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ジブリの「鳥獣戯画」アニメも話題 企業のアニメCMなぜ増加?

 スタジオジブリが制作した丸紅新電力の企業CM「鳥獣戯画 出会い編」が話題を集めている。日本最古の漫画と言われる国宝「鳥獣戯画」。そこに墨画で描かれたカエルやウサギが活き活きとアニメで躍動する様は、“さすがジブリ”との呼び声も高い。今回の事例に限らず、大成建設の企業CMや東京ディズニーリゾート、ガンホー『パズル&ドラゴンズ』など、ここ数年、企業や商品のアニメーションCMを見る機会が増えている。なぜアニメCMが増えてきたのだろうか。

丸紅新電力の企業CM「鳥獣戯画 出会い編」をスタジオジブリが制作し、話題を集めている

丸紅新電力の企業CM「鳥獣戯画 出会い編」をスタジオジブリが制作し、話題を集めている

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■アニメで描かれる良質な短編ドラマ

 食品メーカーのマルコメは、味噌汁『料亭の味』シリーズのCMで、「夜食篇」「単身赴任篇」「母と息子篇」という3作のアニメCMを発表している。アニメのタッチや雰囲気はわりとオーソドックスで、誰でも抵抗感なく観られるもの。内容は、受験勉強する娘と父親とのちょっとした疎通のなさや、ひとり暮らしを始めた新社会人の息子と母親との心の触れ合いなど、言ってみれば、ついホロッとさせられる“良質な短編ドラマ”だ。

 大成建設の企業CMシリーズもマルコメ同様に正攻法な作りだが、「地図に残る仕事。」をテーマに世界各地の建設事業が描かれ、こちらはどこかNHKの『プロジェクトX』を彷彿とさせるスケールの大きな作品となっている。また、ひところ話題になった「マイナビ賃貸」のCMも、『ソラニン』『おやすみプンプン』などで知られる人気漫画家・浅野いにお氏のイラストをアニメ化し、女の子のかわいさには定評のある氏のテイストを十分に活かしつつ、若者たちのひとり暮らしへの“ワクワク感”を見事に表現していた。

「企業のイメージCMの場合、実写で表現しようとすれば、それなりの俳優を起用しなければショボく見えてしまうし、ある種の生々しさが出すぎることもあります。その点、アニメならキャラ設定やストーリーは自由自在だし、企業や商品のイメージを食いすぎることなく、視覚的にも目を引くCMを作りやすい。アニメ=オタクのイメージはもはや昔の話。今の大人は普通にアニメを見て育ってきていますし、アニメを見て育った世代が企業のCMなどのクリエイティブに参加しているという事情もあるでしょう。抵抗感もまったくないし、作品によってはむしろ話題になる。今やアニメCMは完全に受け入れられてますね」(映像制作会社スタッフ)

■激務が問題化 アニメ制作会社にとってはおいしい仕事?

 またこの時世、CMなどの広告制作費も厳しく、訴求力はあってもギャラが高い有名人やタレントはなかなか使えない、という事情もあるだろう。アニメーションなら制作コストを抑えたうえで、記憶に残るようなクオリティの高いCMに仕上げることも可能だ。また、アニメ制作の“激務”“激安”は周知のとおり。アニメ制作側としても、CMの仕事のほうがコストパフォーマンス的にも優良ということは十分に考えられる。いわばアニメCMは、企業、広告代理店、アニメ制作が三方丸く収まる、ウィンウィン関係を築いているのだろう。
「こうしたアニメCMの元祖とも言うべきものは、2006〜2008年にかけて流れた『カップヌードル』(日清食品)のアニメCMです。制作に漫画家の大友(克洋)さんを迎えて、代表作『AKIRA』の世界観そのままに近未来を舞台に描いて見せた。宇多田ヒカルさんの楽曲も相まって、当時は相当な話題になりました。映像があまりにもカッコよく、大反響を呼んだんです」(前出・スタッフ)

 こうして見ると、タレントのイメージや実写の限界に制約されることなく、企業や商品イメージを自由に演出できるぶん、アニメCMの可能性には計り知れないものがありそうだ。ヒューマンドラマからSF、はたまた“萌え”系まで、今後は様々なジャンルからのアニメCM作品が登場してきそうである。“クールジャパン”として世界中に日本アニメが浸透している中、今後、ワールドワイドな展開を見越してアニメCMを採用する企業も増加していきそうだ。アニメCM発の強力なコンテンツも誕生するかもしれない。
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