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アプリを軸にした展開で注目を集める音楽集団『nowisee』 アーティストの音楽の表現手法の変化とは?

 ここ数年、映像、小説、漫画、イラストなど、音楽を多角的なアプローチで表現するアーティストが増加している。例えば、クリエイター・じん(自然の敵P)は「ニコニコ動画」に動画投稿した「カゲロウプロジェクト」がCD、小説、コミック、さらにはアニメ化と、多岐にわたるヒットを記録。ロックバンド・amazarashiは、ライブや作品とリンクした書き下ろし小説を発表するなど、“音”だけに留まらない視点でひとつの作品を創り上げていくことで、世界観を増幅させているのだ。こうした中で、バラバラに点在していた要素をひとつのスマートフォン向けアプリに集約して展開するなど、新たな見せ方のモデルを構築することでコアファンを獲得するアーティストも出てきた。本特集では、そんなアーティストの新たな音楽の表現手法に迫っていきたい。

nowiseeが2015年8月に第1弾として発表した「バイブレーション」MV

nowiseeが2015年8月に第1弾として発表した「バイブレーション」MV

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■音楽以外の要素を取り入れることで広がる作品の世界観

 インターネットの動画サイトが定着したこともあって、ロックバンドや動画サイト発のアーティスト、クリエイター集団など、音楽表現において“音”だけに留まらない多角的なアプローチで世界観を構築するアーティストが増えている。音楽にアニメーションやドラマなどオリジナリティ溢れる映像をつけて動画サイトなどで発表し、さらにそのコンセプトに沿って小説、コミックと広げていくことで、ひとつの“物語”とも言える音楽の世界を創り上げていく――音楽表現に聴覚以外の五感を刺激する要素を取り入れることで、どっぷりと世界観に入り込める作品群を完成させるのだ。

 イメージの固定を避けるため、あまりメディアへの露出を行わない、“覆面”とも言えるアーティストが多いことも特徴のひとつだろう。例えば、初音ミクをはじめとするボーカロイドソフトを使って制作した楽曲をイラストやオリジナル映像とともに「ニコニコ動画」に投稿し、“ボカロP”として注目を集めるクリエイターたち。じん(自然の敵P)の「カゲロウプロジェクト」、150Pの「終焉ノ栞プロジェクト」、Last Note.「ミカグラ学園組曲」など、多くの作品が音楽、小説、コミックとともに展開され、各分野でヒットを記録、アニメ化される作品も出てきている。

 また、最近ではサカナクションSEKAI NO OWARIといったロックバンドからPerfumeきゃりーぱみゅぱみゅといったポップスまで、MVの世界観やCDパッケージの質感にまでこだわり、視覚面への訴求とともに音楽を発信することはもはや当たり前となっている。さらにサカナクションはライブでいち早く“NINJA LIGHT”“オイル・アート”を取り入れたり、サラウンドサウンドを導入した先進的な演出で話題を集めたり、前述のamazarashiのように小説を発表するなど、さらに一歩踏み込んだ挑戦をしているアーティストも多い。様々な技術が発達した今、各アーティストが新たな音楽表現の手法を模索しているのだ。

■現段階での音楽表現の完成系? クリエイター集団・nowiseeの画期的なプロジェクト

 こうした中で、新たな試みとして注目を集めているのが、音楽、映像、ノベル、コミックをスマートフォン向けアプリに集約することで、立体的に作品に触れ、ファンが世界観により没入できるようにしたクロスコンテンツプロジェクト『nowisee(ノイズ)』。手掛けているのはクリエイター6人組ユニット・nowiseeだ。ビジュアルは彼らをイメージしたイラストのみ、プロフィールについても、担当パートと“各パートにおけるプロフェッショナル集団”“個々に携わってきたCDの売上枚数は1500万枚を超える実績を持つ”と明かされているのみだが、昨年8月8日8時8分8秒に最初の作品「バイブレーション」を公開して以降、公式アプリ『nowisee』を通して毎月1作品、24ヶ月連続で作品を発表していう真っ只中だ。

 『nowisee』はアプリと言っても“アプリアルバム”としてひとつの作品として位置づけられており、主にベースとなる音楽、アニメーションとともに展開されるリリックビデオ(MV)、ノベル、コミックで構成。この4つの軸が合わさることにより、物語を立体的に見せている。コンテンツは毎月「8」のつく日に公開。ストーリーはまだ謎が多く、すべてが明らかになってはいないが、『掌の中に広がる世界』をテーマに、第1弾の映像作品「バイブレーション」はビルから少女が飛び降りるシーンからスタートしており、“人生が終わった”と思った瞬間に始まる新たな世界を舞台に、やがて登場人物の運命が交差していくようだ。8月10日には、1stアルバム『掌の戦争』を初のCDパッケージとして発売した。

 nowiseeが画期的なのは、これまで“プロジェクト”としながらも各メディアに点在してしまっていた要素を、スマートフォン向けの「アプリ」に集約したことだろう。アプリで“ホーム”となる場所を作り、別々の入り口から入ってきた客にそのホームを印象付けていけば、単なるWEBサイトに情報を集めるよりもポータルサイト的な性質が増すし、ファンの囲い込みもしやすい。そういった意味では、昨今増加している多角的な音楽表現における、現段階での“完成系”といってもいいものかもしれない。もちろん、そのベースには参加クリエイターが作り出す質の高い作品があってこそだ。今後はアプリをはじめ、こうしたクロスメディア展開の究極を目指すアーティストが増えていくかもしれない。

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