ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

『真田丸』黒木華&長澤まさみ、“水と油”が産み出す相乗効果

 波乱の戦国時代を舞台に、真田、徳川、上杉、北条……と一般的になじみのある武将たちの攻防を描いて好調のNHK大河ドラマ『真田丸』。合戦に策謀や裏切りなど緊迫した展開が続くなか、空気を緩ますのが主人公の真田信繁(堺雅人)を巡る三角関係だ。彼の初恋相手の梅役の黒木華と幼なじみのきり役の長澤まさみの絶妙なコントラストが、相乗効果を生んでいる。

梅を演じる黒木華(右)ときりを演じる長澤まさみ。『真田丸』3月27日放送の第12回より(C)NHK

梅を演じる黒木華(右)ときりを演じる長澤まさみ。『真田丸』3月27日放送の第12回より(C)NHK

写真ページを見る

◆長澤まさみが伸び伸びと演じる“戦国のヤンキー”

 梅ときりはともに真田家の家臣団の家系でふたりは幼なじみだが、梅の兄は里の地侍で実質は農民。一方のきりは重臣の武家の娘で真田家に奉公に出ている。ふたりとも信繁に想いを寄せ、身分が高いのはきりだが、信繁が惹かれているのは奥ゆかしい梅。奔放で遠慮のないきりとは口ゲンカが多い。

 象徴的なシーンがあったのが第6話。本能寺の変の直後に姉を明智の軍勢から救えずに落ち込む信繁に、きりは「『あなたのせいじゃない』と言ってほしいんでしょう?」と憎まれ口を叩いて「やな女子(おなご)だな」と吐き捨てられる。そして信繁は梅を訪ねて心情を吐露すると、黙って聞いていた梅は「ひと言だけ。源次郎様(信繁)が帰ってくださいましてホッとしました」と告げて信繁を癒した。

 時代劇の“文法”に捉われない三谷幸喜の脚本でも、きりの台詞や振る舞いはとくに現代風。人質となっていたところに現れた信繁に「助けに来てくれたのね〜」と抱きついたり、逆に「(奉公を)仕方なくやるならしなくていい」という信繁にまんじゅうを投げつけたり。気が強く思ったことを口にして、スタッフには“戦国のヤンキー”と呼ばれている役柄だ。それを現代美女の代表格であり、華のある長澤が伸び伸びと演じている。視聴者からは「うざい」との声もあるようだが、劇中でも「やかましい」「うっとうしい」と言われる役なので、好演の裏返しだろう。

◆好感度の高い市井の女性像を打ち立てた黒木華

 対照的に梅は、信繁からみやげの櫛を受け取るのも「いただいてもよろしいのですか?」とためらうほど控えめ。信繁の好意を感じながらも身分の違いをわきまえている。だが、戦(いくさ)について「大事なのは人の命をできる限り損なわないことという気がします」と語り、信繁の心を動かしたりもする。演じる黒木は顔立ちから古風で純朴な雰囲気があり、それでいて思慮深く知的なイメージは梅役にハマっている。実力派として演技力もあり、好感度の高い市井の女性像を打ち立てた。

 距離感のある清楚な女性と、身近でケンカ友だちのような女性。現代劇のラブストーリーにはよくある構図を、時代劇に取り込んだ三谷脚本の『真田丸』。黒木と長澤が月と太陽のような好対照の個性を発揮し、相乗効果でともに存在感を際立たせている。梅は信繁の最初の子を産み、きりは大阪の陣まで信繁に寄り添い続けることは明かされているが、この三角関係の成り行きは、戦国の世ではサブストーリーながら目が離せない。
(文:斉藤貴志)

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索