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BD発売後に興収が大幅増 『ガールズ&パンツァー』はなぜヒットした?

 プロレスラーの蝶野正洋が目を輝かせながらキャラクターの魅力を語り、舞台の茨城県・大洗にはファンが押し寄せ、SNSでは「ガルパンはいいぞ」という言葉が飛び交う……現在、女子高生たちが仲間と“戦車道”を極めていく過程を描いた『ガールズ&パンツァー』(以下、『ガルパン』)が大ヒットとなっている。昨年11月に公開された劇場版はこの5月に興収20億円を突破。5月27日に発売した劇場版のBDは初週で16.2万枚を売り上げる爆発的ヒットとなったが、映像作品発売後の全国再上映で興収を1億伸ばすなど、さらに息の長いヒットとなっていきそうな気配だ。『ガルパン』はなぜここまで人気を集めたのだろうか? 気になるけど今さら聞けない…そんな『ガルパン』に改めて迫ってみたい。

■戦車テーマでありながら死や戦争には直結しない“スポ根”

 『ガールズ&パンツァー』はアクタス制作のオリジナルアニメとして、2012年10月期にTOKYO MX、テレビ大阪他で放送され、アニメファンの間で「面白い」と話題に。アニメと並行して、別キャラクター視点の漫画、同じく別キャラクター視点からの小説も展開されたほか、ソーシャルゲーム、PS Vita向けゲーム、OVAなど、多岐にわたるメディアミックスを実施。2015年11月には完全新作となる映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』が公開され、約半年かけて興収20億を突破するロングヒットとなった。

 しかし、アニメや漫画を中心に大規模メディアミックス展開が行われることは、今では大して珍しいことではなくなっている。では、『ガルパン』はなぜここまで大きなヒットとなったのか? まずひとつめの理由は、美少女が戦車に乗って戦うという“萌え×ミリタリー”という親和性の高い定番手法を軸にしながらも、決して重くならない“スポ根”ものの範囲に収まっていることだろう。ガールズ=女の子、パンツァー=戦車。同作の世界では、戦車は華道や茶道のように“戦車道”として大和撫子の嗜みのひとつとして扱われており、流派なども存在。主人公・西住みほはそのひとつ「西住流戦車道」の家元に育ち、仲間の女子高生たちとともに全国大会で優勝を目指す、というストーリーとなっている。

 もちろん、戦車“道”であるから、女子高生たちが戦車に乗ってどんなに激しい戦闘をしても、重傷者や死者は出ないし、戦争の重苦しさはない。そもそもそんな血なまぐさい展開は求められていないのだ。『ガルパン』は仲間とチームを結成して、結束を高め、友情を深め、成長していく――ベースはまさに王道のスポ根フォーマット。スポ根でありながら、単なる青春部活動ものに留まるのではなく、“戦車”というインパクトの高いキーアイテムをもって美少女たちが上を目指す姿が描かれたことが、アニメファンだけでなく、女性の興味をも呼んだ。日常と“非日常”の戦闘を通して友情などを描くさじ加減は、さすが『けいおん!』を手掛けた吉田玲子氏による脚本といったところだろう。

■ミリタリーファンをうならせたミリタリー要素のリアリズム

 また、先述の“萌え×ミリタリー”という手法により、ミリタリーファンをはじめとする幅広い層の興味を惹きつけたことも大きかった。アニメ界においては“萌え×ミリタリー”というのは定番だ。例えば第二次世界大戦時の戦闘機をモデルにした“ストライカーユニット”を装着し、半人半機のスタイルで魔女が空を翔ける『ストライクウィッチーズ』や、同じく大戦時の軍艦を擬人化した“艦娘(かんむす)”が躍動する『艦隊これくしょん -艦これ-』、海を守る職業“ブルーマーメイド”を目指して女子たちが軍艦に乗る『ハイスクール・フリート』など、枚挙にいとまがない。

 しかし、萌えとミリタリーを掛け合わせればヒットするかと言われれば、必ずしもそうとは限らない。安易な萌え×ミリタリーに走ってしまうと、アニメファンからも、ミリタリーファンからも批判の対象になる。そこで重要となるのは、ミリタリーファンに「わかってる!」と思わせる、ミリタリー要素における徹底したリアリズムだ。『ガルパン』に登場する戦車は細部まで丁寧に描写されており、走行音や発射音、着弾音など“音”にもこだわっている。ミリタリーファンからはかつて活躍した戦車が轟音を鳴らしながら動いているだけで歓喜するとうい話も聞くが、迫力ある戦闘シーンへの評価は高く、特に劇場版は映画のシーンに合わせて座席が動いたり、特殊効果の演出が施されたりする「4DX」のリピーターが多かった様子。ひとつの物事を徹底的に追求する“オタク気質”が高いアニメファン、ミリタリーファン、さらには映画ファンにまで訴求したことで、ヒットコンテンツへと成長していったのだ。

 もちろん、これらの前提として、ヒットメーカーとして知られる水島努監督をはじめ、シリーズ構成・脚本の吉田氏など、精鋭スタッフによるコンテンツとしてのクオリティの高さあってこそだ。“聖地”となっている大洗は、東日本大震災で大きな被害を受けたあと、『ガルパン』が復興の手助けのひとつになったとも聞く。『ガルパン』の成功から学ぶことは多そうだ。



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