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KANA-BOON、若手髄一のライブバンドの地位を獲得した「フェス」戦略

 シングル「なんでもねだり」「ダイバー」などを含む3rdアルバム『Origin』が好調なセールスを記録、また、オリコンの夏フェスに関するユーザーアンケート「ライブがスゴいと思う若手ロックバンドは?」で1位を獲得するなど、10代〜20代のリスナーを中心に強い支持を得ているKANA-BOON。昨年3月には大阪城ホール、日本武道館でのアリーナ公演を成功させ、4月の千葉・幕張メッセ国際展示場9〜11を皮切りに行われる全国ツアーでは、初の海外公演を控えるなど、ライブ動員も着実に上がり続けている。現在の若手ロックバンドのなかででも抜きん出た存在になっているKANA-BOONだが、その理由は、オーディエンスの高揚感を引き出す圧倒的なステージングにあるようだ。

■各地で入場規制 ブレイクに重要な役割を果たした「フェス」

 2013年4月に初の全国流通盤「僕がCDを出したら」を発売した直後から、KANA-BOONは本格的にフェスに参加し始めた。一番最初は『METROCK2013』。メジャーデビュー後も数多くのフェスに出演、各地で入場規制・満員御礼状態を作り出したことで、バンドの知名度は急激にアップした。その最大の武器はスピード感に溢れたビートとキャッチーなメロディを融合させた楽曲。盛り上がりやすいリズム、口ずさみやすいメロディを追求したKANA-BOONの楽曲は、各地のフェスで強い一体感を生み出し、フェスの光景そのものを変化させたと言っても過言ではないだろう。

 ここで特筆しておきたいのは、彼らは最初からフェスでオーディエンスを盛り上げることだけを狙っていたわけではない、ということ。たとえばデビュー直後のKANA-BOONの代名詞だった高速の4つ打ちビートも、当初は純粋に「このビート、気持ちよくない?」というバンド内の欲求から生まれたものだった。メンバー自身の純粋な創作意欲をもとにして、自らがカッコいいと感じるサウンドを追求、それがオーディエンスに伝播していく――そう、音楽を介した直接的なコミュニケーションこそが、KANA-BOONの本質なのだ。シナリオアートとのスプリットシングル「talking/ナナヒツジ」発売時にシナリオアートのハヤシコウスケは「KANA-BOONは衝動的というか、その瞬間のホヤホヤのものを音源にしてリリースしているし、その熱をそのままライブでも表現している」と発言していたのだが、これもKANA-BOONの“直感重視”なスタンスを示すエピソードと言えるだろう。

■フェスの役割を明確化 ワンマンライブで個性を発揮

 一方でKANA-BOONは、フェスの役割や目的を正確に見抜き、的確な戦略を練ってきた。「フェスのセットリストはだいぶ固めてますね。シングル曲だったり、KANA-BOONがわかりやすく伝える曲を入れて、初めて出会った人に“いいな”と思ってもらえるようにしたいので」(谷口鮪)という意図に即した彼らのパフォーマンスの効果、オーディエンスへの訴求力は前述の通り。フェスで勝ち上がり、ワンマンライブへの導線を作るという現在のバンドシーンの基本パターンが定着したのは、KANA-BOONの成功も大きく作用していると思う。

 またワンマンライブではさらにコアな音楽性、メンバー個々のキャラクターを押し出すことで、バンドの魅力をより緻密に表現。昨年の日本武道館公演では、メンバー全員の夢を叶えるという企画(谷口は“鮪”の解体ショー、飯田祐馬はセグウェイでアリーナを1周、小泉貴裕はマジック、古賀隼斗はフライング)を実施することで、ロックバンドの枠を超えたエンタテインメント性も示した。ダイナミックかつタイトなバンドサウンドと相反するような(?)メンバーの親しみやすさもまた、彼らのチャームポイントなのだ。

 KANA-BOONは4月の幕張メッセ公演から全国ツアー「KANA-BOONの格付けされるバンドマンツアー2016」をスタートさせる。バンドを始めたときの原点に立ち戻ることで、音楽に対する衝動を取り戻したというアルバム『Origin』がライブという場所でどのように表現されるのか、興味は尽きない。直感と衝動に溢れた楽曲、オーディエンスを楽しませたいという意思に貫かれたステージングは今回のツアーによって、さらに大きく進化することになりそうだ。

(文/森朋之)



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