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廣木隆一監督、『火花』ドラマ化オファーに「映画じゃないんだ?って(笑)」

 日本のエンタテインメントシーンに大きな渦を巻き起こした、お笑いコンビ・ピース又吉直樹『火花』の第153回芥川賞受賞。その映像化で白羽の矢が立った、総監督を務める廣木隆一監督と、又吉の投影とも言われる主人公を演じた林遣都。動画配信サービス・Netflixでのドラマ化と自身の監督起用にお互いに驚きながら、原作者である又吉との交流や映像化への想いを語ってくれた。

◆又吉さんが出会ってきた芸人の想いがつまった主人公(林遣都)

――又吉さんの芥川賞受賞にマスコミは大騒ぎし、瞬く間に売上200万部を超えるベストセラー(2016年1月現在251万部)になりましたが、大変な作品のオファーを受けてしまったという思いはありませんでしたか?
【林遣都】 又吉さんの受賞会見をテレビで観ていて、すぐに映像化されるんだろうなと思っていたら、まさかの自分のところに話が来て(笑)。これだけ世の中から注目される作品ってなかなかないですし、芥川賞受賞作の映像化に関われるということもスリリングですし、なんとしてもやりたいと思いました。オファーをいただいて、役柄が関西人なので、必死に“関西弁しゃべれます”アピールをしました(笑)。
【廣木隆一監督】 Netflixのドラマで声をかけていただいて、最初は「え、映画じゃないんだ?」と思いました(笑)。でも、作品を読み直してみると、この内容を映画で2時間に収めるのは難しい。10本のドラマのほうが細かい部分をしっかりと描き出せるので、この作品には合っているかなと。だれもが映像化はどうなるんだろうって考えていたと思うんですけど、僕もまさかネット配信ドラマで自分に話が来るとは思っていませんでした(笑)。

――又吉さんと面識はあったんですか?
【林遣都】 相方の芸人役で共演した井下好井の好井(まさお)さんのライブを観に行ったときにお会いしました。その場では挨拶だけで、「ドラマはおまかせします。楽しみにしています」とおっしゃっていて。その後、完成した作品の試写のあとに好井さんと一緒に会わせていただいて、そこでゆっくりお話させていただきました。ほとんど又吉さんと好井さんがしゃべっていたんですけど、その姿は劇中の神谷と徳永みたいでした。そのときは、そんなおふたりの様子を撮影の前に見ておきたかったと思ったんですけど……。よくよく考えると、もし先に見ていたら演じるときに影響されていたかもしれないから、見ていなくてよかったかなと。作品については、物語のあのシーンはこういうことが実際にあってというお話をいろいろ聞かせていただきました。

――徳永は又吉さん自身を投影しているのではという声もありますが、演じられた林さんはどう感じていますか?
【林遣都】 原作を読んで、僕は又吉さんの想いを徳永に重ねているところがあるのかなと思っていて。すごく意識はしていたんですけど、実際にお会いしてお話をしてみると、完全にご本人ではないのかなと感じました。又吉さんが出会ってきた、いろいろな芸人さんの想いと要素がつまった主人公なのかなと。
【廣木隆一監督】 撮影前に又吉さんと食事に行っていろいろお話させてもらいました。どんな人なのかなと思っていたんですけど、神谷と徳永の両方をもっている方だなと感じました。自分のもっているものを、ふたりの人物に書き分けているとも言えますかね。それは、『火花』というドラマの全体像を形作る際のイメージのひとつになりました。キャラクターの参考にもさせていただいています。
【林遣都】 又吉さんと好井さんは長年ずっと親しくされていて、神谷と徳永みたいな関係性をよくわかっていらっしゃいました。なので、僕が徳永を理解できない、つかみにくいと思ったところはすべて好井さんに教えてもらいました。好井さんとは本当に濃い時間をすごさせていただいて感謝しかないです。

◆映画じゃないのに引きの画ばかりになってしまう(廣木監督)

――廣木監督の映画では、長回しやひきの画が特徴的ですが、ネット配信ドラマということで撮影時の意識の違いはあったのでしょうか。
【廣木隆一監督】 映像に関しては、そんなに違いを意識していません。ただ、いつも通りに撮っていくと僕は引きの画ばかりになってしまう(笑)。映画館のスクリーンとは視聴サイズが違うので、重要なシーンはしっかり寄って撮ろうとは思っていました。また、ネット配信は映画と違ってどこで観るのをやめるのも自由だから、ずっと観続けたくなるようなメリハリをつけていきました。その一方で、この作品は空気感が肝だと思っているところもあって。又吉さんの言葉と文章のリズム感は、カットわりではなくて空気感で表すほうが向いている。ダラダラ歩いているところを引きで撮るのは、作品に合っていると思っていました。
【林遣都】 芸人さんの10年間を描く作品で、ほぼ順撮りで4ヶ月間撮影していました。演じる側としては、映画やテレビドラマと比べてなにかを変えるということはありませんでした。僕はほぼ全シーン出ずっぱりでしたが、廣木監督の長回しの撮影は、すべての気持ちがそこに完成されていないとできないから、怖いことをやっているなと……。現場では自分にそれが出来ているかわかりませんでしたが、廣木監督の進め方のおかげで自然にそういう気持ちになっていました。

――廣木監督のほか、白石和彌監督、沖田修一監督ら日本映画界を代表するそうそうたる顔ぶれの監督さんが参加されています。それが逆に林さんの負荷になったことは?
【林遣都】 初めは戸惑いもありました。1話の撮影が終わると次々に監督さんが変わっていきますので。ただ、共通しておっしゃられていたのは、生活感、空気感がにじみでるようにたんたんと進んでいく物語なので、なにかを表現しようとしなくていいと。それまでの撮影そのままの流れで好きに演じていいという環境を作ってくださっていました。これだけの監督の方々とひとつの作品を作ることができて、短い期間でこんな経験ができるのは本当に幸せなことだったと思います。

――林さんが今回の作品を経て得たこととは?
【林遣都】 どこまでカメラがまわるかもわからないなかで、現場に立ったらいつまでもその人物でいられるような向き合い方です。それができれば間違いないというのを経験させていただきました。これから先に活かせることをたくさんつかめたと思います。

――今回はドラマ化でしたが、廣木監督は本作の映画化にご興味は?
【廣木隆一監督】 ドラマでやり切りましたから。でも、オファーがあったらやります(笑)。



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