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スマートフォン時代のアーティストのあり方

 音楽番組が減少しTVで新曲を披露する機会が減っていたり、CDマーケットが縮小する中でコンサートビジネスなど新たな収益モデルの模索・転換が必要になったりと、発信する側も変化を迫られている音楽シーン。こうした中で、ここ最近、“スマートフォン”を活用しネットにバズを起こしていくアーティストが増えてきた。例えば、女性6人組アイドルユニット・lyrical schoolはスマホに特化した“縦型動画”MVが話題に。さらに岡崎体育はネットで公開した“MVあるある”のミュージックビデオが話題を集めている。

■“縦型動画”増える中でなぜ話題? アイディア勝利のリリスク

 ここ20年ほどでネットを取り巻く環境は激変した。便利なツールが続々と登場し、情報を簡単に発信できるようになった一方で、お金を払わなくても音楽が簡単に聴けてしまうようになるなど、音楽業界にとっては必ずしもプラスの面ばかりとはいえない状況だった。しかし、より情報がダイレクトに届き、リアルタイムで拡散されていくスマホ時代に移行した今、“追い風”が吹いてきているようだ。これまでの概念にとらわれない柔軟な姿勢と発想から生まれた企画ならば、例え無名の新人でも大いにネットでバズを起こしていける可能性が高くなっているのだ。

 その筆頭と言えるのが、女性6人組アイドルユニット・lyrical school(以下、リリスク)の“縦型動画”MVだろう。スマホの縦画面で観ることに特化した“縦”型動画に関しては、ここ最近、様々なアーティストが取り組みを本格化させているが、リリスクの場合、単に縦型の画面に合わせた動画にしただけではなかった点が、“面白い”と話題を集めた理由だった。撮影自体をスマホで行い、カメラやFacetime、Twitter、Vineといったアプリが立ち上がったり、通話画面になったり、通知が割り込んできたり…まるで乗っ取られたように錯覚してしまう。パソコンよりパーソナライズされたスマホだからこそ感じられる感覚だし、この感覚が瞬く間に情報が拡散されていった大きな要因だろう。

 また、ネットの動画サイトで音楽を楽しむことが当たり前になった今、閲覧を制限するのではなく、“プロモーションツール”として発売前にフル尺で公開するアーティストも増えている。こうした背景から、従来よりもよりハイクオリティなMVが求められているが、以前、とある映像ディレクターに話を聞いた時、「求められるクオリティに対して、予算が少なすぎる」と嘆いていた。少ない予算の中で、どれだけネットでざわざわ感を起こせるユニークな映像を制作できるか。そんないわゆる“テレ東アプローチ”とも言える手法で話題を集めたのが、新人アーティスト・岡崎体育の「MUSIC VIDEO」MVだ。本人も費用が少ない中で面白いMVを制作し、どうバズを起こして知名度を上げていくかの重要性については語っているところだが、今回のMVはまさにアイディアの勝利と言えるだろう。

■コンサート「撮影OK」で情報拡散 日本でも続々と実施

 もちろん、こうした試みが話題になるには、TwitterやFacebookといったSNSで拡散されることが前提となる。ただ単に拡散されるだけでなく、誰もがスマホを四六時中手にしていることを念頭に置き、そのコトが起った瞬間からいかにリアルタイム感を失わずに広げていけるかが重要だ。こうした状況がある中で、最近、増えてきているのが、コンサートの“撮影OKタイム”。かつては日本のメジャーシーンで活躍するほぼすべてのアーティストがコンサートを「撮影禁止」としていたが、最近では“撮影OKタイム”や“撮影OKデイ”を設けるアーティストが増えている。

 実はこの「撮影OK」の動き、海外ではすでにポピュラーになっているのだが、日本で始まったのはここ2、3年のこと。ただ撮影するだけでなく、「TwitterなどSNSへの投稿もOK」という注釈つきで、拡散されることを見込んでいる。単にコンサートを開催するだけでなく、大箱でファンが同じタグをつけて撮影した写真を同時にSNSに投稿すれば、いわゆる“トレンド”に上がってくる可能性も高くなる。ただ一方で、とあるアーティストが“撮影OK”にした結果、その後のコンサートでファンが高性能なカメラを持ち込み、フラッシュが演出の妨げになっている残念な例もあった。そういったデメリットも加味した上で、新たな宣伝の手法のひとつとして柔軟に受け入れていく姿勢が求められるだろう。

 露出できるメディアが減少傾向にあるからこそ、ユニークな発想で自ら“話題”を作り、ブレイクへとつなげていく――スマホ時代において、アーティストのあり方自体にも変化が求められているようだ。



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