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岸部一徳の怪しい魅力、特異な演技で光る“ラスボス”感

 今期、好調続きのドラマ『99.9−刑事専門弁護士−』(TBS系)。相変わらず個性的で濃い演技をする香川照之や、ラーメンズ片桐仁の怪演なども話題になる中、ひときわ重厚な存在感を放っているのが岸部一徳だ。岸部は『相棒』や『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』(共にテレビ朝日系)、『医龍 −Team Medical Dragon−』(フジテレビ系)シリーズなど、話題のドラマや映画に出演する名脇役だが、いずれも腹の中は読めないが物語の鍵を握るクセモノ感を見せ、最終回近くに正体が明らかになるといった“ラスボス”的な存在として重宝されている。そんな彼が醸し出す“得体の知れない”特異な雰囲気はどこから漂ってくるのだろうか?

◆実は日本を代表するベーシストとして活躍 “サリー”の愛称で親しまれたアイドル時代

 岸部を語る上で欠かせないのは、1960年代後半から、当時グループサウンズのトップに君臨していたザ・タイガースのベーシストだったこと。岸部修三改め“サリー”の愛称で親しまれ、ファンたちからの黄色い声援を浴び、ボーカルの沢田研二をはじめとするメンバーから慕われるリーダーだったのである。1971年の解散後もPYGや井上堯之バンドなど伝説的なバンドで活躍。

 ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンといったハードロックに影響を受けたベースのテクニックは高く評価され、人気ドラマ『太陽にほえろ!』や『傷だらけの天使』(共に日本テレビ系)ではメインテーマでベースを担当。沢田とは現在も交流があり、たびたびバックで弾くこともある。2003年には、木村拓哉との掛け合いが話題になった「富士通 FMV」のCMで、木村、Charのギターと共にベースの腕前を披露している。

◆フィクサーから小悪党まで…確固たる存在感で名監督からラブコール

 そんな“日本を代表するベーシスト”でもあった岸部が、俳優に転向したのは1975年。久世光彦プロデュースのドラマ『悪魔のようなあいつ』(TBS系)への出演以降、エリートサラリーマンや官僚、世間を揺るがす巨悪事件の黒幕からセコい小悪党まで、さまざまな役をこなすバイプレーヤーとして活躍し、大林宣彦や市川崑、北野武など名だたる監督からラブコールを受けるまでになる。

 そして1990年、映画『死の棘』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、主演俳優としても頂点に立つ。それでも『相棒』での官房長役のように特命係を見守る立場ながら、ときには“上からの圧力”で捜査を妨害したりストップをかけたりする、どこか“裏”の匂いをプンプンさせる存在であったり、『ドクターX〜』のように、米倉涼子演じる天才外科医が所属する名医紹介所の所長役で、どぎつい羽織を着ながらオネエ言葉で麻雀に興じるなど、うさん臭さ全開の演技を披露するあたりは、やはりベーシスト的な立ち位置の名脇役の真骨頂とも言え、その存在感はまさしく物語のキーパーソンとなるラスボス然としている。また、“元アイドル”というギャップも影響しているのかもしれない。

 出演中の『99.9』でも、弁護士会の会長の座を狙うため、本来は企業法務専門だが、あまりお金にならないような刑事事件も弁護して名声を高めようといった“裏がある”感全開の法律事務所の所長なのだ。その抜け目のない駆け引きの手腕は、部下の香川に「タヌキおやじ」と言われ苦笑いされるほど。

◆特異な“怪しさ”は高身長と能面的なルックスにあり?

 「岸部さんの魅力のひとつは、180cmを超すあの高身長にもあると思います。69歳という岸部さんの年齢であれだけ高身長の人はそんなにいない。それだけでも威圧感があるし、あの能面のようなルックスも怪しさ満点で、やっぱりどこか怖い。それでいて意外とソフトな話し方で、セリフに全然力が入ってないようにも感じます。悪く言えば棒読みなんですが、よく通る低音で淡々としたセリフ回しが、逆に腹の中が見えない、何を考えているか分からないミステリアスな雰囲気を醸し出しているのではないでしょうか」(ドラマ制作会社スタッフ)

 高身長かつ無表情とも見えるルックス、セリフもソフトで力が抜けている。そのため、演技によって“冷酷無比”な人物から“繊細で気弱”な中高年まで、振り幅の広い役をこなすことができるのだ。

 「でも、やっぱり岸部さんの魅力と言えば、底の見えない“クセモノ”感にあります。淡々と抑えた演技で圧倒的な存在感を放つ。あそこまで“ラスボス”的なたたずまいを見せる俳優さんは、ほかにはいないというのが実際のところではないでしょうか。だから重宝する。よく熱演という言葉が使われますが、岸部さんには“冷演”や“静演”といった言葉のほうが似合っているかもしれませんね」(同)

 まもなく古希を迎える岸部。今後はどのような作品でどのような役を演じていくのだろうか。いつまでも“怪しく”“不気味な”魅力を保ち続けてほしい俳優である。



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