終了をもって終わる。でも「世界に一つだけの花」が、“SMAP5人での最後の曲”と報道されるのには不満がある。“スマスマ”最後の曲かもしれないけれど、SMAPは解散という形をとることになっているけれど、5人は今もしっかり前を向いて生きていて、彼らの歌は、いつまでも歌い継がれる。先日“スマスマ”で、故・坂本九さんの「上を向いて歩こう」を、SMAPが久保田利伸と一緒にカバーしていた。久保田はもちろんのこと、5人が5人とも透明感のあるいい声で、見事に曲にハマっていた。SMAPは、すごいシンガーの集まりだとあらためて思った瞬間だった。彼らの歌には、いつも発見がある。

 「世界に一つだけの花」も「上を向いて歩こう」もどちらもまぎれもない国民的ソングだ。来年以降、SMAP5人が揃って歌う姿が見られなくなっても、SMAPのメンバーは同じ空の下で全員が胸を張って生きている。誰も、ファンが愛した本当のSMAPを、終わらせることなどできない。もしかしたら、何かの拍子で“世界〜”を超えられる楽曲を、突然発表したりしてくれるかもしれないし、生きてさえいれば、そんな可能性だってゼロではない。「世界に一つだけの花」超えを狙えるのは、他でもない、SMAPしかいないのだから。
(文/菊地陽子)



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