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ドラマで“ゆとり枠”が機能 世代としてキャラクター化

 先月、馳浩文部科学相が脱ゆとり教育を明言したばかりだが、“ゆとり世代”と言われる若者は、何かと世間では話題となり揶揄されがち。今期のドラマでも、この世代をテーマにしたドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)が放送されている。また『世界一難しい恋』(日本テレビ系)や『グッドパートナー 無敵の弁護士』(テレビ朝日系)にもゆとり風の登場人物を配置。劇中では過剰にデフォルメされていて、現実社会にはそこまでの人物はそうそう存在しないだろう。だが、わかりやすいキャラ付けがなされた“ゆとり枠”は、ドラマでは有効に機能しているといえそうだ。

◆『世界一難しい恋』『グッドパートナー』、今期ドラマに“ゆとり枠”が続々

 この“ゆとり枠”、ドラマではどのように扱われているのだろうか。『ゆとりですがなにか』には第一ゆとり世代といわれる29歳の男子3人がメインに描かれているが、よりわかりやすい“ゆとり”も登場している。それがみんみんホールディングスに勤める2年目社員の山岸ひろむ(太賀)。飲み会に誘われても相手の顔を見ず、携帯をいじりながら「それって強制ッスか?」とあっさり参加を断り、先輩の坂間正和(岡田将生)を凍りつかせている。『世界一難しい恋』に登場する“ゆとり枠”といえば、鮫島ホテルズで働く入社2年目の三浦家康(小瀧望)。空気を読まず、マイペース主義で社長の鮫島零治(大野智)に「どこ行くんだ?」と聞かれても「昼飯ッス。今日はなんか朝から中華のギア入ってて」と、ほぼタメ語状態。『グッドパートナー 無敵の弁護士』で咲坂健人(竹野内豊)のアソシエイト弁護士、熱海優作(賀来賢人)は礼儀正しいものの、調子の良さが玉にキズ。クライアントに対しても、空気を読まない発言で咲坂を怒らせている。彼らのやりとりを見て、“ゆとりならあり得る”と思った人も多いのではないだろうか。

 世間で“ゆとり世代”といえば、諸説はあるものの10代前半から20代後半の人を指すことが多い。怒られることに慣れていなく打たれ弱い、合理主義で効率重視、根拠のない自信、マイペースなどが一般の持つイメージだろう。『ゆとりですがなにか』の山岸などは、まさにすべてに当てハマった“ゆとり”といえる。もちろん、嫌なことは嫌とはっきり言えたり、効率よく仕事をこなせるプラスの一面もあるが、マイナスイメージのほうが大きいのも事実。だからこそ、ドラマでは主人公との考え方や行動の相反、不一致がストーリーのフックとなり、オチにもなりやすい。

◆視聴者も納得、この世代への共通認識がわかりやすいキャラ付けに

 実際、ドラマ制作サイドも“ゆとり枠”は、とても使いやすいキャラだという。「普通だったら会社で目上の者に対しタメ語なんて、まずありえません。チャラかったり、空気を読まない行動に違和感を感じたり、反感を買ってしまうことがあります。でも、彼らをゆとり世代と打ち出せば、視聴者が不思議と納得してしまうんです。この世代のイメージが共通認識としてあるおかげで、突出したキャラクターを作りやすいんですよ」(ドラマ制作者)と明かす。

 いつの時代もビジネスシーンを舞台にしたドラマは人気があるだけに、どうしても目上の者と若者の対立構造が描かれやすい。そのとき、いわゆる“今時の若者”をより明確に定義づけ、可視化した“ゆとり枠”は効果的に使えるということだ。

◆80年代“新人類”に始まる、世代としてのキャラクターの存在

 そもそも、従来と違った感性や価値観を持つ若者を一括りにする傾向は、今に限ったことではない。1986年、新語・流行語大賞に選出された“新人類”の世代もそうだ。その影響はドラマにも波及し、80年代トレンディドラマは新人類世代へ向けられて作られたといわれる。個性的で自由であるという特徴ゆえか、“ゆとり枠”とは逆に、“新人類”的キャラはドラマのメインを張り、旧世代の常識を破る姿がプラスに描かれた。これもある意味、世代のイメージで作られたキャラクターであり、作風なのだろう。

 当時の“新人類”に対しても年配者からの風当たりは強かったものだが、ゆとり世代もそれは同じ。ドラマでの描かれ方に反発を感じる同世代も多いだろう。もちろん、“ゆとり枠”として描かれるほどの人物は現実にはなかなか存在しないし、過剰にデフォルメして、よりわかりやすくしてこその、キャラクター化なのは間違いない。

 学園ドラマが少なくなった今、仕事場を舞台とした社会人ドラマが主流となっている。その中で、主人公と対照的に描ける“ゆとり枠”は、脇役とはいえ重要な役どころ。彼らの成長が物語に新たな展開を生んだり、幅を持たせることもできる。さらに、若手の人気キャストを違和感なく起用できるなど、制作サイドにとってはすべてにおいて都合がいいキャラといえる。今後もそんな“ゆとり枠”がどう使われていくか、注目していきたい。
(文/今 泉)



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