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弁護士ドラマの“見せ場”に変化 緊迫の法廷シーンからそこに至るまでの“過程”を描く路線に

 今期放映されている2作の“弁護士ドラマ”、『99.9−刑事専門弁護士−』(TBS系)と『グッドパートナー 無敵の弁護士』(テレビ朝日系)が好調だ。これまでの弁護士ドラマと言えば、立件された事件の背景を探りながら、最大の“見せ場”である法廷シーンでクライマックスを迎えて、主人公の熱い弁舌で有罪から無罪へと逆転(検事が主役の場合は逆)、そしてカタルシスを得るというのがお約束だった。ところが先の2本は、法廷シーンこそあるものの、見せ場は法廷に至るまでの“過程”。今、弁護士ドラマに何が起きているのだろうか?

『99.9−刑事専門弁護士−』で弁護士役の榮倉奈々(C)ORICON NewS inc.

『99.9−刑事専門弁護士−』で弁護士役の榮倉奈々(C)ORICON NewS inc.

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◆現実路線に変更! 実際の弁護士は推理をやっているヒマはない!?

 『99.9』は、松本潤演じる若手弁護士が、起訴されると99.9%有罪になると言われる日本の刑事事件に、持ち前の観察力と執念で挑んでいくというストーリー。主な舞台は弁護士事務所で、“お決まり”の法廷シーンは第1話冒頭でちょっと出てきたぐらいで、皆無といっても過言ではない。見せどころと言えば、松本の相棒であるパラリーガル(弁護士の補佐役)のラーメンズ片桐仁とともに、犯行現場をコミカルに再現するシーンくらいで、あくまでも主軸は事件の裏に隠された人間ドラマと裁判に行くまでの“過程”が中心となっているのだ。

 一方、『グッドパートナー』は、竹野内豊松雪泰子という弁護士“元”夫婦が主人公で、扱う案件は「企業法務」。つまり、著作権やら損害賠償といった企業間の民事的な争いであり、弁護士報酬を“売上げ”と呼ぶような“ビジネス”の世界の話で、ある意味『99.9』とは真逆の設定。だが、こちらはこちらで“裁判になる前にケリをつける”のが仕事なので、舞台は企業の会議室だったり、料亭で接待を受けながらの駆け引きといった場面が多く、やはり法廷シーンは殆どないのである。

 「要するに、今のドラマはより現実の世界に近づいているということでしょう。刑事事件ならともかく民事なら、裁判になる前に少しでも有利な条件で決着させるために弁護士を雇うのが普通。ドラマの松本潤演じる若手弁護士にしても、それほど裕福な感じがしない庶民派風ですが、現実でも若手は意外なほど低収入なんです。一般的なイメージである“弁護士は高給取り”という時代は、2000年代の司法試験制度改革で合格者が増加して以来、とっくに終わっています。それに現実では、裁判の資料集めや答弁書の作成に追われて、事件の推理なんてやってるヒマはないですけどね(笑)。実際の裁判も、“次の弁論は○月○日にやるので、被告側は反論するなら○○をそれまでに用意してください”といった事務的な連絡がメインですから」(弁護士事務所職員)

◆強烈なキャラ作りをせず、現実的な“過程”を重視

 確かに今回の『グッドパートナー』でも、杉本哲太演じる中堅弁護士は、お見合いした女性の「やっぱり殺人事件とかドロドロの離婚とか弁護してるんですか?」との質問に、「私の扱う案件はそういういかにも……なのではなく、もっとビジネス寄りの企業法務です」と答えるが、先の2作に法廷シーンがないのも、よりリアルな現実に沿ったもということかもしれない。

 ドラマの法廷論争シーン自体は、サスペンスものの2時間ドラマや刑事ドラマでは今でも健在。弁護士ドラマも90年代で言えば、シリーズ3作のほかスペシャル版も放映された人気ドラマ『七人の女弁護士』(テレビ朝日系)があり、2000年代には主演が賀来千香子から釈由美子に交替してリメイクもされたが、やはり法廷シーンが見せ場であった。そして2012年、この“法廷シーン”をメインに掲げて大ヒットした弁護士ドラマがあった。堺雅人主演『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)である。

 「この作品は2012年から2014年まで、シリーズ2作とスペシャル版が放映される大ヒットドラマとなりました。堺雅人さん演じるところの“お金大好きな奇人弁護士”が、歌舞伎役者のように裁判所で立ち回るシーンが見せ場。法廷でアキバ系アイドルの歌を踊ったり、大声を出して歩き回ったりして、広末涼子さん演じる裁判官に注意される。そんな堺さんの強烈なキャラと滑舌の良いセリフ回しを引き立たせるには、法廷の弁護シーンがピッタリだったんですね。法廷シーンを見せどころとした弁護士ドラマの代表作とも言えるでしょう」(ドラマ制作会社スタッフ)

 そういった意味では、今回の2作は強烈なキャラ作りをすることもなく、より現実的な“過程”を重視した“弁護士のドラマ”に仕上がっていると言えるかもしれない。視聴者も“いかにも”的なキャラには多少辟易し始め、等身大のリアルな物語路線を求めるようになったということか。ある種、弁護士自体に過剰なキャラ設定を求めるよりは、現実味のある物語の方が、実生活にも繋がり親しみやすく受け入れ安いのだろう。
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